「おめでとう」

 
うれしそうな顔をして刑事が取調室に入ってくる。
 
「リュックに入っていた鍵のコインロッカーから
 
大量に出てきたよ下着が」
 
何故かあの時から僕は、あの女の顔が忘れられなくなっていた。
 
夢に中にもよく出てくる。
 
たった一度、あの交番で会っただけなのに。
 
街を歩いていても似たような格好の女性を見ると後をつけてしまう。
 
あの女に見られているような気がして
 
あたりをうかがうように歩いてしまうこともある。
 
紙袋に詰め込まれた下着。
 
僕にはタンスの中から無造作に詰め込まれたようにしか見えなかった。
 
そもそも僕は彼女の家さえ知らないんだ。
 
いくらそう言っても信じてもらえない。
 
鍵を届けたおかげで、僕の人生はすっかり狂ってしまった。
 
とにかく忘れなきゃ思っていたある日
 
あの刑事が僕の家にやってきた。
 
「お前知ってるか」
 
刑事はそう言って僕に写真を見せた。
 
たしかに僕はその写真の女性を知っている。
 
何度かあの女と間違えて後を追いかけたことのある女性だった。
 
「殺されたんだ」
 
「僕はやってませんよ」思わず大声で叫んでしまう。
 
「そうはいってもな、凶器からお前の指紋が出ちゃったんだよ」
 
END