本日、中尊寺光勝院において法華経一日頓写経会が行われました。
例年は6月の第2日曜日、およそ100名の方々が一堂に会して行われますが、コロナ禍の中、昨年・一昨年は新型感染症早期終息祈願写経として、お申し込みいただいた方々に写経用紙を郵送し、それぞれのご自宅で写経に取り組み納経いただきました。
今年は開催時期を1ヶ月ほど日延べして感染症対策を施した上で、岩手県内在住の方々は中尊寺会場での写経も受け入れ、また引き続き郵送での納経も行いました。また写経の願意は新型感染症終息祈願に加えて世界平和祈願といたしました。
その結果、中尊寺会場で46名、郵送で171名の方々にご参加いただきました。
この写経会は、奥州藤原氏2代基衡公の発願された紺紙金字の千部一日経に由来します。これは父・清衡公の追善供養のため、法華三部経(注1)一部十巻を一日の内に頓写し、それを生涯のうちに千部写経して十巻×千部で一万巻を納経するものです。現存するものでは第五百七十二部目のものまで確認されています。(注2)
清衡公の紺紙金銀字交書一切経、3代秀衡公の紺紙金字一切経に勝るとも劣らない作善業といえます。
『法華経』「法師品」には法華経を護持するため以下のような5つの修行(五種法師)が説かれています。
1.受持(法華経を保つ)
2.読経(法華経を読む)
3.誦経(法華経を唱える)
4.解説(法華経を理解し説く)
5.書写(法華経を写経する)
この五種法師の修行を行う者は六根(眼・耳・鼻・舌・身・意の感覚器官)が清らかになり、多大なる功徳が得られると説きます。
これをもとに修行としての写経(如法経)を比叡山で始められたのが慈覚大師円仁さまです。奥州藤原氏の3代にわたる写経の善業は、慈覚大師の『法華経』信仰がその底流にあるのです。
この頓写経会は 平成9年(1997)、金色堂国宝指定100年記念祭の年に始修されました。納経された写経は11月10日に行われる写経奉納式で奥州藤原氏の眠る金色堂に奉納されます。
写経奉納式についての過去記事は↓
注
1.『無量義経』、『妙法蓮華経』、『仏説観普賢菩薩行法経』の三経
2.「紺紙金字法華経 巻第八」(大阪府金剛寺蔵)の奥書に「久安四年潤六月十七日奉寫 先考藤原清衡成佛得道書寫 千部一日經内第五百七十二部也 弟子藤原基衡 講師傳燈大法師□惠 問者大法師増忠」(『平泉町史・史料編一 No.17所収)とある。