『Stone and leaf』
お月様が言いました。
「葉っぱさんはできることが沢山増えたよね。でも、葉っぱさん“らしく”ないんだと想う。何だか仲間はずれになっている気がするよ。石ころ君の身体も付いて歩ける葉っぱさんなんて世界中どこを探してもいないよ。それに、名前って、生まれた時に自分じゃ名前を付けられないだろう。きっと、君を作ってくれた神様の想いが込められていると思うんだ。きっと葉っぱさんの姿を見て名前をつけてくれたんだと思うよ」
「そうなんだ。生まれた時に自分の名前は自分じゃ決められない。私に合った名前なんですね。でも、他の葉っぱの仲間の中にいるとみんな仲間は同じ葉っぱさんだから、自分と他の葉っぱさんの区別ができないんです。どうしたらいいのですか?」
と、葉っぱさんがお月様に聞いた。するとお月様は
「葉っぱ”は仲間の名前だから、葉っぱさんの下に何か言葉を足してみたらどうかな?それなら葉っぱさんの仲間で、その中で自分と他の仲間とを区別できると思うよ。でも、その姿じゃ仲間に入れないんじゃないのかな?」
と言いました。
「わかりました。姿は変えられないけど、私を一番よく知っている石ころ君に名前をつけてもらいます」
と言って心の中の石ころ君に聞きました。
「石ころ君、私の“葉っぱ”の下に何か言葉をつけてみて♪」
と言うと、石ころ君は
「そうだなーっ、“葉っぱヒラヒラ”さんは?」
と言いました。すると
「私、今はヒラヒラできないから、葉っぱらしくないよね」
と葉っぱさんはガッカリしました。
「やっぱり、自分の名前にあった身体に戻らないと名前って付けづらいのかもしれないね」
と葉っぱさんは言いました。石ころ君も
「僕達、もとの身体に戻った方がいいのかもしれない」
心の中で葉っぱに呟きました。
葉っぱさんも石ころ君も言葉がなくなりました。
せっかくお月様から教えてもらったけど、この身体ではどの仲間にも入れません。
眠れないまま朝を向えた葉っぱさんと石ころ君。
満月の夜まであと少しです。葉っぱさんはテクテク歩き始めました。
するとお日様に向って葉っぱさんが聞きました。
「おはようお日様さん。私、自分の名前で悩んでいます。“葉っぱ”の下に言葉をつけて他の葉っぱの仲間の中で区別したいと思うんです。はじめは“葉っぱ”であとに“。。。”何々って言葉をつけて欲しいんです。でも今私の身体は葉っぱらしくなくて、どうしたらいいのかわからなくなりました」
と言いました。するとお日様が言いました。
「それは無理だよ。だって葉っぱさんと会って話しをするのは初めだし、名前って、その人のことを知ってないと簡単には付けられないよ」
と言いました。すると葉っぱさんは
「生まれてくるときは誰にも会ってないのに、神様は“葉っぱ”ってつけてくれたのに。どうして会ってもいないのに名前をつけることが出来たの?」
とお日様に聞き返しました。
「それは神様がはじめに、こんなものって決めて作ってくれたからだよ。こんなものになって欲しいっていう森の神様の想いがあるからだよ。今の姿は葉っぱさんじゃないから仲間がいない。僕も仲間はいないよ。お日様は一つしかないからね。神様がつけたのはそれぞれの仲間の名前だから、葉っぱさんは葉っぱの仲間じゃなくて、もう世界にたった一つしかないものになってしまってる。僕と同じさぁ。もう仲間はいらないから“葉っぱ”はいらないと思うけどな」
と言いました。
葉っぱさんは迷いました。石ころ君は葉っぱさんの心の中に話し掛けました。
「葉っぱさん。もし、葉っぱさんが葉っぱの仲間に戻りたいなら神様にお願いしてもとに戻してもらおうよ。そうすればきっとみんなが“葉っぱ”の後に葉っぱさんらしい言葉を仲間がつけてくれるよ。それなら他のみんなと区別がつくよ」
と言いました。
「でも、歩いたりできなくなるよ。石ころ君とも一緒にくらしていけないかもしれないよ」
と葉っぱさんは悲しくなりました。石ころ君と葉っぱさんは森の神様を呼びました。
石ころ君は神様に言いました。
「神様、お願いがあります。僕たちをもとの身体に戻してください」
とお願いしました。すると神様は
「それはできない。二つを一つにすることは出来ても、元の身体に分けることはできないんだ」
と神様が言いました。すると石ころ君は
「それなら、もっと、もっと、一つになることはできるのですか?」
と神様に聞きました。
「それはできる。それは人間という生き物になることなんだ。人間には心があるとも、ないとも言えない。だが、自分を感じる心がないと生きていけないのが人間なんだ。私は、まだ人間を作ろうとは考えていなかったんだ。今、葉っぱさんと石ころ君は自分を感じる心があるだろう。心で会話もできる。人間はこの世界ではとても幼い生き物になるし、心で会話は出来ないかもしれないよ。だから、森のみんなとお話ができなくなるってしまう。そして、葉っぱさんと石ころ君は一つの心になる。自分を感じる心が一つになって君たちは会話ができなくなるんだ。それでもいいのかい?仲間もいない、たった一人の人間になるんだよ。それでもいいのかい?」
と二人に聞きました。すると葉っぱさんが言いました。
「私。。。石ころ君のおかげて生き返れたし、歩いたり笑ったり食べたり。。。色んなことができるようになりました。他のみんなと会話が出来なくなっても、石ころ君と会話が出来なくなっても、石ころ君と一つの心と身体になれるのなら、私は人間になります。もっと一つになってもかまいません。こんなに私のことを思ってくれている石ころ君なら。もとの身体に戻れないなら、心も身体も石ころ君と一つになって人間になります。ただ一つの心を持つ人間にして下さい」
「わかった。但し、もう一度だけ言うよ。人間は森の中で仲間とだけ平和に仲良く生きていくわけにはいかないよ。いつも誰かと繋がりをもってないと生きていけない弱い生き物なんだ。自分の周りの生き物や森を変えてしまうかもしれない。自分の生き易いように変えてしまうかもしれないんだ。私は人間を作りたくない。ありのままに生きている森のみんなが住みにくくなるかもしれないからね。人間は生き物の中では一番仲間づくりが下手なのに、一人で生きていくことがとっても下手なんだ。言葉も無いが、君たち二人なら創りだせるかもしれない。但し、いいかい。。。決して自分に無いものを欲しがってはいけない。。。それだけ約束してくれるかい?」
と神様が言いました。
葉っぱさんと石ころ君は顔を見合わせました。
「はい。わかりました。葉っぱさんの心と身体が一つになれるなら、世界中から仲間外れにされてかまいません。一つの心と身体を持つ人間にして下さい。今の身体のままで生きても仲間はいないし名前もつかないから。神様!最後に一つだけお願いがあります」
と石ころ君が言いました。
つづく