男は歩きながら何度も振り返る。

 

「誰かにつけられているような感じがしたんだ」

 

彼女は笑いながら男を見ている。

 

「不審者みたいだったわよ」

 

「つけられてたら、ここに来なかった」

 

女の鋭い視線が男に向けられる。

 

「そんなことは」

 

彼は心の震えを押さえながら答える。

 

「ないわよね」

 

彼は彼女の自信ありげな様子に戸惑った。

 

「あの高校生に見られてる」

 

近くの席にいる女子高生。

 

女の位置からは見えなかった。

 

「ずいぶんと自信家ね」

 

男は不機嫌そうな女の顔を見た。

 

「なんちゃってじゃないの」

 

「なんちゃって?」

 

「何よ」

 

「何だよ」

 

男は女と腕を組んで、通りを急ぎ足で過ぎていく。

 

「可愛い子だった」

 

「何が」

 

「だから、なんちゃって」

 

「決めつけてるね」

 

彼女が急に立ち止まる。

 

「アイスクリーム食べたい」

 

彼女は腕を組んだまま男をひっぱって歩く。

 

店の前には制服を着た女の子たち。

 

「ねえどのくらいいると思う」

 

「わからないよ」

 

「でも、一人だけ確実に似合ってない人がいる」

 

「それ、多分本物」

 

「パフェなんて食べるんだ」

 

「いいのよ」

 

男はニヤニヤしながら女を見ている。

 

「それ食べると、機嫌が直るの」

 

無言で食べている彼女の脇を制服の女が通り過ぎる。

 

「違うわよ、あの子。てゆうかあの女」

 

彼女のパフェが無くなりかけている。