「開口」が舞台から下がると、冠をかぶり面を垂毛で覆い、狩衣、括袴に脚絆を着けた「祝詞」が幣帛を持って登場します。
舞台上から白山社拝殿に向かって幣帛を奉じ、祝詞を唱えます。その辞句は微音にて唱えられ見所(客席)の観衆は聴くことは出来ません。神事の『伝書本』によると古実舞の作法は秘中の秘密で不許他見とされていますので辞句を載せるのは差し控え、大意のみを記します。
古実式三番「祝詞」
~卯月初午の日は吉日で、朝夕の太陽の昇降も円満、天には金の花開き、地には銀の菓なって、白山妙理大権現の威光を耀かします。そして、あらゆる衆生を安養浄土に導く往古の如来が唐土の釈迦となって現れ、日本では北陸の崇峯・白山の霊神として垂迹しました。その後中尊寺の鎮守として勧請して星霜は歳積もり、その間白山霊神は様々な方便によって衆生に利益を与え、道俗みな信仰を寄せてきました。天長地久の願いが八百万の神々にまで届き、天下泰平、五穀豊穣、仙台藩領内の繁栄から今日参詣の人々の幸運と立命にいたるまで白山権現のご利益によって成就されます。世の中の安穏と諸人の永楽を誇りとし感謝申し上げます。~
「祝詞」が舞台を引くと、その幣帛は後見役によって見所の正面に移し立てられ、2日間にわたる神事能を見まもるのです。
(次回「古実式三番(こじつしきさんば)とは ③ ~古実(こじつ)の舞(まい)」に続く)