= peRon = 工房

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peRonが作る立体作品やカスタムブライスの制作を載せています!

ヤフオク!などでカスタムした子達を出すこともあるので、宜しくお願いします!

 

-peRon-

Custom Blythe No.22

 

働く妖精シリーズ

ーFairy postmanー

 

 

 

 

 

↑お話の途中で前作の出来事が起こります。こちらも読むと理解しやすいかと思います。

誤字脱字はよくあることです(=゚ω゚)ノ

 

 

 


僕は動物の言葉が理解できる得意魔法を持っている。
妖精は一人必ず何かに特化した魔法が与えられると教えられたが、まさか動物のおしゃべりできるだけなんて、とかなりショックを受けたのは覚えてる。

誰が動物と話せる能力が欲しいなんて思うのか。
多少の動物言語なら少し勉強すれば、げっ歯類の言葉程度ならわかると思うのに。

どうせなら自然の力を自由に扱う何かならよかった。

得意魔法がわかった段階で妖精たちはそれぞれ魔法に適した仕事を任せられる。
僕は動物郵便係の小動物担当だ。

相棒のフェレットと共に離れに住む小動物に言づてや小包を届け、森の管理の一部を担う役割。
時折動物から聞く森の近況や、不審に思われる現象などを知ることが多いこの仕事は、縁の下の力持ちと評価されているらしい。

表では優等生らしく普通に仕事をして、夜遅くまで妖精図書館で勉強に励む。

そんな毎日だった。



「火をうまく扱う方法ってないかな~」
「最近雨が多く降るから水の魔法の役割が減って退屈~」


自然の力を扱う友人関係の妖精から愚痴を聞かされ、宝の持ち腐れだなっと哀れに思う時がある。

火が扱えれば、水が扱えれば、風を扱えれば・・・
扱いきれないならその力をもっと有効活用できる僕によこせと、妬む気持ちを抑えこんだ。

 

大変だね。という笑顔の裏で僕がそんなことを言っているなんて知らないだろうな。



そんなある日、一冊の本に出合う。
「妖精と魔法の起源」

それはかなり古い本で古代語の記述ではあったが、古代語をマスターした僕が読めないものではなかった。


見つけてから僕は火が付いたようにその本を隅から隅まで読み漁った。


妖精の歴史において大きく魔法という概念が生まれたのは魔女という存在が関わっているとい事は知っていた。

妖精はもともと魔力を持たない存在だった。
だが、人間同士の領土争いや侵略によって棲家を追われ、細々と生きていくしかなかった。
そんな時、魔力を持つ人間と一人の妖精が出会った。

互いに追いやられたもの同士、人間への復讐を決意したことから始まる。

妖精は綺麗な心を持つ人間しか見えないことを利用し、
魔女は魔力を妖精に託し、力を貸し与えた。

その結果、人間は追い出せたが、魔女の力を受け止め続け報復を果たした妖精は、いつしか魔女の助力関係なく魔力を使える妖精となった。

魔力が体に交じり、馴染んだことが原因だと考えられるが、原理はいまだ解明されていない。

魔女は妖精たちと共に暮らしていたが、重い病にかかった。
衰弱した魔女は妖精の献身的な努力かなわず、森の奥深くにある神木の下でひそかに息を引き取った。

その後魔女から力を受け継いだ妖精が周りの妖精たちに影響を与え始めた。
魔法を使えなかった妖精が固有の魔法を発現させた。それが得意魔法というやつだろう。


「ここまではある程度知られてる情報かな。」

僕が興味をそそられたのは次の記述だった。

≪魔女の血を受け継ぐ者はすべての魔法を扱うことが出来る。≫

魔女の血というのは、例の魔女から直接魔力を与えられた妖精の直系。
ただ、僕の知っている彼女はこの記述とは真逆の存在だ。

彼女は自身の得意能力すらも開花させれず、何も力を持たないひ弱な妖精だ。

周りから魔女の直系というだけで守られている。

魔女の血を受け継ぐ妖精の子孫は、始祖のように周りに影響を与えるかもしれないと、一部の妖精は思っているようだ。
本人には直接言わないのだろうけど。



とりあえず僕がするべきことが決まった。

ひ弱なふりをして、実は記述のように本当はすべての魔法を使えるんじゃないか。

見極める必要がある。


「やぁ。ついでにこれお願いしたいんだけどいい?」

さわやかな受けがいい笑顔で彼女の荷車にその荷物を置いた。

「いいよ。どこまで?」
へらりと笑う顔は、僕の浮かべる表面的なものと少し違って毒気を抜かれる。

「・・・・。いつもそうやって安請け合いしてるの?」

「 ? 」

「意味わかんないならいいけどさ。」

ゆっくり距離を近づけて、魔女の力とやらを見せてもらおうかな、







※前作のお話に続く。





*******


あの大事件から数日。

僕はいつもの日課である図書館で本を読んでいた。

そこに図書館の司書の妖精が声をかけた。
彼は右目のモノルクをクイッと上げる仕草をすると、隣に失礼しても?と聞いてきたので素直にうなずいた。

「君も彼女によって大きく影響を受けたようですね。」

「影響?僕は何も変わってませんが・・・?」

「君がこの図書館に来た時の事、今でも覚えていますよ。」

まるで何かに取り付かれたように様々な文献や参考資料を読み、努力をしてきたこと。
しかしある日何かに気づいて失望したこと。
何かに気づいて熱意を持ち始めたこと。
そして彼女と出会い本当の笑顔が増えたこと。

「そして、例の出来事で君は何か大きな転機が訪れたこと。」

にっこりとしたそのこ綺麗な顔面に本をたたきつけたくなったのは、この際言わないでおこう。

「き・・・よく観察しておられるんですね。」

「何か言いかけたようですが、聞かないでおきましょう。それは司書の仕事でもあるので。」

「観察することがですか?」

 

「ええ。以前の君は自身の魔法に付いて快く思ってない様子でしたね。」

 

僕が驚くと司書は口元に手を置き笑った

 

確かに様々な種族としゃべることなんて特に利点があると思わなかった。

でも事件がそれを覆した。

 

森の仲間によって伝えられた彼女の異変と周囲の動き。

どこに攫われ、人間の小屋の秘密の入口も動物たちが居なかったら知ることなんてできなかった。

 

同僚たちは一部の動物としか言葉を通わせられなかったが、情報がどれだけ強い武器なのか身をもって知った。


「本を読むということは自分に無い知識を求め、知り、理解してそれを力に出来るかどうか。君はそれを人一倍会得する力を持っている。しかしここがまだまだ未熟ものだ。」


とんとんと司書は自身の心臓のあたりを指でたたく。

「心なんて、臭いセリフ言わないでくださいよ?」

「まさか。」

司書はクスリと笑い、席から立ち上がる。

モノルクを外し、それを磨きながらポソリとつぶやいた。

「君たちの成長を期待していますよ。」


ふらりと現れ消えた司書に、彼はぽかんとするしかなかった。


「あ、先に来てたんだ。」
放心していた彼に声をかけたのは例の彼女だ。

「・・・?どうかした?」

「いや、長生きしてる妖精ほどおせっかいな事はないなって思っただけだよ。」


首をかしげてクエスチョンマークを飛ばす彼女。

「時々変な事言うよねーーーーくんって。」

「ここにも減らず口のおせっかいな妖精がいたなぁ。」

もにゅーんとその頬を伸ばしてわたわたと慌てる彼女。

取り繕わない彼女に、少し影響受けたのかもね。

 

 

 

 

 

:::::::::::::::::::::::

 

天才肌だけど努力も怠らない優等生の仮面をかぶった妖精君が書きたかった!

動物言語は確かに勉強すれば喋れるようになるというものですが、

全種族の言葉を理解できるのはNo.22妖精君のみの得意魔法です(*´з`)

同じ動物郵便係でも、彼のようにすべての種族の言葉を理解することはできません。
 

いつか司書妖精さん作りたい🤤

-peRon-  

Custom Blythe No.20

 

妖怪叢書

ー 煙屋 ー

 

 

 

↓過去の鍵師のストーリを読んでいた方がわかりやすいかもしれません。単体でも読めれます。

 




時は大正

和洋交わる街並みの一角に、ひっそりと佇む小さなお店があった。
その主人:鍵師は鍵を生み出すことが出来る妖怪だ。
とある目的のために人に紛れて生活している。


繁華街から少し離れた場所にあるこのお店には、知り合いの商人がよく出入りして、その情報は回ってきた。

繁華街に新しいお店が出来た。
香を扱う店で、老若男女に大人気だという。

「・・・悪巧みしてないといいんですけどね。」

新しいお店ができる前に、この鍵屋に顔を出した彼を思い出す。







カランコロン

「いらっしゃいませ。此処は・・・」
鍵を整理していた手を止めて、扉に体を向けて目を見開いた。


「久しぶりだね?鍵師くんー。」

朱い異国の服を身に纏い、女性ものの羽織を緩やかに着こなす男。


「煙鬼さん・・・。どうして、貴方が・・・。」

「びっくりしたー?僕を封印した陰陽師の爺さんが死んで数年、やーっと力が緩んだから現世に戻ってきたわけ。」

よっとカウンターに座り、肘を立て頬杖を突く。

「生きて、いたんですね。」

「死んだと思ってた?まさかー。君も知ってるでしょ?僕は煙鬼(けむりおに)。その実態は煙なんだから死ぬなんて概念は存在しないの。」

くすくすと笑い、彼は袖元から紙を取り出した。


「あ、そーだ!僕ね、近々そこの繁華街でお店を出すの。だからそのご挨拶にきたんだ。」

ピラリと広告の紙を渡した彼。

「それはおめでとうございます。・・・お香専門店?」

「そう。僕の作る香はのどから手が出るほど欲しい代物だろう?ヒトからしてもさ。」

「ええ、ですが使用目的を間違えると・・・」

「だいじょーぶ。もう昔みたいにはならないよ。」

よいしょっとイスから降りてお店の扉の前で立ち止まる。

「あ、そうだ。あの子元気にしてる?」



スーと細められていく瞳に、鍵師は心臓を跳ねさせた。

「あれから300年もたっています。人間は長生きできない生き物ですからね。」

「・・・ふーん。そう。




鍵師くんさ、   隠し事下手だよねぇ」


「え・・・。」

彼は扉のopenの札を反転させた。


「君の後ろにある箱。おかしいなぁ?その箱からかすかにあの子の妖力が感じられるんだけど?」

指をさす場所にある札が何重にも重なった手のひらサイズの箱。


「何が目的ですか・・・?」

じりりとその箱を視界から隠すように体を移動させる鍵師。


「その箱、僕に譲ってくれない?」

「それはできません。」

「君の封印を解く力は確かにすごいけど、ヒトの心を理解できない僕たち妖怪にはその封印は解けない。ヒトでなければ。」

まるで踊るようにカウンターに足をかけ、ふわりと飛びあがる彼。

それは浮遊する煙の如く。その妖気は鍵師の首をからめとるように、ゆるりゆるりと威圧してくる。


「そんなまどろっこしいことしなくっても、利用できるものを利用してしまえばいいとおもわない?」

ニヤリと口角上げてせせら笑う。



それを最後に彼は煙を残して消えた。



あれから数日、彼のお店は見事に繁盛し、あの不穏な空気は鳴りを潜めていた。
鍵師はどうにも胸騒ぎがした。


「長からも要注意と言われていますし、顔でも出しに行きましょうか。」

お店のopenの札をひっくり返した。





がやがや

和洋交わる繁華街は和服や洋服をきたヒトであふれかえっていた。

「もし、この近くに香の専門店があると伺ったんですが」

近くの商人に声をかける。


「ああ、その店ならそこだよ。随分と人気らしくてなぁ。あの店のおかげでワシ等の商売も繁盛しとるよ。」

指さす方向には随分と人が群がっていた。

その隙間から覗いた顔は数日前にみた怪しい笑みではなく、さわやかな笑顔を浮かべていた。


「ん?ああ、鍵師くんー。お店覗きに来てくれたの?」

さわやかな笑みを貼りつけたままこちらに歩み寄ってきた。

「ええ、随分とよそ行きなお顔で楽しそうですね。」

「あは、好青年っぽいかな。取引は何事も信頼?らしいからね。君の真似だよ?うまいかなー。」

「お上手ですよ。」

はたから見るとさわやかな笑顔をたたえる鍵師と彼。
だが、本人は腹の探り合い。


「それで、長さんから監視の命令でもでたのかな?」
「心当たりがおありのようで。」

「さぁ?なんでもヒトの所為にするのはよくないねー。僕はただ僕の香で幸せな気持ちになってほしいだけだよ。」

「幸せな気持ち、ですか。」

「これなんてどう?このお香袋を枕元に置くだけで良い眠りにつけるよ。」


鍵師の手に乗せられた紫の小さな布袋。
かすかに香のにおいが漂い、とっさに鼻を抑えた。

「所詮はまやかしです。こんなもの・・・っ。」

「でもね、ヒトってまやかしに縋りたがる生き物でしょ?」


鍵師は彼にそのお香袋を返し元来た道へ帰っていった。


「あーあ、ヒトと関わるからそうなるんだよ・・・?君も、僕もね。」
口元に手を添えて、うっそりと渡った。




---------------.



あの子と初めて会ったのはいつだったかなぁ。
小さな体にため込んだ力は、悪鬼の僕から見てもとっても危うかった気がする。

そんな危うい存在に屈服されるなんて思ってなかったけどね。

「へぇ、僕が初めての式神なんだ?光栄だねー。」

ニヤリと口角が上がった。

屈服されたからには従うほかないけど、まぁ暇つぶしにはなるかな。
飽き性な僕がどこまで持つだろうかね。
飽きたら牙をむいてやろうかな。


すぐに飽きると思った。子供なんて目障りで面倒な生き物。
純粋?無垢?
悪鬼よりも達が悪いだろうね。


それなのにあの子はどんなに自分が特殊な力を持ち、迫害されようと悪鬼に立ち向かっていく。

≪役立たずな。≫

なんでそこまでズタボロになって戦うんだろうね。

≪注文分を作っておけよ。≫

式神だから、対価分は働いてあげるけどさ。

≪香を作ることしかできない愚息め。≫

陰陽師なんてろくなもんじゃない。



なのに、


「其方の暇つぶしになっているか?」
「今はね。」

「みてみろ、其方の香はこんなにも人気なのだな。」
「あたり前でしょ。」

「煙鬼よ、其方のおかげだ。」
「あっそ。」




「初めての式神が其方でよかった。」
「・・・わかったから。その口閉じなよ。」



年齢に似つかわしくない話し方をするあの子に絆されたのはいつだったか。

だから許せないんだよ。

あの子を利用した世も、


理性を失くし、暴走した自分も。



戦国の世

戦いは徐々にいろんなものを巻き込んでいった。

妖怪や陰陽師も該当した。

戦いのさなか、酷使し続けたあの子の体や精神は限界を迎えてしまった。


体を渦巻く力に耐えられずにあの子は衰弱していった。

だから悪行罰示神たちは暴走してしまった。

それは僕も同じく。



理性を失った僕はあの子の手を離れ、戦いの中で起こる煙によってその力を膨大なものにしていった。

ああ、あの子が守りたかったものは何だったのかな。

こんなくだらないもののために、あの子が傷つくのか。

ああ、ああ、


なんてミニクイ


渦巻く憎悪によって思考も黒く染まり、気づいた時には他の陰陽師の手によって封じ込まれていた。






「あの子は僕に失望したかな・・・。」
お店を閉めた今日は新月。

 

彼の笑みがこぼれた。

「さぁ、鍵師くん。君も協力してもらうよ。」

彼は一本の香に火をつけ、ふわりをその腕を横へふるう。

そこから大きく煙が湧き、町中を覆っていった。




---------------.

ふわふわとした世界に鍵師は目の前の人物を見つめていた。

「どうした鍵師?ボーとしているが。」

「え・・・?」

「力を使いすぎたのか?其方のおかげでこうして現世に戻ってこれたからな。少し休んでいると良い。」

鍵師は目の前にいる少年がだれか、よく知っていた。

敬愛する私の主。

 

ああ、やっとあえた。

 

でも、このもやもやは一体・・・

 



「私は、貴方の封印をまだ・・・解いてないはず。」

「・・・寝ぼけているのか?私はこうして現世にいる。」

「そんなはず、ありません。」

ふわふわと思考が混ざる。


「あなたは・・・まやかしだ。」


そういうと、少年は口角を釣り上げ消えていった。





---------------.




「ここは・・・っ」

鍵師が目覚めた場所は何とも異様な光景だった。

地平線など存在しない黒一色の世界に、一本の香を持った人間たちが夢遊病のように徘徊する。

煙をまとい、その都度笑顔を浮かべるヒトは、なんと哀れな事か。


「どうかな。幸せそうだろう?」

声のする方には香炉に寄りかかる煙屋

「香が一番効くのは眠りの時。無防備な思考は己が願望を投影しやすい。」




「・・・何が望みですか。あんな悪趣味な夢を見せて、私をここに呼び寄せる理由は。」

「僕って優しーからさ。鍵師くんの願いもかなえてあげようと思ったんだよ。」

彼は鍵師の前に現れると、ニヤリと笑った。

そして、その手にはあの札が貼られた箱。

「ここには君の追い求める≪ヒトの思い≫がいーーーーっぱいある。
思う存分鍵を生み出してもらいたいんだよ。」


恍惚な表情に鍵師は眉を歪ませた。



「お断りしますよ。望まない思いの引き出しはそのヒトの願いを、思いを奪ってしまう。

こんなことしても無意味です。」

「へぇ、断るんだ?」

「ここにいるヒトを使っても、彼の封印は解けない。と言っているんです。」

「まさか!そんなわけない。君は以前、関連のない思い出の鍵で解錠してたじゃないか。」

「あれは思いそのものがない”モノ”だったからです。」

彼はバッと近くのヒトを引っ掴み鍵師の前に投げ込んだ。


「ほら?この男はどう?君と同じく、主人の最後を見届けた思い出は?」
「この子はどう?奴隷のように働かされて酷使された思い出は?」
「この老人はどうかな?周りに先立たれた寂しい過去は?」

彼は盲目的にヒトを次々と鍵師の前に連れてくる。

「煙鬼さん。」

「ほらっ、彼は」

「煙鬼さん!!!」

鍵師は息を荒らげ、目の焦点があってない彼の肩を掴み



「あの人を救えるのは、私たちしかいないんですっ!!!」


咆哮した。




「あの人の思い出を持つ人間は、もうこの世にいないんです!この箱の思いは私たちにしか紐解けない!!」


鍵師の言葉に、彼の体は突如力を失くし、ゆるゆると地面に沈んでいく。

「・・・そんなこと、妖怪の僕たちにできない。
・・・・なんで、人間は死ぬんだよ・・・・。しぬな。しぬなよ・・・・。」

ほろほろと黒い世界に水が溜まっていく。



「煙鬼さん・・・あなたは優しい。誰よりもヒトに興味がない振りをして、人一倍その生態に惹かれている。それを表に出すのが苦手で、誤解されやすいことは300年前から知ってます。」

しゃがみこみ、袖口から布を取り出すと彼の手を取り、握らせた。

「ヒトを解放してあげてください・・・。あなたもあの人も望んでいないはずです。」


彼は差し出された布を振り払うと、煙となって姿を消した。

それと同時に世界が煙一色となり、気が付くと鍵師は自分の店の前にいた。

すぐさま繁華街に顔を出すと、そこにはヒトが首をかしげながら自身の家に入っていく姿があった。

 

いつもの夜に戻ったのだ。

 





「・・・嵐のような方ですね。相変わらず。」

closeと書かれた扉を開き、店に入るといつもの部屋。

カウンターの向こうにあるのはあの箱。

それをそっと手に取って自身の視線まで持ち上げる。

「ーーーさん。煙鬼さん、元気そうでしたよ。

妖怪はヒトの心を理解できないと言いましたが、彼は私の知る限り一番ヒトを理解している。」


これが、その証拠です。

涙を流し心を吐露した彼の手を握った時、生まれた小さな小さな鍵。

人間には及ばないが、これで妖怪からでも小さな思いの鍵を生み出すことが出来たことに鍵師は笑った。


「この小さな鍵ではまだ貴方を救えることが出来ませんが、ゆっくりと頑張っていきますね。」

コトリとその箱をもとの場所に戻した。



次の日、鍵師は煙屋が開店する前にその扉をたたいた。

「・・・・昨日の今日でなんのよう?」

「そう拗ねないでください。」

「拗ねてない。それより、何か僕に報告があるんじゃないの。」

「ばれてましたか」

「あれだけ妖力ごっそり持って行っておいて、何もありませんでしたーなんてふざけたこと抜かすと、しばらく枕元で香を焚いてやるさ。」


店の窓際の机に誘導し腰を下ろして二人は向かい合う。


「それで?」
ふてぶてしく机に両肘を置いて煙管を吹かす彼。

「まずは、これを。」

机の上に取り出しのは小さな鍵。

「僕の妖力が混じってるね。」

「これは、あの箱とあなたの思いを紐解く鍵です。まだこの状態では封印のすべてを解くことはできませんが。」

目を一瞬見開く彼は、小さな鍵を手に取り窓から入る朝日に透かす。


「妖怪に思いの心なんてないと思ってたのに・・・。」

「それほどまでに、貴方とあの人の絆が深い証だと、私は思いますが。」

「はぁ、認めたくはないけど、そうらしいね。認めたくないけどー。」


鍵をすっと懐に忍ばせる彼に、鍵師はやれやれと言った感じで彼を見つけた

「会わない間に可愛げがない性格になったよねー鍵師くん。」

「そういうあなたは変わらず天邪鬼ですね。」

「僕は天邪鬼じゃなくて、変わり者ってだけだよ。」

「そういうところですよ。」


彼は席から立ち上がり、引き出しが沢山ある棚から何かを取り出し、それを鍵師の前に置く。


「これ、上げる。」

そこにあったのは煙の柄のお香袋。

「持っておいて損はないよ。」

「・・・協力をしてくれるということですか?」

「まぁ、今回のことで妖怪からでも鍵ができることがわかったしね。しばらくは気まぐれで協力してあげる。」

ニヤリと口角をあげて煙管の雁首を灰皿に打ち付け、灰を落とした。

 

 

 

 

*****************************

 

最後まで見てくださってありがとうございます!

 

煙屋と鍵師は先輩後輩関係って感じです。

少年の陰陽師に関係した妖怪たちに接触しながら、封印を解くために奮闘するお話。

 

普段余裕たっぷりな人が、必死になったり感情むき出しになる姿が好き♥

 

 

ヤフオク10/30 22:30終了です!

宜しくお願いします(=゚ω゚)ノ

 

 

 

 

-peRon-  

Custom Blythe No.12

 

妖怪叢書

ー 鍵師 ー

 

 


時は大正

和洋交わる街並みの一角に、ひっそりと佇む小さなお店があった。



【鍵屋】



カランコロン


「あ、あれ?ここ、何処なんだ...!?」

扉が開かれ、現れたのは驚いた顔をしたヒト。


ヒトは扉と店に居た青年を交互に見ながら慌てている。


「いらっしゃいませ。此処は鍵屋。お困りのようですね?」

青年に問われたヒトは、何故自分がここに来たのか分からないと答えた。


「此処は、鍵に纏わる悩みを持つヒトが訪れる場所。」


カウンター越しに、青年はふわりと笑う。


「その手に持っているものを拝借しても?」

「え...?」


ヒトの手には、先ほどまで持っていなかった箱があった。


「この箱は...」

「大切な物なのでしょう?」

「はい...。でも、開けられなくて...」


そっと、壊れ物を扱うように、鮮やかな細工が施された箱をカウンターに置いた。


「かなり複雑な鍵を掛けられていますね。」


白い手袋をはめて、鍵穴を見つめる。


「開けても?」

「・・・お願いします。」


訝しげに見つめるヒトを横目に、青年が両手を鍵穴に翳すと

突如、店内ががたがたと音をたて始めた 。


ヒトは驚き、カウンターにつかまるが、もっと驚くものを目にしてしまった。

青年の周りを多くのカギが浮遊しながら飛び回っていたのだ 。


翳した両手から光が漏れ、小さな鍵が現れた。


「この鍵はあなたの思いと、箱の思いを象ったもの。」


ありえない光景が目の前で起こっているのに、ヒトはどこか夢心地のように渡されたカギを鍵穴へと差し込んだ。


「これは・・・」


なかにあったのは、小さな手紙。

手紙を読み終えると、ヒトは涙をこらえるように鼻をすすった


「彼女は最後まであなたに伝えないつもりだったのでしょう。」


涙に滲んだ最後の文字に、ヒトは指を滑らせた。

にじみはかなり前のものだろう


「・・・・そしてあなたも。」


そのにじみに重なるように涙が落ちる。


「彼女はとても素敵な人でした。こんな俺を傍で支えてくれた。

親が決めた婚約で、彼女が俺を思っていないと分かってても、その真摯な態度にこたえたかった。

きちんと伝えられないまま、彼女ははやり病で亡くなって・・・



愛してると、言葉出来ないまま・・・」






≪ーーーーあなたを心からお慕いしております。≫





「・・・・ずっとここに、あったんだな。君は。」


ヒトは箱と手紙を大切に懐にしまい、帽子を胸に抱き礼をした。


「お代はいただいております。どうぞ、そのお心と共に。」


青年が笑うと、その周囲を浮遊する鍵も同じようにゆらりと揺れた




青年は新たに手に入れた"鍵"と"思い"を保管庫にしまっていると…


「相変わらず、ヒトの思いをのぞき込むなんて悪趣味ね!」


バンッと乱暴に店の扉が開かれ、大きなリボンをした少女が現れた。


「扉は優しく開けましょうね。」

「子供扱いしないでっ!」


ぷりぷりと怒りながら、カウンターの椅子によじ登った。


「長様(おささま)もどうしてこんなやつを野放しにしてるのかしら…ここ数百年で面倒が増えたってのに」

「妖現境(ようげんきょう)は今どのように?」


妖現境は、現との境目にある妖怪たちが暮らす街。


「…300年ぐらい前に生意気な陰陽師が封印されたでしょ。」

「ええ。」

「あいつが居なくなってから、鳴りを潜めてた悪鬼が、最近妙な動きをしてるのよ。」


鋭い爪を噛み、忌々しそうにその秀麗な顔をゆがめた。


「長様と取引してたくせに、ほんと生意気な陰陽師っ!」


カウンターをたたき、また吐き捨てる。


「あんた、さっさと能力使って生意気な陰陽師を起こしてくれる?」

「毛嫌いしてる割には頼りにしてるんですね。」

「頼りになんてしてないわよ!…でも、噂になってるわ。」

「噂?」

「あんたがこの店を構えてるのは、封印箱の鍵を生み出すためだって。」


すいっと少女が見た先には、お札が張り巡らされた桐箱。


「あれはただの置物ですよ。」

「嘘ばっかり。」


はぁーと大きなため息を吐いてカウンターに突っ伏した少女は首の鈴をシャランと鳴らした。


「人間と関わるだなんて…。」


そんな少女の目の前に、 本を持ってきた青年


「昔話でもしましょうか。」

「はぁ?いきなり何よ。」

「むかしむかしあるところに」

「人の話聞きなさいよ!」

「生まれたばかりの妖怪がおりました。」

「…。」


少女はブスっとした顔をしながらも、青年の妙に心地よい声に、大きな耳を仕方なーく傾けたのだった。




むかしむかしあるところに
生まれたばかりの妖怪がおりました

その妖怪は、ヒトの見た目をした青年で

記憶にあるのは、自分が鍵を生み出すことが出来る妖怪であるということだけでした

彼にとって、ヒトの生活に溶け込むことなど造作もなかったようで

ヒトと関わり、鍵を生み出すことは、新たな発見のようで毎日が楽しいものでした

彼は見目麗しい見た目も相まって、何でも開けることができる鍵師として有名になり、とある神社に招かれたのです

宮司が持ち出したのは大きな桐箱

何をしても開かないと言いました

むしろ、無理に開けようとした前宮司が呪われたとも言われた代物だと

しかし、鍵師はそれを難なく開けました




開けて しまいました




現れたのは禍々しい憎しみをその身から放つ怨霊

自分がしたことの重大さに気づきましたが、彼は鍵師

封じることはできないのです



妖怪同士に仲間意識などなく、怨霊は鍵師に襲い掛かりました

しかし、怨霊は目の前に現れた人間によって、呆気なく祓われたのです

鍵師はその力に、瞬きすら出来ないまま圧倒されました


「君の力はまだ幼い。私のもとで力をつけなさい。」


同じ過ちを起こさないために



鍵師は年齢に似つかわしくない話し方をする少年の手を取りました。



少年は自らを陰陽師だといいました

仕事に連れ添い、封印箱を解錠して、現れた悪鬼を祓う様を見て、鍵師は思いました


少年の力はどこまでも強い


でも、不安定でもありました

初めは気づかなかったそれが、己の妖力が洗練されていくと同時に、懸念せずにはいられないと

いつか器から零れ落ちていくのではないかと

そして、その懸念は現実となってしまいました



人間達の戦が始まり

妖怪や陰陽師達も巻き込まれたのです

戦いで酷使し続けた少年の体や精神は、とうに限界を迎えてしまいました

体を渦巻く力に耐えられずに少年は衰弱していきました

悪行罰示神だった式神たちは暴走を始め、地獄のようでした



少年のそばに残ったのは、式として使役されていなかった鍵師のみ


「私は自分の力を過信していたようだ・・・。」


小さな体はより小さく、今にも崩れ落ちる寸前でした


「鍵師よ。・・・私を解錠してくれまいか。」


万物のものを開ける鍵を生み出す妖怪 《鍵師》


それは物理的ものだけではありません



知ったのはいつだったか

思いが籠められた”箱”には力が宿る



それを紐解き、解錠するのが己の役目と鍵師は悟っていました



―ああ、この少年はこうなることをわかっていて ―


そうして、鍵師は少年の力の鍵を開け放ったのです




「「それでそれでっ!?」」

話をせかすように絵本を持った青年の膝に手を置き、目を輝かせる子供たち


「そして、少年は最後の力を解き放ち、暴走した妖怪たちは封印されました。この事件により戦国の世は終わりを迎えたんですよ。」


おしまいと絵本を閉じると、子供はさらに青年によじ登らん勢いで食いついてきた


「えっ!?じゃあその陰陽師はどうなったのー!」

「最後の力って・・・死んじゃった・・!?」


ひゃーと騒ぐ子供を肩から降ろし、青年はニコリとほほ笑んだ


「力ある妖怪に纏わる事柄には、大きな代償が付き物です。」

陰陽師は己の身を妖怪たちと自身の力と共に封印したのだ

「じゃあさ!その鍵師って妖怪に封印を解錠してもらえばいいんじゃない?」

その言葉に絵本を持つ手が震えた



「・・・それが出来れば、苦労しないんですがね。」



子供たちに聞こえない声色でため息と共に吐き出した

「では、私はこれで。」

休憩所の娘にお代を渡し、子供たちに手を振って、深く三度笠をかぶった 。


「ーーーー複雑なものほど、その封印に込められた思いを紐解かなければならない・・・か。」


嘗て少年に言われた己の能力の真髄


「どんなに紐解こうにも、貴方の思いは、今の私では計り知れないもののようです。」

何度だって試した。

貴方の思いを、共に封印された妖怪たちの思いを、紐解こうとした。

しかし、解こうと思えば思うほど複雑に絡まっていく。

「今思えば、貴方は何故私を式にしてくれなかったのか。」

紐解けない思いが、自らの思いに絡まっていることに気づかぬまま

青年はヒトの"思い"を知るため、今日も鍵を集める旅をつづけた。





「それってあんたの話でしょ!」

ぶわっと毛を逆立てた少女はカウンターに出されたミルクをもきゅもきゅと飲み干した


「ばれてましたか。」

「使役されてない妖怪が、自ら傍にいるなんて変わり者はあんたぐらいよ。」

「変わり者ですか・・・。」


ふむと首をかしげていると、店の扉が開く音がした


「これはまた、変わり者が来ましたね。」


一見、洋服を着た人間の見た目をした客は、扉を閉めた瞬間に豹変する


「誰が変わり者だ。」


西洋建築に似つかわしくない祈祷服へ変わり

頭には獣耳

背には四本の尾

切れ長の目が鍵師を睨み付けた


「お久しぶりです天狐さん」

「・・・・相変わらず拗れてるようだな。」


げんなりとため息を吐き、店にびっしりと張り付いた鍵を見渡す


天狐は千里眼を持つと言われている


それは思いも筒抜けということ


だが、鍵師もそれを知っていながら、天狐に聞こうとしない


天狐も己がそれを伝えても、意味がないことぐらいわかっている


だが、時折様子を見に来るのは、少なからず鍵師に恩を感じているからだろう


祠に封じこまれた己を解き放ったのは、この笑顔を絶やさない男だから



「あ、あのっ!!」

「ん・・・お前、猫又か。」


ブーブー文句を垂れていた少女が随分と静かだと思っていたが、天狐の前でびしっとその猫背を伸ばしていた。


「は、はい!敬愛する天狐様にお会いできて・・・うれしゅうございますっ!」


なれない敬語を使い、はくはくと口を大きく動かす様に、鍵師はクスクスと笑った 。

きっ!と睨まれたが何処吹く風である。


「鍵師、長が招集をかけてる。件のことだ。」

「招集?初めて聞きましたね。」


2人の言葉に、視界の隅でビクッと動いた少女。


「長に顔を見せるのは何十年ぶりでしょうか」

「永い時を数えるほど無駄なことはないぞ。」


鍵師と天狐はたわいもない話をしながら、店の裏手にあるおどろおどろしい扉に消えていった。

取り残された少女は深くため息をつく。


「天狐様はまだしも、あいつはよくわからないわ・・・。」


視線を移したのは、お札が張り巡らされている箱


「あんたも早く起きて、あのしょぼくれた顔を何とかしなさいよね・・・。」


少女はそう言い、二股に分かれた尾を揺らしながら二人の後を追った。



カタカタカタ


誰もいなくなった店内で、妖しく桐箱は揺れ動く…



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以前インスタで投稿した鍵師さんの小説です。

煙屋さんとセットで読むと、設定がわかりやすいと思います!

 

 

悪行罰示神とは
もともと悪さをしていた鬼や妖怪を屈服させた式神の事?らしいです☺️


油断すると使役者に襲いかかってくるなんて、素敵な設定🤭

悪行罰示神をこの時いつか作りたいって言ってて、煙屋さんが初めての悪行罰示神になります!