松平信綱(のぶつな)は3代将軍・徳川家光に仕え、非常に切れ者だったことから、官職名「伊豆守(いずのかみ)」にかけて「知恵伊豆(=知恵出づ)」と称されていました。
1638年には島原の乱を平定し、その功績により川越藩藩主を拝命。
川越城の整備を行い、玉川上水や野火止用水の開削により川越藩を大いに発展させました。
写真は川越まつり会館にあった信綱の山車の写真。
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江戸幕府が開府し江戸の人口が増えるにつれて、水不足が顕著になってきました。
それを解消するため、羽村~四谷に引かれた人工の上水路が全長43kmの玉川上水です。
この工事の総奉行が松平信綱であり、信綱は玉川上水の途中から自領内に続く全長24kmの用水路も開削。
これが野火止用水ですが、水質悪化により戦後に流水停止、暗渠化されていました。
しかし歴史的に貴重な野火止用水をよみがえらせようという機運が高まり、1984年、清流復活事業によって野火止用水には再び水流が復活しました。
JR新座駅から南に歩くとすぐ用水路が見えてきます。
正確には分からないけど、駅周辺の用水路はそれっぽく作られた観光用の野火止用水みたいです。
しかし、ある地点から観光用の用水路は、本当の野火止用水へと変わります。
右手は住宅街ですが、左手は自然いっぱいの野火止用水を見ながらさらに歩きます。
松平家の菩提寺・平林寺が見えてきました。
平林寺は紅葉の名所にもなっているので、この時期はたくさんの観光客でにぎわいます。
平林寺は1357年、現在のさいたま市岩槻区にて創建された臨済宗の寺院です。
松平家の菩提寺にもなっており、1663年、信綱の遺志をうけて野火止に移転。
境内は総門、山門、仏殿、中門、本堂が一直線に並ぶ禅宗様式になっており、総門から紅葉と組み合わせて撮影すると素敵な写真が撮れます。
築350年の山門。
戴渓堂(たいけいどう)は日本に書法や篆刻を伝えた中国の独立性易(どくりゅうしょうえき)禅師を祀っています。
来日した際には信綱に招かれて平林寺も訪問したそうです。
紅葉の見ごろなので撮影目的の参拝者もたくさんいました。
僕は歴史の専門家なので映えは狙ってませんです、はい
紅葉は見頃を過ぎている感じで、実際に目で見るとくすんだ感じもありました。
でも写真で見ると十分綺麗だったのでよかった(映え狙ってるやんけ)。
平林寺は広大な境内林を有しており、武蔵野の面影を残すこの境内林は国の天然記念物にも指定されています(雑木林としては唯一)。
境内林には散策路が設けられているので歩いてみましょう。
信綱が島原の乱を平定したことから、境内には島原の乱の供養塔が建立されています。
この供養塔、右の看板では「この戦いによって亡くなった人たちの霊をなぐさめるため(略)建立」と書いてありますが、平林寺のHPでは「幕府側の犠牲者を弔う供養塔」と書いてあります。
一見一緒のような内容だけど、実は全然違う。
前者ならば幕府側と一揆側の全死者を弔っているように受け取れるけど、後者は幕府側のみに限定している(おそらく後者が本来の内容)。
なんというか…坊さんなら死人に対して平等に弔ってやれよと思うんだけど、多分時代的な背景や政治的な思惑もあって幕府側に限定しちゃったんだろうな。
ちなみに島原の乱の直接的な原因は島原藩藩主・松倉勝家の暴政が原因。
その証拠に松倉勝家は戦後に責任を問われて斬首されています(武士として死ねる切腹ではありません、斬首)。
信綱に仕え、玉川上水や野火止用水の開削で活躍した安松金右衛門(やすまつきんえもん)のお墓。
信綱のお墓。
信綱のお墓は門に屋根がついていて見えにくいので横から撮影しました。
左が信綱のお墓で、右が奥さんのお墓です。
信綱のお墓周辺は松平家の墓所群が広がっています。
これだけ広大な昔の墓所群は他で見たことがないです。
墓所群を過ぎてさらに散策します。
野火止という地名の由来になった野火止塚。
古墳っぽい形ですが、見張り台だったようです。
奥に行くと紅葉の樹木も減ってきました。
境内と境内林をのんびりと散策して1時間くらいかかりました。
境内の撮影だけで終わる人も多いみたいで、林の方は人も少なくて静かに散策できました。
寺を出て、道路の向かいにある睡足軒(すいそくけん)へ。
睡足軒は「電力王」「電力の鬼」と呼ばれた実業家・松永安左ヱ門が別邸として移築した飛騨地方の古民家です。
松永安左ヱ門の菩提寺も平林寺であり、お墓も墓所内にありました。
こちらは新座市の管理になっており、中にはちょっとした古民家がありました(内部は外からのみ見学可)。
今年は紅葉見物に行っておらず時期も過ぎた感があったので期待せずに行ってみましたが、普通に綺麗な紅葉が楽しめました。
歴史もたくさん学べてよかったです
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稲城長沼駅前のスコープドッグ(いつもの)。