FIGLIO -本当のママー
フィリオを産んでくれたママは雪ちゃんという名の、当時3才位の小柄な可愛い子で、母性愛の強いワンコのように見うけました。
フィリオが1歳半位の時、雪ママに会わせてあげようということになりました。
彼は人懐っこくて可愛がってくれた人の事は決して忘れないので、本当のママのことも覚えているのではないかと思ったのです。
私がフィーを抱いて待っていると、スタッフが雪ママを抱いてきてくれました。
雪ちゃんは出産したばかりで、胸にははちきれそうに乳房がゆれていました。
フィリオは今10キロを超えてウエスティにしては大型ですが、その時も小柄なママよりもう一まわりもふたまわりも大きいのでした。
フィーが嬉しそうに鼻を寄せると、雪ちゃんは顔をそむけて静かにうなり声をあげました。
でもそれは当然のことです。
雪ちゃんにしてみれば、もう知らない大きなオス犬からわが子を守るのが母犬の本能で、産まれ立ての赤ちゃん達の、愛情あふれる優しいママ犬なのです。
フィリオも赤ちゃんだった時は、このママの優しい強い愛情を受けたに違いありません。
フィリオ、母さんは君を傷つけただろうか?
でも忘れないで。
君の今の本当のママは、この母さんなんだよ。
君の本当の家族は父さんやこの家族で、兄ちゃん達もお姉ちゃんも君の事が大好きなんだよ。
あれから数年後雪ママを訪ねる機会がありましたが、彼女はもうママを引退していて、ボランティアのお宅で幸せに余生を暮らしているとのことでした。
ありがとう、雪ママ、私にフィリオをゆだねてくれて。