「きれいだね」
日が沈んでいく。
あたりが赤く染まっていく。
女の子は小屋の窓から夕日に染まった
何もない大地を見ていた。
僕は夕食の支度をしている。
支度と言っても缶詰のスープをコンロであたためるだけ。
夕食は温かいスープと固いパン。
今日は豆の入った少し辛いスープ。
大地のように赤い色をしている。
チリってやつかな。よくコロンボが食べていたやつ。
「大丈夫だよ。あたし辛いの好きだから」
女の子はスプーンでスープを口に運ぶ。
「ねえ、オジサンは何でこんなところにいるの」
「気楽だから」
「気楽って」
「余計なことを考えなくてすむ」
「考えるの嫌いなんだ。あたしも嫌い」
女の子は僕がナイフで刻んだパンを一切れつまんで
それをスープに浸す。そして口の中に放り込む。
でも本当は余計なことばかり考えている。
女の子を見ながら僕はそう思った。
「みんな同じさ」僕がボソッとつぶやく。
「食べ終わったら、水浴びするといい」
「うん、そうするよ」女の子がにっこり笑った。