まだ朝だというのに、ほんのりと酔ってしまった。

今日は休日だし、まあいいか。

普段飲んでないせいかすぐに酔ってしまう。

それでも、ゆっくりじっくり飲めばかなり飲める。

まわりのペースに惑わされてピッチを上げると、

すぐにギブアップ。

そして「なんでそんなに弱いの」と笑われてしまう。

こうして一人で飲んでいるのが一番良いのだろうか。

こんな季節には、ちょっと湿っぽいボサノバがいい。

マリア・クレウーザの「おもちゃにしないで」とか。

音楽でも流しながらもう少しぼんやりしていようと思ったら、

キッチンのほうでざわざわと音がした。

「ねえ、朝ごはん食べたの」

「もう起きたの」エリコの眠そうな目。

「まだ寝てない。シャワー浴びただけ」

「食べない方がいいんじゃない」

「食べないと寝れないのよ」

エリコはパジャマを着ている。

朝ごはんには違いないけれど、

僕とエリコでは少しばかり事情が違っている。

「マスターが朝まで居ていいって言ってくれて」

「そうなんだ」

「めずらしいね、飲んでるの」

「ちょっとだけね」

スクランブルエッグにウインナーをつけて、

大皿に海藻サラダ。

海藻サラダは水につけておけばいいので

手間がかからなくて重宝している。

そういえば誰かが「海藻食べていれば死なない」

と言っていたのを思い出した。

「誰だっけ」エリコに聞いてみた。

「知らないよ。そんなことはじめて聞いた。

でも体には良さそうだね」

ノンオイルドレッシングに

ココナッツオイルをかけて食べる。

冷たいサラダにココナッツオイルをかけると

固まってしまうけど、

固まったココナッツオイルのパリッとした食感も悪くない。

「ポン酢でもいいかも」

「ヒロさん最近よくポン酢使うよね。

野菜炒めにもかけてたでしょう」

エリコはマグカップの中のコーンスープに

粉チーズをたっぷり入れてパンを浸して食べている。

「すごい食欲だね」

「だって、本当にお腹すいてるんだもん」

「何も食べなかったの」

「ひたすら飲むだけ」

「ヒロさんは健康的過ぎるんだよ。

あのお酒まだ残ってるんでしょう。ジンと・・・」

「ベルモット」

「そう、ベルモット」

ぼんやりとした休日の朝のはずだったのに。

突然あわただしくなってしまった。

エリコは食べるだけ食べて自分の部屋に入って寝てしまった。

結局後片付けは全部僕がやることになる。

この雨では出かけられないかなあ。