Pokemon QuestⅠ:エピローグ 天の架橋 | えのこ夢

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絵も描いてた。ゲームばっかりやってるしゅふ。

Pokemon QuestⅠ:夢の中の魔道士~The beautiful World~


すっかり夜が明けた森の中を、フーディンは単身、歩いていた。昨日の雨の残りが木の葉から落ち、


ポタリという音を立てる以外は、殆ど何の音もしない、静かな朝。全ての仕事を終え、


帰路に着く農夫のように、魔道士の足取りは軽やかだった。


彼の歩く道の両端の並木は、やがてその列を終えようとしていた。森の出口に近いのだ。


と、そのとき彼の背後から鳥の羽音が聞こえた。フーディンは立ち止まると、


振り返りもせず、その者が誰かを当てた。


「ヤミカラスだな」


その通りだった。ヤミカラスは魔道士の目の前に降り立つと、嘴を開いてこう言った。


「どうして、名前で呼んでくれないんでござんすか、ンゲ様」


少し怒ったような彼のその台詞に、魔道士は思わず笑みを浮かべ、口を開いた。


「いや、呼ぶとも。“コガラシ”よ」


そして杖を持たない左手をヤミカラスのとさかへと置き、ゆっくり撫でたのだった。


ヤミカラス、いや、コガラシにはそれが、まるで父親に撫でられるような気分であった。


「それにしてもコガラシ、どうしてここへ来たのだ。折角出来たおヌシの友を、置き去りにして」


ンゲの言葉に視線も逸らさず、コガラシは答える。


「別れは、ちゃんと言ってから来たんでござんす」


ポタリ。木の葉の雨粒が音を立てる。パールのようなその美しい粒は、


地面に落ちるとスッと吸い込まれ、消えていった。


コガラシは続ける。


「・・・まだ、いなくならないでくれたんでござんすね、この森の中から」


「・・・いなくなるつもりだったのだが、のう」


と、ンゲは笑って言う。


そして再び歩き出すンゲに、コガラシは後ろから付いていった。歩きながら、ンゲはこう言った。


「おヌシにはお節介をかけすぎた・・・だから、おヌシがこれからまたひとりで生きていくのなら、


一刻も早くワシはおヌシの前から姿を消さねばならなかった」


雨で濡れた森を乾かすような優しい風が、森の中を抜けてゆく。木々は何だか笑っているように、


サワサワと木の葉を揺らす。


「・・・しかし、もしおヌシがワシを追いかけてくるなら、それもまた良しと思ったのだ・・・どうしてかの。


ワシがおヌシのことを好きになったから、とでも言うのかの」


そう言うと、魔道士は照れくさそうに笑うのだった。好き、という気持ちは、


コガラシに理解できるようなものではなかった。しかし、何となくだがわかるような気がしたのは、


彼もまた、魔道士のことが好きになりはじめていたからかもしれない。


そして魔道士は立ち止まると、振り返ってこう言った。


「ワシと一緒に行くか、コガラシよ」


その一言が嬉しくて、嬉しくて、コガラシは何も言うことができなかった。


彼らは今、森の終わりの崖の先に立っていた。かつてコガラシが夢の中で見た映像と似ているが、


今その先に広がっているのは、虚無の世界ではなかった。眼下に広がるは、緑一色の森とは違い、


赤や青や黄色と、色とりどりに並ぶ建物だ。


「コガラシ、あれが“街”というものだよ」


それを指差し、ンゲは言った。


また、遠く離れた土地は、高くこんもりと盛り上がっている。


あれはなんでござんすか?今度は自分から訊ねるコガラシに、ンゲは再び答える。


「“山”だよ」


そして、こう続ける。


「世界に存在する一つ一つのものには、ちゃんと名前というものが付いている。あれは雲、あれは太陽、


とな。それらの名を覚えることで、ワシらはだんだんとこの世界を知り、広くしていくのだよ」


コガラシはまた、空にかかる巨大な架橋を見た。まるで天に続いているようなその橋は、


街の建物のように、色とりどりに輝いて見えた。


世界はなんて美しいんだろう。コガラシの心は、今喜びで満ち溢れていくようだった。


けれど、自分の人生は、たった今始まったばかりなのだ。


これから、もっと美しいものを知ることができるかもしれない。逆に、恐ろしく醜いものも知るかもしれない。


どちらにしても、彼には今、それらを受け入れる覚悟があった。なぜなら彼は、ひとりぼっちではなかったから。


今、彼の隣に立つ魔道士は、空の巨大な架橋を指差し、言った。


「あれが、“虹”というものだよ」


それは、これから旅立っていこうとするコガラシを祝福するかのように、美しく輝き続けていた。



えのこ夢-last



「Pokemon QuestⅠ:夢の中の魔道士~The beautiful World~」 END


目次 第十三話>>



あとがき

こんにちは。「ポケモンの小説を書くブログ。」管理人のB@Lでございます。


ようやく連載小説の一作目が書き終わり、更に加筆・訂正も終わったところで、このあとがきを書くにいたっております・・・いやはや、大変な労力ですな;完璧主義も大概にせい、と言いたいトコロでありますが・・・。


さて、ヤミカラスが主人公というカタチで書かせていただいた今回の作品ですが、実は最初、魔道士フーディンが主人公の予定でした。彼がヤミカラスと共に旅をしていく合間の話に、彼とヤミカラスの出会いの物語をちょこっと挿入する予定で、その話はただ、森で死に掛けていたヤミカラスを魔道士フーディンが助け、仲間にする、という非常に短いものでした。しかし・・・書いていく中で、物語がどんどん膨らんでいってしまったんですね;それでどうせなら、一つの作品として仕上げようという思いに至りました。


書き始めの頃、ギャグも全く無いシリアスな展開に、読んでくれたある友人は「勝負に出たねー」なんて言ってくれたんですが、正直、本人はそんな気持ち更々ありませんでした。単に書きたいものを書いた結果が、こうだったと。


確かに、自分では昔から小説色々書いてはいましたが、このブログとしては、今回の作品が初めてのもの。それでいきなりシリアスなもん出して読者がつくかなー?という不安もありましたが、ここはやはり、素直に書くしかないなーという思いが勝りました。


素直な気持ち・・・そうですね、これを書く当初、作者は精神的に大分病んでいました。正しく、ヤミカラスに自分の気持ちを代弁して貰ってる感じ(汗)。第三話あたりが大分カオスなことになってるのはそうした理由です(爆)。しかし第五話辺りでその気持ちも晴れてきて、徐々にギャクも入れられるようになりました。太っちょのエテボースの歌が、某パスタのCMのパロディだと気付いた方も多いのでは・・・(笑)?


また、この作品には、最近作者が原作本で読んだ「ゲド戦記」へのオマージュも大分含まれています。魔道士フーディンの持つイチイの杖だってそうですし、最後に魔道士がヤミカラスに名を授ける、というのも、「ゲド戦記Ⅰ」で大賢者オジオンがハイタカという若者に「ゲド」という名(※本作の設定では「まことの名」とされる、特別な名前)を授ける(教える)ということに由来しています。


「ゲド戦記」、アニメ版は評判イマイチでしたが、原作は素晴らしいので是非読んでね・・・。


他にもお伝えしたいこと多々ありましたが、読んでくれた皆さん、本当にありがとうございました!感想・意見、お待ちしております!それでは、次回作をお楽しみに!


2007/02/21 B@L (2012/11/7 現在 : BA・ω・RU(ばる))