57.Compensation | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。



            
 泉との夫婦生活に戻っていた錬太郎。しかし、それ以前に生活していた一つの現実世界の記憶は残されたままだった。幼馴染の茂木和也を部屋のこしてきている。そして、今野美由紀との生活もスタートし始める時だった。だか、錬太郎は泉のいる世界へと戻っていた。



 MUSIMIRU-TM。。。虫観るチームも全て、この世界にいることになる。



 錬太郎は、守るべきものを守ったのだろうか。。。まだ、裕子に会っていなかった。



 この世界に戻り二日目。社に出ても誰も不思議な顔はしなかった。錬太郎の父は無くなっていた。




 泉、裕子、多香子、麻里恵、健太、太助、瑠菜、それぞれが。。。これまでの出来事を全て忘れているかのように錬太郎に接していた。




 裕次郎。。。そう自販機伯爵はこの世界に残ると言っていたが。。。まだ、コンタクトが無い。


 消えた瑠菜はこの世界に戻り泉を支えているということは、おそらく二人だけは記憶を残している。



  仕事が終わり、いつもの自販機の前に立つ錬太郎。額紫陽花も終わりが近づいている。



  錬太郎は赤提灯の屋台がある空き地へ向かった。





 灯りが点いた屋台は、夕暮れの街の中に溶け込み優しく見えた。



 おやじさんも退院して店を開いてるんだな。






「よっ!おやじ元気か?」






 と、暖簾を手繰り上げた。








「あっ、錬太郎さん。お久しぶりですね。お忙しかったんですか?ほら、おかげさまで私も仕事ができるようになりましよ。あん時はお世話になりました。娘から後から色々と聞きやした」






 錬太郎は思った。




 あいつ。。。自販機伯爵のアッ君。。。





 みんなの記憶。。。どこまで消したんだろう。。。自分と泉と瑠奈だけがこれまでま出来事を知っているのか。。。他のみんなの記憶の中に何か残っているのだろうか?





 自分が一年以上消えていた。日付上は確かにそういうことになる。MUSIMIRU-TM。。。虫観るチームも全員揃っているみとになる。



 裕子には、まだ社でも会っていなかった。



 
 錬太郎の頭の中は、まだ混乱していた。



 屋台のおやじは、相変わらずのひげ面で笑って見せた。





 すると、ん?ん?ん?ん?ん?







「助さん、あれっ?どうして?」




「助さん、お店。。。手伝ってるの?会社は?」








 と錬太郎が不思議そうに聞くと








「実は、会社昨日辞めたんです。多香子さんと。。。その。。。」






 と言いかけると多香子が笑顔で舌をペロリと出し、助さんの腕に手を回し







「結婚することになりました♪」






 えぇぇぇぇ。。。そこだけは前と繋がってるのかよ。






「そっか。おめでとう♪」








 多香子は少し不機嫌そうに







「何、その反応。もう少し何かあるでしょう。驚いて、残念。。。とか。。。ね~助♪(笑顔)」








「ハイハイ。いゃ。。。困った困った。。。(笑顔)」







 と、錬太郎が言うと







「あぁぁぁ、錬太郎さんたら。。。もう!失礼だよ♪」







 多香子は助さんと嬉しそうに微笑んだ。四人でワイワイ飲んでいると、そこへ麻里恵と健太が。。。






「部長、お疲れ様♪」






 健太に寄り添いながら手を挙げ入ってきた。






 麻里恵は、錬太郎の耳元に近づき









「ありがとう、部長」







小声で囁いた。んっ。。。麻里恵は。。。あの出来事を記憶に残しているのか?どういうことだ?まだ、他にも記憶を残している人間がいるのか?





 夜10時を過ぎる頃になって





「俺、帰るから。。。勘定は俺だよな。じゃ、また来るから。助さん、多香子とおやじさん頼むよ♪マリちゃん♪健太と仲良くな♪健太。。。頼むぞ♪」







 と言い。。。盛り上がる屋台を後にした。
 





 ふらり。。。ふらりと。。。帰り道の自販機の前。





 そこに泉が立っていた。。。



 いや。。。泉?なのか?。。。



 えっ。。。





 錬太郎は言葉を失っていた。。。



 そこに。。。誰もが。。。すべての幸せを願いながらも。。。



 代償を払った者が。。。いた。。。



 



つづく