疾風のタマさんがフォリナーに参戦し、ポーク・チョップとバーボンの蒸気の香りが満ちる狭い店内は熱気が増していた。タマさんが言った。
「今の世の中って、同じでなくちゃいけないってところあると思わない?」
と言った。
「それはどういうことですか?」
と恭子が聞き返した。
「ん。。。都会に住んでいると何かみんな個性を主張しているようで同じに見えちゃうのよ。私なんかシルバーだから、10代から20代の若い頃を思うと何にも変わってないじゃないと思うのよ。」
とタマさんがタバコをくわえながら恭子を見て言った。
「それは服装とか?考え方とか?。。。ですか?」
と言うと
「そう。。。昔の征服とか思い出しすと種類が少ないし、みんな同じような服装だった。お国のすることに従ってさぁ。地域の風習、慣習に習って、同じように生活していたわぁ。。。でも、心の中まで同じじゃなかったような気がする。自由だったって言うか。。。エネルギッシュって言うか」
とタマさんが言うと
「心まで?今の社会って心まで同じってこと?自由じゃないの?」
と錬太郎が言った。
マスターは
「はは。。。なんとなく分かる~タマさんの言いたいこと。つまり、個性を尊重しているって言うわりに、みんなそれぞれ個性の似通った集団に入っている。そうしていないと不安なんだと思う。ここにいる人達は別だけど」
と言うと
「あら、それどういう意味♪」
とタマさん。マスターは笑いながら
「昔は田舎に住んでいれば入ってくる情報なんて限られてる、食のレシピも地域で決まってた。ビジュアルだって目に入ってくるものに鮮明なものなんかなかったし、僅かな情報や書籍を頼りに想像をめぐらし、むしろ個人個人の心は自由だった。。。創造、想像、そう。。。心の中で像を描き挙げる、ビジョンがあったよね。無いところから作り上げる楽しみがあった。。。今の世の中の方が窮屈なのかもしれませんね。そんな感じだと思うけど。。。違うかな。。。タマさん?」
とポーク・チョップを差し出した。
恭子が言った。
「確かに。。。欲しい物はカードやお金さえ払えば手に入る時代だし、テレビや携帯ではリアルな情報が知り放題。。。自分で情報を選択する余地がないほど頭に流れ込んでくる気がする」
と言うと
「そうだよね。。。ん。。。情報や物は沢山あるけどね。。。“君達は自由だ”と言われても進む道なんか限られてるような気がするし。。。子供や若者。。。ある意味昔と同じような制約を受けながら。。。社会という中で必死に生きている。特に競争社会の中でね」
と錬太郎は自分と重ねて背中を丸くしながら言った。
「だから。。夢を持って生きろと言われても。。。その限られた中でしか。。。しかも、不安だから何か自分と似通った集団の中にいないとさぁ。。。その中にいれば考えなくてよくなる。そう。。。その集団の流れに乗っていればいいだけだから」
するとマスターは
「昔は自分の世界は限られていたんじゃない。それが全てだった。そこで精一杯の幸せを願い慎ましく生きていた。。。そんな気がしますね。でも、今は。。。現実には叶わない世界を手に取るように知ることができる。だから、なぜ自分だけが。。。とか。。。自分もあんな世界で、あんな風に生活したいって思う。でも現実は。。。遠い。。。夢を見せて。。。夢を諦めろって言われているような社会かもしれませんね」
恭子は
「自分の夢まで、いつのまにか諦めさせられるの?それって悲しい。。。でも分る。私の母なんか、子供のために、子供のためにっていつも頑張ってるんだよって口癖のように言ってた。時々、それが重荷になったり、聞きたくなくなる時もあったの。でも、今子供が成長してくると、その台詞を自分が言ってるのに最近気付いたの。それがショックで。。。私の人生って。。。自由って。。。夢って。。。このまま終わっちゃうの?って。。。最近考えちゃう」
とポツリと言った。
「あら、恭子さんておっしゃいましたね。私なんか何回も人生終わってますのよ♪ホホホッ♪まだお若いから♪」
。。。タマさんらしい。
「恭ちゃん♪って呼ぶわね♪。。。私思うの。人間ってもともと死ななかったんじゃないかな~と。。。神様が“お前達人間に自由を与えるから、変わりに死を与えることにする”。。。なんい言ったんじゃないかと」
タマさんに神が降りてきたようである。
疾風のタマさん。。。大明神♪タマさんはここからが面白い。錬太郎はタマさんの神に纏わる話し。。。が大好きだった。哲学が潜んでいるようで、いつも萎えた心を救ってくれていた。
タマさんが言葉を続けた。。。フォリナーの真骨頂、異次元へと。。。いや。。。神の世界かな?
つづく