涼子の微笑に笑顔で答えたアキラ。
アキラの心の中で、水面から何かが顔を出すように浮かび上がっていた。
二人は車に乗り込みcoffeeを少し口に含んだ。
アキラは猫舌で熱い物が極端に苦手だった。
「アチッ!」
小さく声が出た。
涼子はアキラの様子を見てクスッと笑った。
「あっ、ごめんなさい。でも、子供みたいで」
「二人でこんな風に車に乗って笑顔で会話しながらcoffeeを飲んでる。これって他人から見たらどんな風に見えるのかな。あっ、私変なこと言いましたね」
涼子の言葉に、アキラはすぐに答えた。
「夫婦か恋人でしょう」
「アキラさんの口からそんな言葉がでるなんて」
「今は何を言っても許されるような気がして」
「アキラさん。何かが変わり始めてる」
「僕もそう思う。何かを感じ始めている。そう言った方が今はいいかもしれない」
「今は?」
「そう。今は」
「面白いですね。アキラさん」
二人は顔を見合わせ自然に笑顔で会話していた。
僅かな時を同じ空間で過ごし、涼子の何一つ隠さない素直で真っ直ぐな生き方を聞かされ、アキラは自分には無い何かを涼子に見ていた。
自分には出来なかった生き方がそこにあった。
アキラは、自らの意識に立ち上がることのない言葉達が呼び起こされつつあることを感じていた。
誰からも聞かれたくない言葉。
"愛"
「あと3キロほど走って高速を降ります。降りてから30分程で市内を抜け僕の田舎に着きますが宿はどうします?近くに温泉宿がありますから電話で予約入れておきますか?」
涼子はまたクスッと笑った。
「僕、また何か変なこと言いました?」
「いいえ。何も」
「でも、笑ってる」
「ごめんなさい。私、もう予約してあります」
「あ、そうですか」
「その温泉宿の名前"湖葉荘"ですよね」
「そうです。では先に宿へお送りします。僕は実家へ止まりますから明日の朝涼子さんにの携帯に電話します」
「あの。。。」
「どうしました?」
「宿は二人分の予約を入れてあります。勝手にすみません」
「あっ、いや。そうでしたか」
「もちろん別々のお部屋です」
「あ、はい」
涼子は少し頬を赤らめ俯いた。
「それなら、まず僕の実家へ行きましょう」
「はい」
二人は、白の神へと近づいていった。
つづく


