空き家が空き地になってしまった。

 

「ねえ、妹は何て名前なの」

 

まだ残っている門扉を二人でながめながら

 

僕はのんにきいた。

 

「それがね、思い出せないの」

 

「忘れてしまったのか、それとも最初から知らなかったのか」

 

僕はあの子の名前を知っていたような気がした。

 

でも思い出せないのはのんと同じ。

 

「ルナでいいよ」

 

「そうなの」

 

空にうっすら白い月が見えた。

 

「あの月にはルナリアンはいないの」

 

「次元が違うから」

 

「それじゃのんやルナは違う次元からやってきたの」

 

「違うよね。よくわからないんだ」

 

「それじゃ未来から来たの」

 

「やっぱりあたしもうルナリアンじゃないのかな」

 

「何も思い出せないんだ」

 

そう言ってのんは僕を見てにっこり笑う。

 

そんなのんの顔を見ていたら

 

なんかもうどうでもいいかって思えてしまった。

 

もしかしたらルナリアンは僕のまわりにもっとたくさんいるのかもしれない。

 

でも、僕とのんが見ている月にはルナリアンはいない。

 

そして地球人を祖先とした高度な文明を持つルナリアンも多分いるのだろう。