天の川なんて言われても

 

こんな都会の真ん中では

 

星を見るのさえ難しい

 

天の川なんてどこにあるのやら

 

そもそも七夕なんて言われても

 

この国では梅雨の真っ最中で

 

大抵の場合

 

空にはどんよりとした雲が居座っている

 

織姫と彦星、ベガとアルタイル

 

名前は知っていても

 

ちゃんと見たことなんて一度もないんだ

 

こんな短冊を渡されてもなあ

 

みんな真面目に願い事なんて書くのだろうか

 

たぶん一生懸命考えて

 

何を書こうか悩んで

 

短冊に願いごとを書くのは小学生ぐらいまで

 

僕なんか小学生の頃からひねくれていたから

 

決して自分の本心など明かさずに

 

それなりにもっともらしいことを

 

人の目を気にしながら書いていた

 

なるべく自分が何を考えているのか他人に悟られたくない

 

だから七夕の短冊も最大公約数的なものを書いてお茶を濁す

 

「昔から変わっていたよね、あなた」

 

小学校の頃から

 

いやもっと前から

 

僕の近くをつかず離れずの距離を保ってうろついている幼なじみ

 

「そうだった」

 

「そうだよ」

 

「なんかいつも斜に構えて」

 

「自分だけは関係ないみたいな顔をしてたじゃない」

 

僕の書いた最大公約数的短冊は

 

どうも世の中を斜めに見て書いた

 

他の短冊とは異質のものと思われていたようだ

 

僕はいつだってまわりの人たちに合わせたつもりだったのに