(まぁ、ひまちゃんの話は後にしよう。まずは手短に君の疑問に答えよう)
「なんだよ、さっきと話し方。。。少し違うぞ。いたずら好きのアッ君。なんだか真面目ぽいな!まず、君は何者で、いつどのようにして僕の頭の中に侵入したのか。そして。。。侵入した目的について答えてくれ」
(まあ、そうあせるなよ。。。ゆつくり。。。聞いてくれ。私は、ウィルスみたいなものさ。いたずら好きのアッ君と呼ばれているからには、相当ないたずら好きには違いない。虫観るチームのメンバーのような優等生じゃない。どちらかというとやっかい者さ)
「そうか。どうりでうるさいと思った。もしかすると今回のこの課題?俺に創れといった物語もアッ君が仕組んだのか?」
(おいおい、今回の課題は虫観るチームが考えたものだ。私とヒマちゃんは初めは関係無かった。虫観るチームのメンバーは直に人間の思考過程に触れるのは今回が初めてなんだ。彼らは錬太郎の思考の曖昧さに触れていくにつれ、人間に近い感情が芽生え始めていた。そこで、彼らは錬太郎自身が作り出す架空の物語の中に自分を置き換え、感情、つまり心という摩訶不思議な思考過程を体験することを考えついたって訳さ)
「へーっ。でも、君らの考えることは少しおかしくないかな」
(だから、それは虫観るチームのお堅いメンバーだからさ。ヒマちゃんと私の二人じゃない。私たちは正常さ。あれっ?変か?)
「それも。。。おかしい。仮にも君らは創造主の子孫だろう?同類だろう!」
(それが、少し違うんだ。私とヒマちやんは人間の中にもともと住んでいた。ん。。。そう。。。人間の思考から生まれたものさ。だから、実態は無い。最も人間しい”いたずら”と”あわてんぼう”という虫観るチームには無い要素、性質を持っているんだ。だから。。。ウイルスなんだ。最初にコップに入ったビール。。。錬太郎。。。一口飲んだろう!覚えてるか?)
「でも、なんでわざわざ君たちは俺にウイルスを飲ませたんだ?虫観るチームだけていいじゃないか?」
(だから、観察方法や考え方が偏ってしまうんだよ。確かに、彼らはそれぞれの分野で秀でたメンバーなことは確かだ。でも、優等生だけじゃ駄目なんだよ。創造主はそれを知っていた。だから、儀式と称してウイルスを必ず被験者に飲ませるのさ。この実験は過去の文明において何度も繰り返して来た。そして、必ず。。。いたずら好きの私。。。アッ君とあわてんぼうのヒマちゃんを仕込んできた。それで、偏った観察方法や思考分析を修正していたのさ。まぁ、それが目的というか役目なんだよ。名前は今風にしたがな♪ハハハ)
「そうか。まぁ、いいや。ようするに、人間の思考をバランスよく観察分析するために君ら二人が仕込まれたって訳か。で、俺が作り出す物語の中で、なぜ虫観るチームの声が聞こえなくなったんだ?」
(ん。。。それは後で話すことにするよ。。。錬太郎の思考如何に掛かっている話だ)
「それって。。。虫観るチームの運命を俺が背負っているて聞こえるけど?」
(そうとも言える)
「おーい!俺は単なる被験者だろう?なんて観察分析する彼らの運命を担うんだよ?まさか。。。アッ君。。。成り行きだからとか言うなよ!」
(そう。成り行きだ)
「えーっ!!!!!なんでだよ?何かいたずらしたんだな!そうだろう。。。アッ君?」
(へつへつへー。そう、興奮するな。落ち着けよ)
「俺は冷静だ!いいから、話せよ!アッ君!」
(ん。。。仕方ない。実は、錬太郎と彼ら虫観るチームがミィーティングをした夜、私たち二人はメンバーに提案したのさ。どうせなら彼の思考が創りだす物語の人間になった方がリアルかもしれないってね。好奇心旺盛な彼らは快諾したんだ。但し、この実験にはリスクが伴うということも話した)
「なんだよ、そのリスクって?」
(錬太郎が創りだす物語から抜け出せなくなる可能性が高いんだ。過去にも同じような実験をした際、もとの状態に戻れずそのまま死に至った者達がいたからな。しかも、チーム全員が、君の創りだす物語に参加していなければ観察と思考分析も成立しないという厳しい条件があるんだ)
「つまり。。。俺が逆に虫観るチームの個性を考えながら全員を一つの物語に参加させながら創るということ?そうなのか?」
(しかも、君の創りたす物語には必ずチームの誰か死を覚悟することになる。それを錬太郎がどう考え、君らしく物語を終えるか。生から死へと向かう過程に類似する)
「俺は、誰も死も物語に創り込まないからな!やだよ。。。そんなの」
(それが。。。無理なんだよ。君が好むと好まざるに関わらず死は入り込む。人間の摂理だ)
「そんな強引なことってあるかよ。待て、それをアッ君とヒマちゃんが。。。そうなのか?おい!」
(まぁ、そんなとこかな?ハハハ)
「笑いごとか?。。。まったく、ろくなことしないな!」
(まぁ、そう言うなよ♪私たち二人のウィルスの影響は。。。錬太郎。。。君。。。次第さ。DNAの解析が進むにつれ、人間の遺伝子の中には確実に破壊プログラムが組み込まれていることが解ってきているのは知っているよね。自然淘汰される中で、人間だけが自然の摂理に背き生をコントロールしようと科学が進歩しているようにも取れる。だが、そこに驕りがあると言われても仕方がないんだ)
(では、なぜ破壊される運命にあるものに対し、人類は生を伸ばし健康であろうとするのか。いつまでも健康でいきいき過ごせるようにしましょう。。。そのためには。。。こんなことをしましょう。。。とかさぁ。廉太郎もその中の一人じやないのか?)
(なぜ、科学が進歩している中で人は殺し合うんだ?生まれてくるもの、死に行くもの。万物の創生、今の世の中に限らずいつもキーワードは人間が生きる意味を問い続けている。これは、何世代もの人類が、何度も繰り返して来た問いなのさ)
「それは。。。俺も理解できる」
(ても、誰もその問いに答えたものはいないさ)
「ああ。確かに。これは、人間として普遍的な命題かもしれないよ。でも、生きることに意味など持たないって。。。言う人もいるぞ。何故、人は生にこだわるんだろう?死に行く運命にあるはずなのに。人は日々をより良く生活しようと必死に生きている。俺だってそうさ。。。まぁ、ほんの少しだけど」
(声が少し小さくなったぞ!廉太郎。。。)
「いいんだよ!。。。人は確かに誰とも関係しなまま生きてはいけないし、たった独りでは存在の証すら無い。なぜなんだ?アッ君!」
(自己の存在を意識するのは人間だけとも言われている。一人では意味を成さない存在なのさ。しかし、自分一人で生きていけないことを解っているはずなのに、周囲との関係をシャットアウトしているかのような事件が世間で増えているだろう。錬太郎も新聞でよく見るだろう。なぜだと思う?)
「ん。。。。。。。。。。。」
廉太郎は暫し考えた。。。
「生かされている自分に気付かないからじゃないのか?全て世の中や周囲の環境のせいにしていば自分は傷つかない。自分の権利は捨て、自分にない権利ばかり欲しがる。だから、そこにギャップが生まれ、そこを埋める手立てがないから、周囲をシャットアウトするか、突然周囲へ自我をまき散らす。。。」
(そうかもしれない。過去にもその考えと同じようなことを言った人間がいたが、物質文明では無かった。精神世界が中心の人類だったが、とても心豊かな思考だった。錬太郎はそれに近いかもしれないな)
「俺のポリシーは、時代遅れでも新しいと言われる人間でありたいのさ。アッ君♪」
なにやら二人の会話は哲学めいていたが、深夜の自販機の前でしゃがみながらポスターの男性と向き合って話し続ける姿は、酔っ払いの独り言にしか見えないだろう。。。
いたずら好きのアッ君と錬太郎の会話は続いた。。。
まだ、現実世界に残された人間との時空間の関係がアッ君から説明されていなかったが、錬太郎の頭の中では、ある程度予測はついているようだった。
つづく