52. 「A connection」 | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。



「この人は、僕が大学生の頃。。。哲学を教えてくれた講師の先生だよ。私の人生の師と言ってもいい人なんだ。よく先生の部屋に遊びにいって“南方熊楠”や“燕石”の話を聞かせてもらったよ。。。その人が何か?。。。」

 とマスターが二人に言った。

 タマさんはカウンターから出て恭子の隣に座った。 錬太郎は言葉を噛み締めるように。。。

「この人は。。。恭ちゃんのお父さんだよ。。。」

 マスターはゆっくりと恭子を見た。 手のひらに載せた写真を見つめる恭子が言った。。。

「私。。。父と会った。。。会ったの。。。今日。。。みんなと花火をしている時に。。。」

 マスターは

「えっ?誰と?。。。おとうさん?。。。だって。。。この人は既に亡くなっていて。。。」

 と少し驚いた様子だった。タマさんは静かに聞いていた。

「みんなどこかで繋がってる。。。?。。。って。。。こと?。。。すると。。。タマさん。。。タマさんはどうして俺に。。。さっき。。。俺が自分で決めたんだから仕方ない。。。なんて言ったの?タマさんは。。。みんなで花火をしてたときには眠ってたし。。。それに恭ちゃんのおとうさんの顔は知らないはずだよね。。。?」

 と錬太郎が言うと。。。

「私が。。。恭ちゃんのお父さんを知らないなんて。。。一度も言ってないわよ♪。。。言えなかったのよ。。。」

「愛した。。。ただ一人の男。。。なんてね。。。」

 とタマさんが。。。静かに口を開いた。

「。。。本当なの?それ。。。」

 と錬太郎。。。

「私が嘘を言ってどうなるの?。。。錬ちゃん?。。。それに恭ちゃんがお父さんと会っていた時。。。錬ちゃんが老紳士と別な世界に行っていたことも知ってるわ」

 とさらりと言った。。。マスターは何がどうなっているのか???。。。戸惑って聞いていた。

 いったい錬太郎は老紳士と。。。どんな時を過ごしていたのか。。。恭子が父と会えたことと。。。そして。。。その記憶を消さずに現実の世界に戻ってきた恭子。。。それと錬太郎が老紳士といた世界と何か関係があるのか?。。。

 そして。。。タマさんは。。。なぜ線香花火をしている時に二人がそれぞれ別な時を過ごしていたことを。。。知っているのか。。。?

  沈黙が続いた。。。マスターは曲を掛けた。。。時を穏やかに。。。空間をゆっくりと漂うように。。。メロディーが四人を包んでいた。。。

「人は。。。まったく関係ないと思える人と。。。とても近い関係にあると気付く日がくるの。。。それを特別な出会いとか。。。偶然だとか思ったり。。。神がかり的な印象付けをしたりするの。でも。。。それは違のよ。。。初めから。。。繋がっているの。。。ただ。。。見える世界に生きている私たちはね。。。でも。。。“見えない世界”なら。。。すべて繋がっていると思えるのよ。。」

 と タマさんが言うと。。。

「どうして。。。その世界をタマさんが知っているの?それは。。。私がお父さんから聞いた言葉。。。」

 と恭子が。。。

 すると。。。柱時計の長針と短針が重なり0時を刻んだ。。。

 そして。。。タマさんはグラスを空にし。。。

「私たちの記憶は。。この瞬間より少し前。。。そうね。。。5分前に作られたものかもしれないのよ。。。私たちの記憶が全て嘘である可能性も。。。否定できない。。。そんな曖昧な世界なの。。。見える世界でさえ。。。ね。。。」

 。。。と言った。。。

つづく