ぼくのベッドでリコが眠っている。

ぐったりと疲れているみたい。

ぼくはケータイを持ってベッドから離れる。

ナツミから電話があったみたいだ。

ケータイがチカチカと光を放っていた。

「どうしたの、久しぶりだね。元気だった」

「仕事でくたくただよ」

「そう、そんなふうには見えなかったよ」

「気を張ってるから。カラ元気だよ」

「じゃ、今日はのんびりできた」

「のんびりって」

「居酒屋でさ、楽しそうだったじゃない」

「あなたふざけてる」

「ふざけてないよ。そう見えたから」

「あたしがあんなオジサンと楽しそうに飲んでるわけないでしょ」

ぼくはトイレの中でナツミと話している。

ナツミは少しイラだっているようだった。

ぼくにもナツミが楽しく飲んでいないことは

よくわかっていた。

ナツミが本当に楽しいときはあんなに大声で笑ったり、

話をしたりはしない。

かなり無理していたのは分かっている。

「そうかなあ。かなりいい感じだったんじゃない」

「やっぱりふざけてる」ナツミがひとりごとのようにつぶやく。

「それより、あなたは何なの。

あたしが必死で仕事してるのに、

あんなチンチクリンとイチャイチャして」

チンチクリンかどうかはわからないけど、

たしかにぼくはリコとイチャイチャしていた。

「カワイイ子でしょ」

「あんなのがカワイイの」

「カワイイよ。寝顔だってカワイイよ」

ぼくはナツミの寝顔がどんな感じだったか思い出している。

ナツミだってカワイかったよ、多分。

「いま、いるの」

「いるよ、ベッドの中に」

「そばにいるの」

「よく寝てる。近くにはいないよ。トイレから電話してる」

「そう」ナツミのため息が聞こえる。

「本当に疲れてるみたいだね」

「疲れてるよ」

ぼくはナツミと二人この部屋で

夕日をながめたときのことを思い出していた。

「さびしいよ」ナツミのつぶやく声が電話から聞こえる。

ぼくが顔を上げると、ぼくの正面にはリコの顔。

「どうしたの」リコは寝ぼけた目でぼくに言う。

ぼくはとっさに電話を切った。

「あたし知ってるよ。さっきオジサンと盛り上がってた女の人でしょう」


世利人史 風景4 サウダージ(その7)



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