なぜか昔懐かしい。。。どこかで会ったような。。。でも、すぐには思い出せない。。。錬太郎は彼の顔をとても懐かしいと感じていたが、なぜ。。。そう感じるのか分からないまま。。。
「錬太郎君。。。一度、君に会わなければならないと思っていた。顔をよく見せてくれるかね」
と彼が錬太郎の前に回り込み、じっと見つめた。
「ん。。。やはり。。。母さんそっくりだな」
と言い
「いや、すまん。懐かしくてな。」
。。。と。
錬太郎は彼が何を言っているのか理解できなかった。
「どなたです?何故私を知っているのですか?」
ともう一度聞きなおすと「私は恭子の父です。。。」
と。
「えっ。。。」
錬太郎は言葉に詰まった。確かに懐かしいと感じたのは。。。昔。。。恭子の家族の写真を一度見せてもらったことがあったからだろう。
家族三人で写っていた。恭子はいつも小さなポシェットに写真を入れ大切に持ち歩いていた。。。。恭子の母からは。。。昔、海で亡くなったということだけしか聞いていなかった。
錬太郎は。。。戸惑いながらも。。。
「なぜ、今。。。私に会うのですか?」
と。。。彼に聞いた。すると
「私は一度死んでるんだよ。。。ここでね。。。菊枝。。。恭子の母は知らない。。。」
と沖を見ながら言った。
「それはどういうことですか?。。。それに。。。どうして月光三銃士のことを知っているのですか?」
と錬太郎が聞いた。
「どこから話せばいいのか。。。」
暫く彼は言葉を閉じた。錬太郎は、まだ目の前にいる人物が恭子の父であることを納得した訳ではなかった。ただ、恭子の母の名前と自分の名前を知っていたこと、私が懐かしいと感じている。。。ただ、それだけに頼った判断でしかなかったからだ。
「あなたが本当に恭子の父親だと言うのなら、なぜ家族の前から消えたのですか?まだ、彼女は小さかった。。。父に会いたいと思っても。。。その術は無かった。。。あなたには答える義務があるはずだ!」
と、少し強い口調で錬太郎は彼に言った。
「君の言う通りだ。だが、それに答えることはできないんだ。」
。。。と彼が言うと
「じゃ、なぜ、今。。。恭ちゃんではなく。。。私に会う必要があるのですか?」
と錬太郎は更に語気を強めた。
「錬太郎君、君は旅にでるとき。。。ある目的地に向う。。。知らない道を進む。。。それを長い道のりに感じるだろう。。。だが帰り道はとても短く感じることはないかね。。。どうだろう?」
錬太郎は少し時を置いて
「それは。。。確かに感じます。。。でも、それが今の話と何か関係があるのですか?」
と言った。すると
「そう。。。焦らず聞いてくれたまえ。」
と宥めるように彼が言った。
「人は同じことを繰り返す日々を。。。長いと感じるかね?短いと感じるかね?」
と。。。さらに錬太郎に聞いた。
「どうでしょう。。。淡々と日々同じことを繰り返す。。。昨日と今日と明日がほぼ同じ日々であれば。。。自分にとっては長く感じるかもしれません。古い記憶の中に見る友人を思い出すときも。。。ただ、時として昨日のことのように感じることもあります。。。」
「時間を気にすると、時は長く感じ、何かに夢中になるとき時を忘れ。。。とても短く感じてしまう。。。人は時の中を彷徨っているようで。。。実は“時”とは自分の心が決めているんだよ。。。」
と。
「今、君の目の前にいる私の顔の皺や白髪を見て歳をとっていると感じるだろう。。。しかし、時はまったく経っていないとしたら。。。私の外見を全てそぎ落として私を見てくれたまえ。。。できるかね?」
。。。そう彼は言った。
「“時”とは。。。心が決めるものなのだよ。。。君の心がね。。。」
彼の言葉が潮風に。。。漂っていた。時を置き去りにしながら。。。
つづく