彼女は、旅立ちの夕暮れを待つことなく街を歩いていた。
男も女性が向かう場所へと歩いていた。
風が少し冷たい。
ビルの谷間を抜け公園に男が差し掛かった。
その時、月明かりに照らされながら街路樹の通りを歩いてくる彼女を見つけた。
彼女は、まだ男に気付いていなかった。
男は、彼女が進む前に街路樹の影から飛び出した。
「よっ♪」
女性は少し驚いたように
「もう。。。♪」
と俯きぎみに男の顔を見上げた。ゆっくりと街路樹を歩く二人。
繋いだ手はとても暖かい。
彼女が言った。
「待ちきれなくて。。。♪」
男は
「そっかぁ。。。」
と一言。
「今夜は風も強いし冷えるよ」
と女性は繋いだ手を男の腰に回した。
男は何も言わず彼女を包むように肩を引き寄せた。
言葉はいらなかった。
こんなにも大切に思う。
「今夜は近くのホテルに予約入れたの」
と彼女が言った。
「そっかぁ。。。」
と男が答えた。
「今夜の貴方。。。“そっかぁ”しか言わないの?♪」
と彼女は男の顔を下から覗き込んだ。
「うん」
と。。。また一言。彼女は
「なーんだ。明日のこと考えているの?」
と聞いてきた。男は何も答えなかった。
「大丈夫だよ。貴方心配性だから♪」
と彼女は努めて明るく声を出した。
男はは堪えきれず
「無理しなくていいよ。僕がそばにいるから」
と言うと
「ばか♪」
と彼女は頬を伝う涙を見せまいと空を眺めた。
「私ね。幸せになるの。きっと。幸せになれると思うの。だって。。。」
と言いかけ。。。男のの胸に顔を埋め二人の足は止まった。
「ばか。。。は。。。どっちだよ?♪」
と男はためらいながら彼女の瞼に顔を寄せた。
月光りがとても優しく降り注ぎ、心が決める“時”は今、二人だけのものになっていた。
人は、守るべきものがあって、初めて生きていると感じる。
男は心の中で呟き、彼女を包んでいた。
低い雲が、少しだけ月に目隠しをしてくれていた。
彼女は男の胸に涙を残し寄り添い歩き始めた。
二人の足音が夜道に響き渡っていた。
男は彼女に合わせ、ゆっくりと。。。ゆっくりと。。。息を合わせるように。。。歩いた。。。
夜は更けていく。
二人を残して。
「フォリナー」のワンシーンより。。。