6. | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。





 



 恒太郎は、シートの背もたれを倒し身体を少し倒し海を眺めた。



 潮風の音が、耳をかすめた。







 約束。。。



 誰かと待ち合わせをした場所でも、時間でも無い。



 恒太郎は、いつもここにいた。


 ただ、時を流している。それだけだった。



 心を閉ざした10年間を振り返るでもなく誰を責めるでもなく、自戒を抱く分けでも無く、ここで時を流していた。



 不思議なものだと、いつも一人苦笑いしながら煙草の煙を潮風とともに流していた。



 恒太郎は車から降り、静かにドアを閉め波際へと歩き始めた。



 潮風が少し穏やかになっていた。





$のんびりと







 靴のつま先に触れた小石を拾い上げ石肌を親指で撫でた。



 角が取れツルツルしているのを感じ、苦笑いをしながら海へ投げ込んだ。



 
「大人か。今掴んだ石ころみたいなもんだよな。角が取れてツルツルであたりさわり無く、世の中渡り歩いてさ。凸凹(でこぼこ)してるほうが、きっとぴったり合うんだろう。人間なんてそんなもんかもな。。。でもな~いくら凸凹でも噛み合わなきゃぴったりこないだろうし。凸凹コンビって言うけど、まったくうまく言ったもんだよ。ツルツルはダメさ。そう、ツルツルはね。。。」




 恒太郎の頼りない髪の毛が、風に揺れた(そうじゃないだろう><)。



 独り言のように心で呟きながら、砂浜の腰を下ろし両膝を軽く抱え座った。



 既に陽は西に沈み、国道沿いの街灯と海沿いにあるカフェの灯りが恒太郎の背中を照らしていた。




 出番を待っていたかのように月は沖に向い光の帯を描き始めていた。




 手の甲に白く冷たいものが落ちたのを感じ、恒太郎は空を見上げた。




 白い綿雪。




 これじゃ冷え込むはずだと、車に立ち戻ろうとした時だった。




「私は凸(でこ)?それとも、ん。。。凹(ぼこ)?君はどっち?」



 問いかける声になぜか懐かしさを感じた恒太郎は違和感なく答えた。



 
「僕は凸(でこ)だろう。君は?凹(ぼこ)?かな?」




 えっ?俺は誰と今は話しているんだ?恒太郎は後ろを振り返った。



 誰もいなかった。










 「トントン。トントン」




 車の助手席の窓ガラスを、軽く拳で叩くような音で恒太郎は目を覚ました。


 

 いつもの転寝だった。



 またかと思い暗闇の中目をこすりながらシートを起こし外を見た。

 

 綿雪が車のボンネットに白く重なり始め、海も暗闇を深めていた。




 慌てて助手席の方へ目を向けたが誰も見えなかった。



 気のせいかと思い車のエンジンを掛け、車載のデジタル時計を見た。



 22時を過ぎていた。




 ゆっくりと車を出そうとバックした。その時、カフェテラスから女性が歩いて来るのが見えた。



 店の灯りが微かに女性の横顔を照らした。





 
 間違いない。彼女だ。夢で出会った女性に間違いない。


 ん?いや、確かにそうだ。髪はスパイラルだし、細見で小柄。


 うん確かに彼女だ。


 朝交差点で見かけた時と同じ服装だし。



 待てよ、さっき夢で語りかけてきた女性も同じ?携帯電話で微かに聞き取れた声も。。。



 
 恒太郎は、少し俯きながら問答を繰り返していた。



 慎重なのはいいが、いつもこれで何かを無くしている。




 よし。話しかけてみよう。うん。意志を決め顔を上げた時既に女性の姿は消えていた。




 「あぁぁ。。。。またかぁ。。。俺はいつもこれだ。。。」



 車のハンドルに頭を額から持たれ掛け目を閉じた。






 「こらっ!!!だめだよ!!!居眠り運転は!ちゃんと起きなきゃ事故起こすよ!」






 恒太郎は女性の声に慌てて頭を起こした。



 運転席の窓ガラス越しに笑美を浮かべ語りかける女性は、確かに夢で見た。いや、朝交差点で見た。いや、今見てる。


 なんだよそれ?



 そう。。。彼女が目の前にいるんだ。


 自分に語りかけてる。




 恒太郎は、ポカーんと口を開いたまま彼女を見つめていた。







 10年男の恒太郎。まさかの恋?


 でも、始まりがこれじゃー。。。。


 早く口を閉じた方がいいな。。。。


 時を止めろ!恒太郎!!!


 ん?誰が言っているんだろう。。。?^^;






 つづく



$のんびりと