「君は誰?なぜ。。。僕に会えるって知ってたの?それも。。。ずっと前からなんて。。。?」
と、言うと。。。
「ずっと前、私。。。貴方に。。。会ってます♪。。。私。。。貴方がここに来るの知ってました」
「では、失礼します」
と、襖を閉め部屋を出ていった。
何故。。。僕を知っているんだ。。。それも、ずっと前からなんて。。。僕は初めて彼女を見たはずだ。
ん。。。考え込みながら。。。外の景色に目を向けた。
不思議な香が部屋を漂っていた。
朝摘んできてくれた額紫陽花。。。錬太郎はバックからカメラを取り出し額紫陽花を一枚撮ろうとシャッターを切った。。。
その時。。。んんん?。。。あれっ?。。。何だろう。。。この感覚。。。確かに以前。。。撮った。。。同じように。。。
確か。。。あれは。。。
錬太郎の身体に衝撃が走った。。。
やはり。。。自分は既に一度。。。。
死んでいるのか。。。と。。。
呼び起された記憶。。。
いったい。。。どうなっているのか。。。自分は今生きているのか。。。
錬太郎は自分の記憶を確かに手繰り寄せていた。。。一年前。。。交通事故で。。。
あの時。。。道端で額紫陽花の写真を撮っていた。。。後方から来た脇見の運転の車に。。。
錬太郎はカメラを持ったまま。。。
錬太郎の記憶は、衝撃を受けた瞬間で止まっていた。。。
それから、自分がどうなったのか。。。
でも。。。なぜ。。。
錬太郎は、瞬きすらせず額紫陽花を見据えていた。
何分時が過ぎたのだろう。錬太郎は彼女を探し始めた。
フロント。。。調理場。。。渡り廊下。。。玄関。。。リネン庫。。。大浴場。。。
フロントに戻り、自分の部屋を担当している中居を呼び出してくれるようにも頼んだ。しかし、その中居の名前を聞いたが知らないと言う。。。
明日にはここを立ち仕事に戻らなければならなかった。しかし、自分が生きているのか死んでいるのかさえ。。。確認できない自分がいまここにいる。
その、現実に錬太郎は当惑しつつも、自分の存在を理解しなければならなかった。彼女を探さなければ。。。錬太郎は渓流沿いへ向かった。
まだ午前9時過ぎ。
錬太郎は、全身が凍りつく感覚を覚えながら額をにじむ汗をぬぐいながら走った。朝来た渓流まで来たとき。。。川の向こう岸の岩に腰掛けている彼女が見えた。
流れに両足を任せながら横顔を錬太郎に向け佇んでいた。
川面がキラキラと日の光を受け輝きを増している。その光が彼女の横顔を眩しくさせていた。
錬太郎は足を止め、まるで蝶を捕まえるかのように荒い息を抑えゆっくりと川を足を濡らしながら近寄っていたった。
そして彼女の横顔に話しかけた。
「僕は、生きているの?なぜ君は僕を知っているの?ここに来ることをどうして知っていたの?君は。。。だれ?」
錬太郎は、自分自身の生の証を探るため彼女に言葉を投げ掛けた。
すると。。。
「あのとき、道端に咲いていた額紫陽花。。。そう。。。私を写真撮ってくれていたでしょう。。。」
そう言って。。。上流へと彼女は立ち上がり歩き始めた。。。
「じゃ。。。君は。。。」
と。。。言い掛け
錬太郎は、彼女の後をついてゆっくりと歩き始めた。
額紫陽花。。。のうぜんかつら。
そして、過去の記憶を包み込むように。。。薄紫色の立葵。。。黄色い日光黄菅(ニッコウキスゲ)が咲いていた。
季節を、そして記憶を呼び起こすかのように。。。ひっそりと。。。凛々しく。。。
手繰り寄せる記憶は。。。今。。。渓流を吹き抜ける風と共に。。。
二人を包み始めていた。。。
つづく