62.The original world | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。






和也の横に車座になって座っているのは、病院の心臓外科医である加納裕次郎ことアッ君(自販機伯爵)と看護師の夏菊瑠菜(自販機伯爵の秘書)だった。




 それにしても、早すぎる出番だ。




 錬太郎は、ヒマちゃんが一つにした世界の様子に戸惑いながら入ったばかかりなのに、こともあろうに自宅にまで押しかけてくていた。まぁ、居候している家に客を招待する和也も和也だ。美由紀も何食わぬようすで皆と談笑し始めている。




 ともあれ、以前の生活は保たれたままのようであった。現時点でトラブルの元にな得るのはアッ君だ。錬太郎は美由紀と和也に促され車座の中心に腰を据えた。







「錬太郎!紹介するよ。。。こちらはお前の会社のすぐそばにある大学付属病院に勤務している加納裕次郎さん。そして隣の美しい女性は夏菊瑠菜さん。裕次郎さんと同じ心臓外科に勤務している看護婦さん」






 アッ君は髪を七三にきっちり分け、瑠菜はショートカット。二人は軽く錬太郎に会釈し5人はビールで乾杯し宴は続いた。錬太郎も、その場の雰囲気を壊すまいと和也達の話に合わせながら食事を楽しんだ。


 ただ、楽しむといっても、アッ君が何を言い出すかと思い少し警戒しながら様子を観察していた。



 2時間ほど過ぎ11時を過ぎようとしたとき加納裕次郎が








「僕ら、そろそろ帰ります。今日はお招き頂きありがとうございます。突然押しかけて深夜まで騒いでしまいました。和也さん、今日は本当に楽しく過ごさせて頂きました。また、そのうち飲みましょう」




「おぉ、いいよいいよ。気にしないで、また遊びに来て♪」






 お前が言うか、居候のお前が!錬太郎は和也の頭を軽く小突いた。







「錬太郎さん、これからもまたお会いする機会がも増えると思いますが、よろしくお願いします」







 と加納(アッ君)が言うと、和也と美由紀は少し頭を傾げた。二人が帰った後、和也はすぐに就寝!高いびき。美由紀は少し片付けをした後帰り支度を始めた。


 玄関を出ようとした美由紀に錬太郎は声を掛けた。






「ごめんな。色々してもらってさぁ。。。そこまで送るよ」






 美由紀は小さく頷き、二人はタクシーが拾える通りまで少し歩いた。







「錬太郎、やっぱり少し疲れてるんじゃないの?元気ないわよ」




「そうかな?そんなことないさ。それより、特に変わったこと無かったかな?」




「え?何が?やっぱり変よ?早く休んでね♪」





 
 そう言うと美由紀はタクシーを拾い、タクシーの後部座席の窓から手を振り帰って行った。




 一見何も変わっていないように感じるが、確かに二つの世界は一つになっていた。


 アッ君がその証拠だ。ただ、全てが整合しているとは思えなかった。ヒマちゃんのすることだから、きっとどこかであわてん坊の影響が出ているに違いない。




 それにしても、アッ君との再会は早すぎると思った。何か魂胆があるのか、錬太郎の気がかりの種はちゃーんと残されていた。


 自宅マンション前にあるアイスの自販機の前を通り掛かった。ここから俺は旅に出たんだよ。。。そう言ってポケットからコインを取り出しアイスを買おうとした。




 一度あることは二度三度?。。。錬太郎。。。よせばいいものを。。。コインを入れた次の瞬間。。。




 自販機の扉が開きはじめた。。。何?何?。。。えっ?





あぁぁ。。。


 廉太郎に平和は来なかった。




つづく