いったいどれ程の時間が経っているのか錬太郎には見当もつかなかった。ヒマちゃんにも聞いていなかった。今彼女は錬太郎が携えている鉢に植えられた額紫陽花の中にいる。
自分が創りだした物語の世界では既に一年が過ぎていた。
ヒマちゃんは二つの世界を一つしたと言っていたが。。。果たしてここでは。。。
マンションのエレベーターの上階へ向かうボタンを押す。暫くぶりのさぼりがちなワイヤーロープに引き上げられ3階に着いた。不器用にドアが開き錬太郎は右へ折れ一番奥の305号室へゆっくりと歩く。
ん?ちょっと待てよ。何やら部屋の中から賑やかな笑い声がする。男女数人の声だ。今野美由紀はどうしているのだろう。。。友人の茂木和也はまだ錬太郎の部屋に居候したままなのか?
錬太郎は自宅だったマンションのチャイムを鳴らした。。。
「ビンボー~。。。」
すると中から女性の声がした。
「はーい。どちら様でしょう?」
錬太郎は言葉を詰まらせた。自分の部屋ではあるが、いったい誰がいるのかも分らず”ただいま”とは言えないし。。。誰に会いに来たのかも自分では説明できないし。。。もし、他人が住んでいるならどう説明すればいいのか。。。まぁ、そのときはその時だ。。。錬太郎はインターホンに顔を向け
「澤井錬太郎です」
「。。。。」
無言だ。何やら中がざわざわしている。部屋の中の玄関そばで小声で何やら話をしている声が聞こえる。もしかしたら、ここには自分の知人は誰もいないのか?ふと、表札を見ると自分が書いた汚い字で澤井という名字が糊付けされたままだ。
いいんだ。ここは自分の部屋なんだ。まだ、ドアが開かないし返事も無い。
すると。
「今、開けます。ちょっと待ってて」
ん?この声。。。今野美由紀の声だ。。。?ということは、茂木和也と彼女が?いやいや。。。そんなはずはない。
「おかえりなさい。。。錬太郎。今日は仕事忙しかった?私も今来たの。和也さんが友達を連れて来て。。。ごめんねバタバタしてて。。。早く入って。。。でも、なんか変よ?自分の家なのに”澤井錬太郎です”なんて。。。早く。。。ほら」
「うっ。。。うん」
錬太郎はゆっくりとした足取りでリビングに進むと
「よっ、錬太郎!悪いな。。。そこの今居酒屋で一杯引っかけてたらさ彼らと意気投合しちゃってさぁ。。。その乗りで。。。一緒に飲もうってことで二次会ここでさ。。。いいよな?錬太郎!ん?。。。ところで。。。その手に持ってる鉢。。。何だ?お前それ買って来たのか?」
「いっ、いや。。。これは。。。」
と、和也の隣に座っている横に目を向けた。するとそこに男女が座っていた。。。
ん?
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なんで?
あぁぁぁ。。。やっちまってる。。。
やはり平和な生活に戻ることは出来ないようだった。
時間は止まっていた。。。
つづく