やっぱり…サトルが紗英狙いな訳ないか。

サトルとは中学の時からの付き合いだから、好みぐらい、なんとなく分かる。


「はぁ??!小川の友達もチャラ男だろ!?
そんな2人と紗英を行かせるか―!!」

隣でメグが勢りたっている。


まぁ。小川の友達といえば、そんな奴らだったはず。

でも………

「今回はどういう狙いで?」

アタシは蔑むような笑みで言った。



紗英は軽い男に好かれる要素は少ないと思うし、接点もない。


だとすれば、遊びや賭けの可能性が高い。

そんな奴らに紗英を渡したくない。



「狙い?言うなら……先ずは"友達"になる為かな。」

サトルもサトルで負けないような笑みで返してくる。


コイツは表面上の付き合いが上手い奴だから、本心が分かりにくい。



「友達はアタシ等で充分だ!!」

またメグが反論しているが、それだと紗英が"淋しい子"になってしまいそうだ。


ま。軽い男と関わらさせたくないのは、アタシも同じだけど。




チラリと紗英を見ると窓の外をボンヤリ眺めていた。

口がモゴモゴ動いているから、何か飴でも食べているんだろう。


ホントに危機感が無いって言うか……ここまで生きてこれただけ凄いと思う。




サトルもアタシの視線の先の紗英を見た。


サトルと目が合いお互い苦笑いを浮かべた。



張本人がこれじゃあ気が抜けてしまう。




「沼津さん。今回は諦める。けど、仲良くなってきたら遊ぼうね。」

サトルは、付け加えるように「みんなで」と言うと、紗英は

「うん。メグミとマイも。」と笑顔で答えた。


一応、二人きりにはならないようには考えてるようだ。



アタシも紗英が了解する以上、何も言えないし、メグは紗英から貰った飴を嬉しそうに舐めている。



「はい。2人共、話が終わったんなら、飴どうぞ。美味しいよ。」

アタシ達の手にはミルク味の飴が乗せられた。



紗英は、やっぱり天然で、事が分かってるのかなぁ。と思いつつ、気持ちが和んでしまう。


前に居るサトルの顔も自然と笑顔になっている。


紗英がここまで生きてこれたのは、"これ"かもしれない。




「ありがと。じゃあ、またね。」

サトルはそう言うと自分のクラスに戻って行った。



そういえば、サトルが言ってた

友達って誰なんだろう?
「サト~、沼津さんに何の用?
……てか、今日は帰り遊べるのぉ?」

猫なで声で話しかけてくる女子に、

「や。今日は男友達と帰るから、また今度ね。」

と表面上の笑顔で答える。



俺の名前は、小川 智。


今、G組の前に立っていて1人の女の子を呼んできて貰ってるところ。


で、その間、俺を誘ってる女に断りを入れてる…。

てか俺、お前の事知らないんだけど…誰なの?



「何だ。男友達ね。なら良いや。
沼津さんと帰ると思ったぁ。」

マジ有り得ないし。とケタケタ笑う女。


(お前の方が有り得ねぇよ。
彼女面か??!そうなのか??
俺、名前も知らないのに??!)

と突っ込みを入れたい気持ちを抑えつつ、


「…他の女の子と帰るわけないだろ?」

そう、ニッコリと笑顔を向けながら言うと、案の定その子は顔を真っ赤に染めた。


(チョロいもんだ。
これで来週の暇つぶし相手は決まりか。)


「サト…。」
と、その子が呟いている時


「小川君、どうしたの?」

と言いながら、沼津さんがやって来た。


俺に絡んでいた女は、あからさまに嫌な顔をしていたが気づいていないようだ。


何で呼ばれたか分からない。といった顔で俺を見ている。


普通、俺に呼ばれたら、女の場合顔を赤らめて"自惚れ"しながら来る。

俺に好意を持たれてるかも。て。

が、沼津さんは俺の行為に"自惚れ"していないようだ。


ここまでしているのに、微塵もそれを見せないなんて、余程の演技派か天然なんだろう……



どちらかというと後ろから来ている2人の女子の方が"勘違い"していそうだ。

俺が絡みに来てるのかも…。て。



「小川!!あんた、紗英に何の用!??」

近寄って来た女子……西野の彼女が焦ったように言った。




うん。"勘違い"してる。

俺が愛想笑いを浮かべていると、

「メグ。叫ぶな!」

ともう1人の女子が制し、俺を睨みつけながら、


「サトル。変に紗英に絡まないでくれる?」

と静かに言った。


どうやら沼津さんは友人関係に恵まれているらしい。


「え?別に絡んでないよ。
ただのデートの誘い。」

俺がニッコリとそう言うと、女子…真衣の顔は険しくなった。

隣に居る山本は、「ね、紗英。狼だったでしょ、こいつ。」と言っている。



「サトル。アンタに女は腐る程居るでしょ。」

相変わらずな憎まれ口に俺はため息をついた。



真衣の言うとおり、俺に新しい女は必要ない。
が、諦めるわけにはいかない。


「2人で行くんじゃない、俺の友達も一緒だから。」




俺の為じゃなく…
すると、

「あんたら、そこら辺のカップルよりもお似合いじゃない?
ダメだよ~。そっち方面に行ったら。」

と横から綺麗系な女子が口を挟んだ。


彼女は、飯島 真衣(イイジマ マイ)。
2人のクラスメートであり、友達。


「それに、メグ!!アンタには彼氏がいるでしょ。
西野君は、どうしたの!!」

そう言いながら、真衣は2人の絡めていた指を剥がした。


慧は「えー。それとこれとは別でしょ。」と言いながら抗議をしていた。が、

「あ。そうだ、紗英。
さっき話してた男子だれ?」

と真衣は聞く耳をもたない。



「("そっち方面"って何だろ??
でも真衣のことだから、答えてくれないだろうな。
ん??さっきの男子て廊下であった…)あれはね…「え。紗英!!それってさっき話してた人!??同じ学校だったの!??」…他の…」

紗英が話し始めると、さっきまで1人、抗議をしていた慧が勢い良く飛び付いた。



「ちょ、メグ。アンタは黙って。
…紗英。あれって、G組の「小川 智(オガワ サトル)」でしょ?
知り合いだったの?」

慧を停止ながら聞く真衣に、

「そう。小川君。」
紗英が頷く。と同時に、


「え。ダメだよ、紗英!!
"小川"て言えば"女好き"で有名なんだよ!!?
いや―!!アタシの紗英がー」

慧が頭を抱えて叫びだした。



「(や。慧のモノになった覚えないんだけど…ま、いっか。)小川君がね『今、気になってる人居る?』て聞いてきたの。
なんかB組限定で「恋愛事情」を調査してるらしくて……」


「「(そんな話聞いたこと無いから―!!"B組限定"とかおかしいだろ!)」」

慧と真衣が心の中ですかさず突っ込むが、紗英は言葉を続ける。


「だから、質問に答えていっただけなんだけど………あれ?2人共、何でそんな呆れ顔?」



「メグ。天然もここまでくると、人生危ういよ。」

「だよね。だから、今までも紗英の事はアタシが守ってきたのに―!!」

「よりによって、"小川"に好かれるとは…」

「」

ブツブツと密会をする2人だったが、グルリと紗英の方を向くと、

「「"小川"は絶対にダメ!!!」」

と声を揃えた。


「紗英はよく分かってないだろうけど、それはリサーチなんだからね。」

「男は狼。小川は狼。
赤頭巾は紗英。わかった?」

「メグ。それ何の話?」

「え?"赤頭巾ちゃん"に決まってるじゃん。」

「そんな事わかってる!
アンタ、今話してる内容忘れてるでしょ!!?」

2人漫才を始めてしまった慧と真衣を前に

今日も漫才の特訓かぁ。うん、息ぴったり。と、紗英は思った。


クククッ。と笑う紗英に気付いた真衣は

「アンタ分かってる?
変なのに目付けられたんだよ。」

と半ば呆れ気味に言う。が、


「え。小川君て怖い人なの!?
私、目付けられたの?」

紗英の顔が青くなるのを見て、また溜め息をつく横で、

「紗英が目を付けられたの?!
誰に??」

と慧がワタワタし始める。



「(このバカが…でもそれにツルんでるアタシも"バカ"か…)アタシが言ってるのは、その"目を付けられる"じゃなくてね…」

真衣が話ている途中、
「紗英ちゃん、小川君が呼んでる。」と声がかかった。


「うん、わかった。ありがと。
じゃ、ちょっと行ってくるね。」

紗英がさっきの話などなかったように行く姿を見て、


「「ちょ!!紗英待ったー!!」」

と2人の呼び止めが入った。




ちゃんと話聞いてた!??