「仕事が決まりました。」
この言葉を、やっと言える日が来ました。
長かった就職活動。
応募しても返事が来なかったり、不採用が続いたりして、「もう仕事は見つからないのではないか」と不安になることも、一度や二度ではありませんでした。
そんな私が仕事を見つけた方法は、ハローワークでも、転職サイトでもありませんでした。
以前一緒に働いていた同僚が、私のことを気にかけて声をかけてくれたことが、きっかけでした。
「人とのご縁から仕事が生まれる」——言葉では知っていたけれど、それを自分のこととして実感したのは、今回が初めてだったかもしれません。今日はそのことを書いてみたいと思います。
一番近くにあったご縁に、気づいていませんでした
私は、毎日のように求人サイトを見たり、ハローワークへ通ったりしていました。
「いい求人はないかな」「私でも応募できる仕事はないかな」そんなことばかり考えていました。
失業給付が受給できるのが、8月いっぱいまでなので、「早く決めないと」と焦るあまりなのか、最近は体調を崩し、思うような就活もできていませんでした。
もちろん、サイトを見たり、ハローワークへ通ったり、それも大切なことです。
でも今振り返ると、大切なことをひとつ忘れていたような気がします。
それは、「周りの人に、仕事を探していることを伝える」ということです。
仕事は求人票だけではありません。
人とのご縁から生まれる仕事もある。頭ではわかっていたつもりでも、実際に自分がそれをやっていたかというと、そうではありませんでした。
画面の中の求人票とにらめっこしながら、一番大切な「人」の存在を、少し後回しにしていたのだと思います。
求人サイトを開いては閉じ、また開いては閉じ、同じ求人票を何度も見返す日々が続いていました。
「新着」のタブを何度更新しても、ピンとくる求人はなかなか出てこない。
ハローワークから帰る道で、「今日も空振りだったな」と思いながら歩いた日のことを、今でもよく覚えています。
そのころの私は、仕事を探すということが「画面と紙の中にある作業」になっていて、人の顔がすっかり頭から抜け落ちていました。
心に余裕がなくなると大切なものが見えなくなる
仕事が決まらない日が続くと、気持ちにも余裕がなくなっていきます。
「どうして決まらないんだろう」「やっぱり60代だからなのかな」——そんなことばかりが頭をぐるぐると回って、誰かに連絡を取る気力さえ失っていました。
そんなときに、元同僚がLINEを送ってくれました。
今思えば、私を励まそうとしてくれていたのだと思います。でも、そのころの私は少しイライラしていました。
「最近どう?元気にしてる?」という、彼女からのLINEが届いたのは、不採用通知が続いていた時期のことでした。
ありがたいはずの一言なのに、そのときのわたしは「元気なわけがない」と思いながら、「まあまあです」とそっけなく返してしまいました。
後から見返すと、自分でも驚くくらい短い返信でした。
彼女が「何かあった?」と気遣って送ってくれたメッセージにも、「大丈夫です」の一言だけ。今思えば、余裕がなかったからこそ、優しさを受け取れなかったのだと思います。
それでも彼女は引かずに、変わらず連絡をくれていました。
自分では普通に返したつもりでも、優しい返事ではありませんでした。
それでも彼女は気にすることなく、いえ、嫌な気持ちだったのかもしれないのに、私のことを心配し続けてくれたのです。
そして、ある日「こんな仕事があるよ」と声をかけてくれたのです。
人の優しさというのは、余裕がないときほど受け取りにくいものです。
でも、そんなときでも変わらずそばにいてくれる人の存在が、どれほど大切かということを、後になってしみじみと感じました。
これで二度目のお世話です
実は、彼女のおかげで仕事が決まるのは、今回が初めてではありません。
以前にも一度、仕事を紹介してもらったことがあります。今回で二度目です。
「人に恵まれる」という言葉がありますが、私はまさにその言葉どおりだと思いました。
同じ職場で働いた時間は、とっくに終わっています。でも、そのご縁は終わっていなかった。むしろ、時間をかけてゆっくりと深まっていたのかもしれません。
彼女と一緒に働いていたころのことを思い出します。
特別に仲が良かったわけではありませんでした。昼休みに一緒にお茶を飲んで、仕事の愚痴をこぼし合ったり、繁忙期に「もう少し頑張りましょう」と声をかけ合ったりする、そういう関係でした。
退職のときも、「またいつかどこかで」という、よくある別れ方をしました。
でも、それから何年も経った今も、彼女は私のことを気にかけてくれていたのです。改めて考えると、「職場の同僚」という関係を超えた、本当の縁があったのだと思います。
一緒に働いていた時間は数年ほどでしたが、その間に積み重ねてきた小さなやり取りや、支え合った記憶が、こうして形になって返ってきたのです。ご縁というのは、本当に不思議なものだとしみじみ感じました。
「迷惑をかけたくない」が、ご縁を遠ざけていた
私はこれまで、「迷惑をかけたくない」「自分で何とかしなければ」と思うことが多かったのです。
特に就職活動のような個人的なことは、誰かに頼るのが申し訳ない気がして、一人で抱え込みがちでした。
でも今回の出来事で、考え方が少し変わりました。
困ったときに周りの人に頼ることは、弱さではないのかもしれない、と。
「仕事を探している」と誰かに伝えることが、なぜか恥ずかしいような気がしていました。
「60代になって仕事が見つからない」と思われたくない、という意地もあったのかもしれません。
近所の顔見知りに会っても、「最近どうですか?」と聞かれると「ぼちぼちです」と答えるだけで、「実は仕事を探しているんです」とはなかなか言えなかったのです。
でも、その一言を言えなかった分だけ、ご縁のチャンスを自分で閉じていたのかもしれない——今ではそう思っています。
「仕事を探しています」という一言を伝えるだけで、ご縁がつながることがあります。
もちろん、誰にでも仕事を紹介してもらえるわけではありません。
でも、自分の近況を伝えておくことで、「そういえばあの会社で募集していたよ」「知り合いに聞いてみようか」と思い出してもらえることがあるかもしれません。
仕事探しは一人で頑張るものだと思っていたけれど、本当はそうではないのかもしれません。
・以前の職場の同僚や上司に、近況を伝えてみる
・友人や知人との会話の中で、「仕事を探している」と一言添えてみる
・SNSで近況を共有してみる(意外なところからご縁がつながることも)
・差し伸べてもらった手には、素直に「ありがとう」と伝える
「ありがとう」は何度伝えても足りません
仕事が決まって一番最初に思ったことは、「ありがとう」でした。
紹介してくれた彼女へ。
気にかけてくれたこと。
私のために動いてくれたこと。
そして、わたしのことを忘れずにいてくれたこと。
感謝の気持ちでいっぱいになりました。
採用の連絡をもらった日の夜、彼女にLINEを送りました。
「おかげさまで採用いただけました。本当にありがとうございます」と打ちながら、何度も文章を書き直しました。
どんな言葉を選んでも、気持ちの半分も伝えられないような気がして。
「ありがとう」という言葉が、こんなに軽く感じられたことはありませんでした。それほど、感謝の気持ちが大きかったのです。彼女からの返信は、「よかった!一緒に頑張ってきた仲間だから、うれしいよ」という短い言葉でした。
それを読んで、思わず泣いてしまいました。
以前、少し冷たい返事をしてしまったことも、申し訳なく思っています。
余裕のなかったあの頃の私に、それでも変わらず接してくれた彼女の優しさに、私は本当に救われました。
「人に恵まれている」とよく言いますが、それは偶然ではないのかもしれません。
元同僚が言うには、
「これまでの日々の中で、小さな誠実さを積み重ねてきたこと。
ひとつひとつの職場で、精いっぱい働いてきたこと。
それを私は見てきたからね。」
そういうことが、ご縁という形になって返ってくることがあるのかもしれません。
おわりに|仕事探しは「人とのつながり」も大切
60代になると、「もう新しい仕事は難しい」と感じることがあります。
私も何度もそう思いました。でも、仕事は求人票だけが出会いではありません。
これまで一緒に働いた人、友人、知人、家族——思いがけないところから、ご縁がつながることがあります。
だからもし今、仕事を探している方がいたら、お伝えしたいことがあります。
どうか、一人で抱え込まないでください。
「仕事を探しています」——その一言が、新しい道を開いてくれることがあります。
そして、周りの人が差し伸べてくれた手には、素直に「ありがとう」と伝えましょう。
その言葉が、次のご縁を育ててくれるからです。
人生は、人とのご縁でできている。
そのご縁を大切にできる人でありたいと、
心から思っています。
私は新しい職場で、紹介してくれた彼女への感謝を忘れず、一日一日を大切に働いていきたいと思っています。
そしていつか、誰かが困っているときに、今度はわたしが手を差し伸べられる人間でいたいと思います。
そんなふうに、ご縁がつながり、また広がっていくことが、人生の豊かさなのかもしれないと、今回の経験を通して改めて感じています。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
