7. | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。




 10年男よ!



 さぁ、どうする?



 彼女は目の前にいる。



 今、ここで何をためらってるんだよ!





 恒太郎の心の中で青年の声が聞こえた。






「し、失礼、ですが、あの。。。その。。。朝見た夢と今さっき見た夢に貴女がいたんです。貴女を見たんです。それに、朝交差点でも見かけたんです。。。貴方を。。。」




 あぁぁぁ、言ってしまったな。




 支離滅裂な言葉を彼女に発した。




 俺は今何を言っているだ?これじゃダメだ↓



 あぁあ~。。。





「ふふっ。おかしな人」





 と言いながら軽く笑美を返し、彼女は車の助手席の窓に触れた手を離し立ち去ろうとした。



 恒太郎は車のドアを開け、大きな声を出して言った。




「あっ、あの凸凹はどっちですか?ち、ちょっと待って!待って下さい!!」




 そう言いながら送り脚のつま先が車のフレームに引っかかり転げ落ちるような感覚に陥った。




「あぁぁぁ。。。。」




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「大丈夫ですか?何かありましたか?今、あぁぁ。。。って叫んでましたが?」




 と歯切れのいい男性の声が耳元で聞こえた。




 警察官だった。




「ん?あれ?いや、そこにいた女性と話を。。。今さっきそこの店から出てきた女性がいて、私に話し掛け。。。て。。。くれたので。。。」




 二人の警察官は、物珍しい動物でも見るように、運転席側の窓のそばから恒太郎の顔を覗き込むように立っていた。




 
 ん?もしかして?



 少しして、恒太郎は気が付いた。



 





 自分は、夢のまた夢を見ていたのか?と。。。







「ん?大丈夫ですか?寝ぼけているようですね?1時間ほど前にそこの、ほら目の前のカフェレストランから、店の前の駐車場に停車している車の中に男性が目を閉じたまま横たわっているという通報がありましたので巡回警邏中こちらに向かってきたところです。失礼ですが、貴方がおっしゃるように女性の方とお話されている様子は全く見えませんでした。それに店は既に閉店していますが??」




 「はぁ。そうみたいです。。。よね。少し仮眠が長すぎて寝ぼけていたようです」




 「少しお話を聞かせて頂けますか?」




 と背の低い穏やかな顔つきの警官が恒太郎に話しかけた。任意なら話さなくてもいいんだよな。。。


 第一説明がつかない。



 "自分が今朝見た夢の中で出会った女性を自宅近くの交差点で見つけ、そして今また夢の中で出会い、その彼女が今自分に話し掛けていた時に貴方たち警官が来た"などと言ったらどうなる?恐らく"すみませんが任意で車の中を拝見させて頂いて宜しいですか?"なーんてことになる。完璧に薬か何か使用しているように勘ぐられる様相を呈していく。




 あれっ?なんでそうなるかな?俺はただ居眠りをし過ぎただけだろう。



 警官には余計な夢の話はせず免許証を提示し、仕事で疲れた時には帰宅途中よくここで仮眠を取ることを話し、以後気を付けるよう指導され普通に事なきを得た。



 それにしても、今日はよくこれだけ夢と現実が交差した時間を過ごしたものだと恒太郎は思った。


 
 


 ジャケットの内ポケットに入れたままのハンカチを掌の上でそっと開いた。



 そこに海の砂は確かにあった。




 もう一度そっと包み直しポケットに入れ、恒太郎は車を走らせた。




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 雨が強く降り始めていた。



 ワイパーで拭き取られる雨は、対向車の光まで拭き取っていくように景色は流れた。




 大丈夫。



 大丈夫さ。また会える。きっと彼女に。。。



 あの女性に必ず会える。



 


 恒太郎は、根拠のない自信のように自分に呟いていた。




 
 どこへ帰る?恒太郎。。。


 どこへ向かう恒太郎。。。



 


 10年男の子守唄が聞こえ始めていた。。。








 つづく


 





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