ちいさな、おはなし。 -3ページ目

彼が僕を、追い越したとき。

中2になった長男と久しぶりに遠投のキャッチボールをした。

衰えた僕は、遠くの彼に向かい、それでも見栄を張ってノンステップで全身を使って思い切り投げた。まだ捨てたもんじゃなかった。

一方息子は(太っていた小学生時代と比べると信じがたいほどに)しなやかなフォームから、特に力んだ様子もなくスナップをきかせてヒョイ、ピューっと投げてきた。

低い球筋のボールが、低いままみるみる伸びてきて自分を襲う。
伸びてくる。本当に伸びてくる。
低いまま僕のグラブに収まった。

左手が痛かった。とうとうここまできたかと。

彼とキャッチボールをして初めて恐怖感を味わうことになった。
しかし当たり前だが、嬉しい痛みだった。