71.「Do a trip」 | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。



 ネテルはどこにいるのだろう。錬太郎はバーボンを一口。今夜のオクラと豚足のビクルスも格別。ここに集う仲間は、それぞれの理由で心が熱くなり始めていた。

 するとタマさんが、つらつらと話し出した。

「人類はわずか数千年でなく、数百万年にわたって地球に住んでいたとも言われているのよ。今の人間はそれを否定しているけどね。一千万年も昔に生きていた動物の祖先とともに現在の人間と同じ骨格をしている人骨が古代の動物と同じ年代の地層から発見されても、同じ時代に人間が生きていたとは思わない。なぜ?人類は既に何度も絶滅と再生を繰り返しているかもしれないのに。自らの過ちで。なぜ過去から学ぼうとしないのかしらね」

 少し悲しそうな目をしていた。

「こんな話を聞いたことガあるわ。見える世界に言葉を持たぬ神々がいて、みえない記憶の世界に我々動物の神々が存在するって。なぜなら、人間がそれを望んだから。


はじめの時、動物と我々人間は共存していたらしいわ。でも、人間は自分たちが生きていくために自然や動物たちを殺めた。だから、動物の神はもう一つの世界に住むことにしたって」

「人間は過去から学ばない。記憶を現在から色付けし、祖先が確かな記憶として残したものを無視し、自分達に都合よく歴史を解釈しているみたいに思えるのはなぜ?人間って、同じ過ちを繰り返すことしかできないのかしら。自分達人間が万能の神でもあるかのように振舞い、世界を混沌とさせている。自らの文明を破壊しているようにも思えるわ」

「人類のはじめの時は、動物も人間も同じ話しをし、動物と人間は結婚もし、動物にも人間にもなれた。そんな平和にな暮らしをしていたかもしれないのにね」

 タマさんは太古の昔からでもタイムトラベルでもしてきたかのように、そして神の言葉を代弁でもしているかのように、憂いを込めて言葉を連ねた。

 初めてだった。こんなに真剣に何かを伝えようとしているタマさん。いつもは洒落でごまかしているのに。錬太郎もマスターも、タマさんの姿がとても神々しく見えた。

 段五郎は、タマさんの話より諒子の方ばかりを見て、口をポカーンと開けたまま。どうも、彼にはタマさんの言葉が響いていないようだった。それより世紀末の恋にのめり込んでいる?

 恭子は錬太郎の隣でタマさんの話を静に聞いていた。

 マスターが言った。

「一つ思ったんだけど。錬ちゃんかが消えて、また戻ってきたという事実はある。でも、あの絵の中に何故エジプトの神が現れたの?7つの神なんて、挙げたら切が無いし。旧約聖書、十戒、宗教改革だって、果ては占い、宇宙まで。日本にだって七福神、宮古島にも島を守る7つの神の話まで、他にも数限りなくあるよ。それに、トトの心の時とか7つの神の心を開放すると言っても、今の僕らの頭じゃ混乱するばかりだ」と。

 すると恭子が

「もしかすると、これって」

 恭子は、錬太郎を見た。と、次の瞬間

 フォリナーの扉が音もなく開き、麻布をまとい裸足の少年が立っていた。

 
「みんな旅をしているんだ」


 錬太郎は


「ネテル!」


 と言った。


 そして恭子は


「お兄ちゃん?」


 と呟いた。

 
つづく