○年末恒例「ハタハタ」事について | 「 晴 釣 雨 讀 」

「 晴 釣 雨 讀 」

晴れた日は大いに釣りを樂しみ…
 雨の日は靜かに讀書や道具の手入れに耽る…
   無理をせず、焦らず、穏やかな心で渓魚との駆け引きを満喫する…

 …ある方から頂いた言葉です

  渓流ルアー釣りや関連することに触れていきたいと思います

 今年の冬は、全国的に初雪が遅れて、12月に入っても暖かい日が続いておりましたが、秋田県では、12/8(土)より本格的な降雪となり、秋田市内では一晩で積雪が10㎝に達しました。

 

 冬に天候が荒れてきますと、秋田県民として気になるのが秋田県の県魚「ハタハタ」の水揚げです。

 普段は深海に居るハタハタが、12月上旬の産卵期の荒天時に沿岸へ上がってくるのですが、このときのハタハタの漁を「季節ハタハタ漁」と言います。

 このハタハタについて、我が家の毎年の恒例行事として、12月に入って荒天の頃合いに、家族で男鹿へハタハタを買いに行き、関東に住む叔父へ届けております。

 その目的で、大雪だった12/8(土)の翌日の12/9(日)に、家族で男鹿方面へ向かいました。

 

 男鹿市へ向かう途中の、秋田市郊外の風景です。

 先週まで全く積雪が無く、たった一晩で御覧のとおりの雪景色となりました。

 

 男鹿市船川に着き、海岸沿いの漁港から海を望みました。

 風は弱く、雲間から陽が射しておりました。

 

 前日の悪天候を期待に変えて、向かったのは男鹿市船川字海岸通りの「男鹿海鮮市場」です。

 しかし、人影が見えず・・・

 

 お店に入り、お店の方へ状況を伺うと「網を入れたが掛かっておらず、獲れたのもみんな小さく、量もこれしか揚がらなかった。さすがに今回は期待していたが、まだ、寄ってこないみたいで、本来なら今時期だど、もう遅いくらいなんだが・・・」と、オス・メス共に一箱もありませんでした。

 小さくて僅かな数ですが、魚体が黒々と日本刀の様に輝いており、既に数日前から秋田市内のスーパーに出回っているものを見かけておりましたが、明らかに鮮度が違います。

 叔父に送ることが叶わなかったのですが、今年の初物として、家で食べる分だけを購入しました。

 

 ちなみに、同日に近くのスーパーで売られていたハタハタです。

 この魚は"足が速く"、挙がって2日も経つと、エラ・背びれ・腹に赤みが目立ち、目が濁ってきます。

 

 量も少なく、写真を撮る間もなく下処理を済ませてしまいましたが、色艶の違いが、上の写真と比べることで、お判り頂けるものと存じます。

 

 こうして12/9(日)に、少し遅めのハタハタの初物を、家族で美味しく頂きました。

 しかし、小さいためにガスコンロの中で、身が崩れてしまいました。

 

 ハタハタは、大きさよりも鮮度が第一であり、焼きたての皮の香ばしさと瑞々しい白身がたまりません。

 あっという間に食べ終わり、もう少し数も欲しいところです。

 この日の新聞に、象潟や八森で季節ハタハタが大量との報道もあり、期待しつつで来週も、また男鹿へ行くことになりました。

 

 3日後の12/12(水)に、パートナーズの忠さん(佐藤 忠雄さん)から新鮮なハタハタを頂きました。

 「今年からハタハタ釣りに初挑戦しており、昨日は7㎏の釣果で、その釣り場の竿頭だった」とのことで、有り難くも我が家へ、その釣果を届けてもらったのでした。

 この時点で秋田市内のスーパーでは、メス3㎏で7,500円とかで売られており、今年のハタハタは過去最高クラスの高値です。

 ブリコ(卵のことでメスの意味)の数も多く、新鮮ですので艶が違います。

 

 忠さんのおかげで、今年初めて、新鮮な味の良いハタハタを、数を気にせずに頂くことができました。

 

 秋田県民なら誰もが知っている、焼いたハタハタの食べ方です。

 頭側から出ている背骨を左手で掴み、右手の箸先で尻尾の付け根に当てて、背骨と尻尾を切り離し

箸先を背びれと腹に当てて体を挟むことを何度か繰り返すことで背骨と身を離し、最後に左手で掴んでいた背骨を抜く。

 こうして、ハタハタが丸かじりできる状態になります。

 新鮮ではないハタハタですと、背骨と身の離れが悪くなり、また、ブリコなり白子なりの味が落ちます。

 

 "いや~、美味かった"

 

 12/8(土)からの積雪は、気温の高さと雨により、12/11(火)には全て無くなりました。

 しかし、13(木)の夜から14(金)の未明に掛けて、濡雪による積雪が、先週同様の11㎝に達しました。

 12/15(土)、この写真は秋田市郊外の道路状況ですが、濡雪が樹々に着氷したまま氷点下の気温が続いたため、秋田県内はどこを見渡しても、きれいな冬景色となっております。

 

 男鹿市船川の、先週と同じ漁港に着きました。

 先週とは違って、雪の上に足跡が沢山見られたので、ハタハタ漁の活況が期待できました。

 

 先週と同じく「男鹿海鮮市場」へ着くと、先週とは違って、車や人で賑わっておりました。

 

 お店の方に状況を伺うと「今日は大きいものはメスのみで、オスは皆小さい」とのことでした。

 3㎏1,200円がオスばかりで、確かに小さく、メスが1箱3~4㎏で8,900円ということで、私が知る限りの過去最高値です。

 私の目安が1箱メス3,000円のオス1,000円くらいでして、漁獲制限の厳しさもあって、今年のハタハタは"高級魚"となりました。

 

 遠目に黒光りしておるのが判るかと存じますが、大きさも状態も十分の見事なハタハタです。

 それでも一箱8,900円となると・・・、高くて手が出ません。

 

 叔父から「ブリコ(メス)は要らん。大きめの白子(オス)だけでよい。」と言われておるのですが、状況が毎年異なる季節ハタハタ漁につき、これまでを振り返りますと、その意向に添えないことが多く、漁場の近くへ来て直に鮮度を見極めることを最低限の配慮として参りました。

 今回も仕方なく、バケツ一杯の小さめのオスに、見事なメスを数尾足して発送しました。

 

 この帰りに、またもや忠さんからハタハタを頂きました。

 今回の釣果は13㎏と大漁だったとのことで、鮮度の良さが色艶に表れております。

 

 "ブリコがこんなに・・・、贅沢です・・・"

 

 お腹いっぱい、最高のハタハタを美味しく頂くことができました。

 忠さんのおかげです。

 家族一同、感謝申し上げます。

 ありがとうございました。

 

 母が昭和30年前半の子供の頃の話として、「近くの魚屋さんが、木箱に満杯にしたハタハタを沢山積んだトラックで集落へ売りに来て、一箱100円しないくらいで10箱とかの量で一度に買っていた。買った日は、寒いとか眠いとか汚いとかの勝手を言う余裕も無く、家族総出で深夜まで掛かって捌いてしまい、翌朝からはそれが無くなるまで、延々と焼き魚、しょっつるが続き、時間が経つにつれて慣れ寿司や焼き魚も漬けたハタハタとなり、"毎日ハダハダ"の状況が続く。誰もがそれしかないのが判っているから"嫌だ"という者もなく、やはり美味いので、楽しく食べていた」と聞いております。

 

 冬はハタハタに育てられたと言えそうな環境ですが、こうした話を踏まえますと、東京に移ってから半世紀以上となる叔父へ、秋田に住まう親戚の義務として、送り届けない訳にはいきません。

 ハタハタは東京でも店頭に並ぶことがあるそうですが、"状態の良いものに当たることは稀で、いつ揚がったのか判らないものばかり"と嘆いておりました。

 

 他方で、私の知人で今の仙北市出身の方で、母と同年代なのですが、「毎年12月になれば、秋田から貨物列車(汽車)で大量のハタハタが駅まで届き、どの家も箱単位で大量に買って食べていた。」と伺っております。

 

 昔と今では流通経路が変わっても、沿岸と内陸を問わず、秋田県民はこうして昔からハタハタに慣れ親しんできました。

 今では漁獲量が減ってしまい、もはや高級魚となってしまったハタハタですが、漁業者・学者・行政が協力して、全面禁漁も含めた資源保護活動により、年々一定の漁獲高を得られております。

 年配の方のみならず、その子や孫の世代にも、ハタハタは大昔から続く、この時期に欠かせない秋田の美味しい食文化として、これからも延々と受け継がれていくものと存じます。

 

 そして、忠さんのところで記したとおり、季節ハタハタの最盛期を迎えたことにより、県内各地でハタハタ釣りも活況の様です。

 忠さんが今年からハタハタ釣りを始められたのも、私が在籍する『山女魚乃忠学校』の忠学生で、数年前からハタハタ釣りをされていた方からの影響と伺っておるのですが、極寒の悪天候の中での釣りということで、何となく雄物如月櫻の頃を思い出しております。

 場所取りも難儀で陽も短く、常に海からの強風に晒され、ヘッドランプやライフジャケット等の装着など、ストレスの多い釣りかと存じます。

 ハタハタ釣りをされる方に於かれましては、事故や怪我無く、風邪など引かれぬように、釣行の無事を祈っております。

 

 以上です。