物販コーナーに長蛇の列。

 

まだ次のバンドの入れ替え中なので、

 

邪魔にならないようにみゆきさんがうまくさばいている。

 

物販に立っているのは、

 

ユウちゃんとアキちゃんのデコボココンビ。

 

ファンの子たちはサキに会いたいのだろうけれど。

 

「あの子はうまくさばけないし、知り合いの子とは話し込んじゃったりするから」

 

「そろそろこのやり方も変えた方がいいんですかね」

 

僕はプロデューサーということになっているけれど、

 

実際はマネージャーのみゆきさんの補助っていう感じだ。

 

「もう少しで、このツアーも終わるから、頑張って」

 

そう言ってみゆきさんが微笑む。

 

ツアーの後は制作に入ることになっている。

 

インディーズで出したCDもよく売れているようだ。

 

物販ではそれ以外のCDが売れている。

 

レーベルから出す以前のものだ。

 

それはライブ会場でしか買えないし、残りも少なくなっている。

 

もうすでにプレミアがついているという話も聞く。

 

「この時代にCDが売れてるっていうのはすごいことだよ」

 

「メジャーだった奴らだって、どんどん落ちていってる」

 

「アナログ盤も出すんだって」

 

「どっちかっていうと、海外向けかな」

 

「海外って、いまだにアナログが強い」

 

「カセットが生き残ってるわけだし」

 

「それは、カラオケ教室用だよね」

 

「扱いが簡単だから」

 

「アナログは扱いにくいけど、音にこだわっている人が多いから」

 

このスタジオはヨシローの所有物のようになっていた。相変わらず忙しそうだ。

 

「おかげさまで聖地ですから」

 

たしかにあの子たちのファンがやってくることも多いらしい。

 

後につづこうとする若いバンドの連中も。

 

「ロックっていうのはSN比とかは関係ないからな。

 

特にお前んとこのお嬢ちゃんみたいなバンドには」

 

僕の所有物みたいに言うなよ。そもそも紹介してくれたのはお前じゃないか。

 

「お前の才能だよ」

 

「彼女たちの才能さ」

 

「もう少し自信もっていいんじゃないか。

 

あの子たちの才能を引き出してるのはお前なんだから」

 

ロックってもうビック・ビジネスにはならない。

 

みゆきさんの分析は当たっていると思う。

 

でも、ビック・ビジネスじゃないからいいものを作れることもある。

 

ヨシローは黙ってうなずいている。

 

 

 


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