胸の奥の小さな後悔
昨日の拙記事では、「胸の奥の小さな哀しみ」のタイトルで、
他人様の飼い方について批判めいた事を書きましたけれど、かあさん自身にも消えない後悔があります。
チロの話を、聞いて下さいますか?
35年前、末っ子が1才の頃、私たち家族が初めて飼ったのが、
とうさんが農家から貰ってきたコロコロの仔犬でした。
柴系との仲人口でしたが、見事に似ても似つかぬ大型の雑種犬に育ちました。
左がダンボール箱に入れられてやって来た時、右が成犬になって庭に放されていたチロです。
チロをフィリオやショコラと較べますと、待遇に格段過ぎる差があります。
当時住んでいた岡山の田舎では、犬は番犬が当たり前で、台風や雷や酷暑など以外は庭に繋がれ、
食事は残りご飯にお味噌汁をかけたり、鶏の皮を茹でたりし、たまのジャーキーだけが唯一の御馳走でした。
タライに入れてホースの冷たい水でじゃぶじゃぶ洗われ、朝夕の散歩は田んぼの畔道でした。
獣医さんは牛や馬など家畜を診る人で、動物病院もドッグフードもなかった時代です。
チロはとても優しい従順な子で良く懐いてくれ、畦道で一緒に見た夕陽を、かあさんは今も思い出します。
7才の時、散歩の途中で、チロは動けなくなりました。
自宅からかなり離れた場所で、助けを呼ぶにも戸板を取りに行くにも、彼を一人では残せず、
かあさんはチロをおんぶして、背を丸めて泣きながら、一歩一歩我が家を目指しました。
大きなチロの爪先がすりすりと地面をする音が、今も聞こえるようです。
これがチロの最後の散歩で、この5日後、彼はお星さまになりました。
チロは今、岡山の動物霊園に眠っています。
ごめんね。
チロ、充分な暮らしも食事も医療も、あなたには与えてあげられなかったね。
でも、かあさんの子でよかったと、君は思ってくれるだろうか?
家族の誰かが岡山に行く機会に「チロに会ってきたよ」と聞くたびに、
かあさんの胸の奥の小さな後悔が、かあさんを突き刺します。
もう35年が経ったのですね。
こちらは、エアコンの効いた環境で、手作り食を貰い、とうさんのベッドで眠る、過保護で軟弱な、
でも幸せな子です。
今日もお出で下さいまして、ありがとうございました.。