13. | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。





 恒太郎は、少女を見た。




「なぜ君は、僕から離れられないの?」




 少女は海に背を向けて言った。









「だって、僕は君だもん」










 恒太郎は不思議な世界に放り込まれていた。



 まるでアリスのように、異次元の空間を漂っていた。



 三つの月が、二人を淡く照らしていた。







「君が。。。僕?君は。。。誰?名前は?」






 
 恒太郎が名前を聞くと、少女はため息まじりに答えた。





「は~っ。。。仕方ないな。。。じゃー教えてあげるよ。僕の名前は。。。アルカナ」





「Arcanum。。。アルカナ?。。。」




 恒太郎は、少女の言葉を繰り返した。




「僕は君の"意志"なんだお。。。」





「僕の"意志"。。。」




「君はさぁ。。。自分の意志をいつも隠したまま見向きもしない。だから、僕はとても退屈で窮屈でたまらないんだ。周りのことばかり考えて、それが本当の自分の心の中にある君の"意志"だと思い込む。いつもそうして僕を偽物とすり替えてるじゃないか。だから僕、君の心から出て来たんだ。もういらないっのかっ!。。。て。。。本当は出ちゃ駄目なんだ~」




 恒太郎は、少女の言葉に静かに頷いた。




「そう。。。なんだ。。。ごめん。。。」




 恒太郎は、無言のまま顔を月の光から背けるように少し俯いていた。
 



 少女が言った。


 


「君は僕を創ったんだお。僕は君の"意志"。離れることなんて出来ないんだ。君が僕を無視するような時は何度も君の夢の中で語り掛けてきたんだ。これで九回目なんだお。でも、君は僕のこと覚えていない。夢だから。僕はいつも君の心の中にいる君。"意志"というはかり知ることのできない"確かな"ものなんだお」



「僕の人生の中で、九度目なんだ。君と出会うのは。。。」




「君の"意志"は君の心の中にあるから"意志"なんだお。誰のものでもないし。君が僕から目を逸らした時、君は彷徨うんだ。そして夢を見る。僕はそこに出てきたお。九回も」





「どんな人間にも"意志"はあるだろう?他の人間にもアルカナみたいな"意志"が夢に出てくるの?みんなも、こんな風に話ができるの?」




「それは、難しい。だってみんなが夢の中で自分の本当の"意志"に気付くとは限らないんだ。アルカナって名前。。。僕等はみんな同じ名前だお。心の中の"切り札"なんだ」



 それを聞いた恒太郎が言葉を噛みしめるように言った。




「切り札って見えないんだよな。切り札って触れたり出来ないし。アルカナ。それなのに君は僕に姿を見せてくれたんだ。僕の"意志"として。。。」





 アルカナは、小さな左手で恒太郎の右手を握った。





「旅する者は、背中合わせの心を説き人の意志をさらけ出していく。なぜ君が私のそばにいるのか。なぜ私が時を超え"意志"を見せるのか分るはずよ。君も私も旅をしているだけ。限りないの時の隙間に吸い込まれ歩き続けた全てを、君が変えようとするなら、明日に過去を重ねるほど意志は抱き寄せるものを教えてくれるはず。でも次に私が君のそばに現れた時。。。私は。。。」




 急に大人びた声に、恒太郎は手を握るアルカナを見た。




 おさげ髪の少女は、スパイラルヘアの女性に代わっていた。





 Arcanum。



 

 切り札とは見えぬもの。


 切り札とは触れぬもの。





 それが意志。






 九度目の"意志"






 №9 




 それは、10年男の青臭い自由のラストタイムに見た"意志"だった。




 



$のんびりと





つづく