「どう考えても、過剰設備のように感じるんだけど」

 

有紗はトーストをかじりながら僕にそう言った。

 

僕はチューブから食べ物を吸いこんだ。

 

「火星ではずっとそういう食事だったの」

 

「あとは固形物」

 

「水分の摂取量は決められていたから」

 

「そうか、まだ体が慣れないんだね」

 

有紗はそういってミルクをごくりと飲んだ。

 

パンにしても、ミルクにしても

 

人造物には変わりない。

 

体に入ってしまえば同じ。

 

「ねえ、今日は非番なの」

 

「そのはずだったんだけど、

 

ケイルの家族が今日着くので交替したんだ」

 

「そうなのよね。移住してくるのは家族ばかり」

 

「計画は進んでいないのかい」

 

「サッパリって感じ」

 

「要は希望者が少ないのよ」

 

「みんな地球から離れたくないんだ」

 

「あたしたちが心配しているのは、パニックなのよ」

 

有紗はそう言って、ウインナーを口に運ぶ。

 

「何のかんのいっても、いまでも地球では自然食品が手に入るの」

 

「安全なのかい」

 

「微妙」

 

「それでも、みんな欲しがるの」

 

「あなたは、すっかり外の生活に慣れちゃったから」

 

「抵抗ある人は多いのよ」

 

チャイムが鳴ったあと女の声が部屋に響く。

 

「有紗、今日は暇なの」

 

「ミンサ、あなたこそ」

 

「少し汗流しましょう、サクには悪いけど」

 

「スカッシュかい」

 

僕が有紗にきく。

 

ミンサは有紗の同僚だ。

 

歳も見た目はそんなに変わりない。

 

「さっきも言ったけれど、

 

そんなわけであたしたちは仕事がヒマなのよ」

 

「楽しんでくるといいよ」

 

「ミンサ、有紗をよろしく」

 

「運動も大切な仕事よ」

 

ミンサが僕に笑いかける。

 

そのあと、半透明のミンサは僕を通り抜けた。