「あのね。。。インドネシア(ボソ族)の神話にこんなのがあるのよ。。。
“はじめ人間は、神が縄に結んで天空からつりおろしてくれるバナナの実を食べて、いつまでも命をつないでいたが、あるときバナナの代わりに石が降ってきたので、食うことのできない石などは用はないと、神に向かって怒った。すると神は石を引っ込めてまたバナナをおろしてやったが、そのあとで「石を受け取っておけば、人間の寿命は石のように硬く長く続くはずであったのに、これを斥けてバナナの実を望んだために、人の命は、今後バナナの実のように短く朽ち果てるぞ」と告げた。それ以来人間の寿命が短くなって、死が生ずるようになった。。。”てね♪」
「つまり硬いものは。。。永遠。。。腐らない。。。柔らかいものは。。。短く果かない。。。という捕らえ方をしていたみたいね。。。
「こんな神話って。。。とっても複雑な現実をシンプルに理解しようとしているのがわかるでしょ♪」
と。
すると。。。
「でも、それと俺が持ってる“燕草”と。。。どんな関係があるの?タマさん?」
と錬太郎が不思議そうに聞いた。すると「焦っちゃだめよ。。。錬ちゃん♪。。。コノハナサクヤヒメの日本の神話にも同じように硬い。。。と柔らかいがあるのよ。。。これらの神話にはすべて、人がなぜ不死を失うことになったのか語っているの。。。世界中に同じような神話がたくさんあるの。すごいことじゃない♪」
「人の死について。。。具体的にものを提示しながら。。。ちゃんとその訳を言ってるの。。。普通。。。今の私たちに説明しろと言われても。。。複雑すぎて大変だわぁ♪神話ってすばらしいのよ♪。。。でっ、その錬ちゃんが持ってるお守りだけどね。。。日本の神話にも同じようなものが出てきてたのよ!」
とタマさんが言いかけると。。。マスターが
「あぁぁ。。。タマさん。。。その神話の話から。。。かぐや姫のこと言いたいんだ。。。ずいぶん前置き長い。。。つまり錬太郎のお母さんが言ってたかぐや姫。。。“結婚したがらない娘”の話。九世紀に書かれた“竹取物語”のことだよ。。。その中にはじめて“燕石”の話が登場してくるんだよ。。。」
と嬉しそうに言った。タマさんは。。。
「さすがだね。。。マスターは“南方熊楠”のことは本当に良く知ってる。。。彼は。。。このことについて研究し本を残してるの♪」
「かぐや姫の女性の本質は“結婚しない女”或いは“結婚したがらない女”ということになるらしいよ。。。どんなに求婚者があらわれても、みんな袖にして結婚をいやがる娘。これと似たような話は他の国にもあるのよ。こんな娘にはタイプがあるみたいで、家に閉じこもっているケースが多いんだって」
「インディアンの世界にも似たような話があって、その娘も沢山の求婚者をすげなく拒絶して、そのあげく遠い遠い旅に出て族内結婚を拒否し、熊や狐。。。あるいはシャチと結婚したりするんですって。。。かぐや姫は帝との結婚すら斥けて。。。月にまで行ってしまうでしょう。。。月という極端に遠いところへね。。。インディアンの時は動物の世界へ行っちゃったり、月や太陽。。。星と結婚することもあるみたいなの。面白いでしょう♪」
とタマさん。。。
「私も動物かお月なら結婚できたかもね♪」
。。。ありえる。。。と錬太郎は思った。
さらにのりノリノリ。。。
恭子は目をキラキラさせて聞き入っていた。段五郎は?マークが瞳の中に見えるような顔で呆然と聞いていた。
「竹取物語の中の求婚者に。。。中納言石上麿足という人物がいるの。この人は実在しているみたいなの。で。。。かぐや姫が彼に“燕”の巣にある子安貝というものを取ってきてくれたら、結婚しましょう。。。って言ったのよ。すると燕を殺してみても子安貝なんか見つからなかった。。。言い伝えだと。。。燕が子供を産むときにどうした拍子か、その貝が出てくることがあるみたい。石上麿足は、自分で高いところに登って巣に手を入れて子安貝に間違いないと思った瞬間。。。はしごから落ちて下半身骨折。なかなか彼女。。。かぐや姫って残酷よね。この貝は安産の守り神として珍重されているのは知ってるでしょ。でも。。。ここで大切なことがあるのよ。。。」
「その子安貝は燕が海から運んできたっていうこと。それに、こうした巣の中にある石や貝を“燕石”って言うみたいなの。この石は雛の盲を治す力があるんですって。同じような話はヨーロッパにもあるのよ♪で。。。その燕石が手にはいらなと“燕草”。。。錬太郎のお母さんがお守りとしてくれた“草の王”と呼ばれるものを使ったようなの。だから。。。結構意味が深いのよ。。。その草♪」
とタマさんが言った。
「そして、南方熊楠について研究した本(注記:『森のバロック』)の中に“七つの要素”としてまとめているんだよ」
とマスターが言った。
「7つ?。。。え。。。」
また即座に錬太郎の脳が反応した。マジカルナンバー。。。。これは。。。
この二人の話は止まらなかった。恭子は“盲を治す”という言葉で何かを感じ、さらに意識を高ぶらせているように錬太郎には感じられた。
フォリナーの洒落気は。。。真実へ突き進むべく。。。時を止めつつあった。
つづく