42.About to disappear | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。





 麻里恵は話が終わると社に戻った。錬太郎も腰かけたベンチから立とうとした。


 その時だった。



 助さんが公園の池の向こうから手を振って、こつちに走って近づいてきた。




「錬太郎さん!話があるんですが。。。聞いてもらえますか?」




こんかな時に。


 あっ、タカちゃんのことかな?おいおい。。。ん?




「少しくらい時間ありますよね♪」




 と言われ




「ない!」




 と、笑いながらベンチに腰を降ろした。


 
 その時、目の前が霞む感じを覚えた。。。ふと、自分の左手を見るとぼんやり霞んでいるような・・・目が霞んでるのかと思い、もう一度見た。



 確かに左手の小指が霞んで消えかかっているように見える。


 錬太郎は左手をポケットにしまった。






「助さん、何だよ。。。話って?♪」




 と笑いながら助さんを見た。



 助さんは錬太郎の顔を見て






「あれっ?錬太郎さん。。。何だか顔色悪くないですか?ん?」



「何言ってんだよ♪いいから、何だよ。。。話は?」



「あっ、その。。。タカちゃんのことなんだけど。。。実は。。。俺。。。」






 言葉が止まり掛けた。





「好きなんだろう♪タカちゃんのこと!知っているよ。それで?」




「実は。。。その。。。プロポーズしたんです」



「やったな♪それで、いつ言ったんだ?」



「手術が終わって、錬太郎さんと分かれた後。だけど、タカちゃん。。。好きな人がいるって言うんですよ」



「お前さ。。。いくらなんでも手術の終わったばかりの日にプロポーズすることないだろう」



「だって、なかなかタカちゃんと二人でいる。。。こんなチャンスないと思ったから。。。いつも錬太郎さんの話を二人でしてて。。。タカちゃんなんか、いつも錬太郎さんのドジな話して笑ってるんだ。。。なんだか。。。錬太郎さんのこと好きみたいだし。。。俺じゃダメなのかな~っ思った。だけど。。。諦めたくないんです♪」





「そんなこと俺に相談すんなよ、バ~カ♪お前さ、人を好きになるのに他の人間と自分を比べるなよ!好きなのはお前だろう。。。もう少し自分を信じてさ~自信持てよ!好きなら抱きしめろよ!愛しいと思ったら守ってやれよ。どんな状況になっても支えてやれよ!たとえ世界中が彼女を一人ぼっちにしようとしても。。。助さん。。。お前が彼女を絶対に守ってやるくらいの気持ちがあれば。。。その恋。。。実るさ!しっかりしろよ!♪」





 錬太郎は自分に言い聞かせるかのように、語気を強めて話した。助さんは





「わかったよ。俺。。。守るよ!うん!錬太郎さん。。。サンキュウ!」





 ああゆうのって。。。いいよな。。。真っ直ぐでさあ。。。いい奴だよ!錬太郎は独り言のように助さんの背中を見送りながら言った。




 今の錬太郎も、自分が消えかかっていることに気付き始めているにも関わらず。。。不安よりも、心は静かに熱くなっていた。この物語の中で関わる人達。。。その全てを失わないために。



 帰り際、通路脇で裕子に呼び止められ。






「部長?お昼。。。麻里恵とベランチしてたでしょ!何か深刻そうな顔で話してたんですか?」





 と少し不機嫌な顔をして、錬太郎の顔を覗き込んだ。錬太郎は





「ゆうちゃんのこと!♪」



「もう。。。♪」




 と裕子は少し頬を膨らませながら





「明日♪宜しく願いします」



「うん。じゃ、明日♪」





 錬太郎はいつもより少し早く退社した。



 また、自販機の前に立っていた。そして、自販機に向かって







「いよいよだ。自販機伯爵!」



「おーい。。。いるのか?返事くらいしろよ!」



 少しして



「ん?錬太郎。。。少し顔色悪いんじゃないか?」





 と、自販機が言った。





「ハイハイ。。。アッ君♪そう言われたのは今日二度目だから」




「錬太郎。。。お前の左手。。。見せてみろよ。お前、自分の身体の様子が変な。。。感じてんだろう?」




「今更そんなことどうでもいいんだ。明日さえ上手くいけば。。。二人共。。。人間のままでいることができれば」








 錬太郎は自販機に背を向け寄り掛かりながら缶コーヒーを一口飲んだ。

 




「じゃ。。。俺を人間にしてくれたのは誰だよ。。。」







 錬太郎の言葉に。。。アッ君は暫く何も答えなかった。





 そして。。。







「ああ、言わなくてもわかるだろう。。。決まってるじゃないか。だから彼女にコインを入れてもらわなきゃならないし。。。瑠菜のことも知ってるんだよ」







 と自販機伯爵のアッ君が言った。






「それと、お前は人間になってるけど、お前が誰かを人間しようとする時の生死の保証はできないからな。もう既に左手が消えかかっているだろう。泉さんは、それを知っいてる。でも、言えないんだよ。。。。自分が言えばお前が消えること知っているから」





「おれもバカじゃない。。。でも、もういいんだ。。。こんなにみんなが幸せをくれてさ。。。嬉しかったよ。。。俺。。。人間になれるって。。。こんなにすばらしいことなんだって。。。生きているってこんなに素敵なことなんだって。。。今。。。思えたるから」










 錬太郎は星空を見上げた。すると自販機が




「錬太郎。。。お前。。。」




「じゃぁな!明日よろしく頼むよ♪誰一人不幸にさせないぞ!自販機!あっ。。。自動販売機伯爵様のアッ君♪」








 錬太郎は自宅へと向かった。

 

 玄関のドアを開けると、泉が出迎えてくれた。





「お帰りなさい♪今夜はご馳走よ♪早く早く♪。。。」





 少しはしゃぎながら明るく錬太郎を迎え、。。。左を握り居間へ促そうとした。。。



 その時、泉は腕を組み直し微笑ながら錬太郎を見つめていた。。。






 つづく