「元気でやってた」

非通知の電話はずっと着信拒否にしていたけれど、

この仕事をはじめてから

非通知も受けられるように設定を変更した。

といっても非通知の電話は

ほとんどかかってきたことがなく、

かかってきたとしても、

仕事の関係で相手や内容が予想できるものばかり。

ところがあの時の電話には全く心当たりがなかった。

少し躊躇して出てみると聞き覚えのある声がした。

思いがけない相手。

「どうしたの」

「驚いた」

「かなり」

「話があるの」

相手の声を聞きながら、何となく嫌な予感がしていた。

「用があるんだったらさ、非通知なんかでかけてこないでよ」

「ごめん、これあたしの電話じゃないから」

「依頼とかじゃないよね」

「相談には違いないんだけど」

「わかった、どこに行けばいいの」

「あなたのところじゃダメ」

「かまわないけど、ここじゃない方がいいかなと思って」

「そうだね。そのほうがいいね」

少し考えてから相手はこう答えた。

「あとでもう一度連絡する」

「わかった」という僕の返事を待たずに電話は切れてしまう。


世利人史 COZYN探偵社 ~はじまりはここから~ Ⅰ-4



現代小説ランキングへ