ぼくはコーヒーショップで順番待ちをしている。
ぼくの前にはちょっと小柄な女の子。
なんかモジモジしてる感じ。
どうしたんだろう。
もうすぐ女の子の順番だ。
そう思ったら突然女の子が
ぼくの前でしゃがみこんだ。
ジーンズからはみ出したパンツと
Tシャツからはみ出した浅黒い肌。
そしてぼくの前には店のおねえさんの笑顔。
いいのかな。コーヒーを注文する。
「おふたつですか」店のおねえさんがぼくにきく。
ぼくはおねえさんの視線を追う。
いつのまにかしゃがんでいた女の子が
ぼくのとなりに立っている。
「ふたつです」女の子がすかさず答える。
「それとこれも」と言ってパンをたくさんテーブルに並べる。
それからぼくのほうを見てにっこり笑う。
いいか。わりとかわいい子だし。
「席とっておいたから」ぼくがお金を払うと、
女の子はそう言ってぼくのシャツをひっぱる。
「いつもこんなことするの」
「たまにね」女の子はパンをかじりながらぼくに言う。
結局この日はこの女の子とずっといっしょだった。
ぼくもヒマだったし。面白い子だったし。
「いつもはこなんじゃないんだよ」
女の子はベッドの中でしきりにぼくに言う。
別にいいよ。そんなことさ。
「よくないよ。いつもはごはんおごってもらうだけ」