もう少しで歩道橋に
辿り着こうとするとき
携帯電話が僕の邪魔をした。
画面を見ると知らない番号。
そもそも知っている番号は
登録してあるから
番号ではなく
名前や記号が表示される。
普段こういう電話には出ないのだけれど
どういうわけか出てしまった。
「こんにちは。癒してくれる女の子に会えましたか」
僕は歩道橋の手前で立ち止まる。
「カルバドスのエリナです」
「上を見てください」
僕は正面のコーヒー・ショップの
二階の窓を見た。
たしかに誰か手を振っている。
でも、キャバクラであった子じゃないぞ。
「わかりましたか?今降りていきます」
そう言って電話が切れた。
しかたなく、僕はその場で待つことになる。
「こっちですよ」
コーヒー・ショップから出てきた女の子は
歩道橋に行こうとする僕の手を引いて
地下に潜っていく。