19. | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。







 真白な世界が広がっていた。





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 夜空を流れる雲は陽の光を遮り、白い光は湖面を滑るように走った。




 その光が恒太郎の足元を照らすと、白い光は薄れ湖の色よりも淡い青色の光へと変わった。






 恒太郎は、目の前に広がる世界を自分の心のframeに納めるように見つめた。







「ここに"意志"がある。アルカナはここにいる。。。いや、あるんだ。。。ここに」




 

 そう小さく呟き唇を横に引き締めた。




 青い光に包まれた静寂に響き渡る白鳥の泣き声が、一片の花びらのように恒太郎の肩越しに聞こえてきた。





 恒太郎は、声のする方を見上げた。






 真白な白鳥は青く染まりながら、翼を大きく広げゆっくりと湖に舞い降りて来た。







 恒太郎は、凍りつく湖に足を踏みいれようとしたその時、海砂が掌から湖に零れ落ちた。



 湖は一瞬にして青く透き通っていた。


 


 恒太郎の背後から、懐かしい声がした。




「ただいま。。。」





 振り返るより早く恒太郎はそこに誰がいるかを知っていた。


 

 振り向かず恒太郎は言った。






「おかえり。。。」





 
 恒太郎は、ゆっくりと振り向き。。。小さな体を両腕で強く抱きしめていた。











 アルカナの声が恒太郎の胸の中へ溶け込んでいた。




「10度目は覚えていないと思っていたよ。なぜ、僕を覚えていたの。。。」






 恒太郎の胸に頬を寄せたまま、アルカナが言った。




「君は、私を写真に撮ったでしょ。あの時が。。。君が見落としたものがあったの。。。」



「それは何?」



「知りたい?」



「うん。知りたい」



「。。。どうしようかな。。。」



「えっ?僕の"意志"ってイジワルなの?」



 少し笑いながら恒太郎が言うと



「そうかも。だって10度目なのに私を夢と現の隙間から引き寄せたのよ。わがままで身勝手な人かもしれないわ」




「そんなことはないよ。僕は。。。」



「僕は。。。何?」



「僕は、き。。。君に。。。ただ会いたいと思っただけだよ」



「君は両腕で私を抱きしめているけど?ふふっ。。。」




「ん。。。」




「ほら。。。やっぱりイジワルなんだね。。。君」




「違う。ぼ。。。僕は。。。自分の"意志"と向き合うことを忘れかけていた。だ、だから自分で"意志"と向き合い抱きしめたかった。それだけ。。。だよ。。。」




「ふーん。。。なーんだ。その"意志"って私?」




「そ、そうだよ」





「せっかく君を覚えていてあげたのになー。。。なんか足りないなー」





 アルカナは恒太郎の胸から離れようとした。



 すると恒太郎はアルカナの瞳を見つめ、両腕に力を込めて言った。





「君を。。。僕の"意志"を愛している」







「"意志"じゃない。"私"。。。アルカナ。。。」






「アルカナ、君を愛しているんだ」







「やっと、言ってくれたね。君。。。」





 アルカナの瞳から、涙が溢れていた。




 その涙を隠そうともせず顔を上げ恒太郎を見つめた。



 二人の影は月の光よりも温かく、夜空よりも青く光っていた。





 10度目という、再会してはならなかった二人。



 現で恒太郎と再会したアルカナ。そして、自らの"意志"を愛し抱きしめた恒太郎。



 
 人は旅人。


 背中合わせの心を説きながら意志をさらけ出していく。



 なぜアルカナが恒太郎の傍にるのか。


 なぜアルカナが時を超え"意志"を見せたのか。


 自らの明日を消し去ることも知っていながら。。。



 

 
 限りないの時の隙間に吸い込まれ、歩き続けた全てを恒太郎は変えようとしていた。明日に過去を重ねるほど、恒太郎は"意志"を抱き寄せていたのだった。







 アルカナが静かに言った。




「君の言葉が聞けたから。。。うん。。。」



 そう言うと、恒太郎から身体を少し離した。



 


 恒太郎が言った。




「一緒に行こう」




「どこへ?」



「いいから、行こう。僕と一緒に」



「何を言ってるの?君には明日があるのよ。今"意志"に目覚めたのに。また彷徨うの?現なのよ、ここは。私はここに存在することは出来ないの。君には失うものがあるの。私には何も。。。ない。。。の」





「バカだな。君はアルカナ。もう君は僕の"意志"じゃない」




「じゃ、何?」




 そうアルカナが言う言葉を静止するように、影は一つになっていた。





つづく




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