FIGLIO -チロへの詫び状ー
でも態度はパピーの頃のまま、
母さんが座っている椅子の下は落ち着くな・・
同じ姿勢を前方から撮ると・・
私たち家族が初めて犬を飼ったのはもう25年も前のことで、今の様な豊富な情報もないまま飼い方の知識も少なく、地方の農村で獣医さんは牛や馬を診る人でした。
チロという名のその子と過保護なフィリオを較べると、天と地ほどの違いがあります。
台風とカミナリの日以外は、暑い夏も寒い冬も庭の犬小屋につないで、一日一回の散歩と2回の食事、それも残りご飯に鶏皮のゆでたものをかけたり、だしをとった後の煮干を乗せたりし、おやつのジャーキーだけが特別なご馳走でした。
ホースの水でジャブジャブ身体を洗い、法定の狂犬病予防接種以外は健康診断を受けさせた事もありません。
チロ、それでも君は幸せだっただろうか?
一緒に畦道を走ったり、立ち止まって夕陽を眺めた夕方を、母さんは今でも、懐かしさと悔恨と共に思い出すよ。
8才を過ぎた頃から、散歩の足がよろめくようになってきましたが、歳のせいと軽く考えていました。
ついにある日、家までまだ大分遠いところで、チロはもう1歩も動けなくなりました。
戸板を取りに行くにも助けを呼ぶにも彼を残しては行けず、私はチロをおんぶして、苦しくない様なるべく背を丸め、泣きながら一歩一歩進みました。大きなチロの後ろ足の先がずりずり地面を引きずる音が、今も聞こえるようです。
これが彼の最後の散歩となりました。
それから2週間ほどであの子はお星様になりましたが、今フィリオと幸せに暮らしながら、心のどこかで彼に詫びています。
医療も充分な愛情も、犬としての幸せも、あの子は与えられなかったかもしれません。
ごめんね、チロ、ごめんね。
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