Pokemon QuestⅠ:第九話:対峙 | えのこ夢

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絵も描いてた。ゲームばっかりやってるしゅふ。

Pokemon QuestⅠ:夢の中の魔道士~The beautiful World~


嘴にエイパムを、両足でそれぞれエテボースを捕まえたまま、ファルコは飛行を続けていた。


だが、悠々と飛んでいたわけではない。なにせ、自分と同じくらいの体重の相手を2匹も足に抱えている上に、


嘴にも10kg以上の重さの相手を銜えているのである。怒りに任せてこうしてきたものの、そろそろ限界に達そうとしていた。


「離せっ、離せったら!」


足に挟まれている太っちょのエテボースがそう言って暴れようとしたのを止めたのは、


もう一方で挟まれている仲間、面長のエテボースだった。


「や、やめましょうよ・・・こんなところで離されたら私たち、地上へ真っ逆さまですよ!


それに、ただでさえこのフラフラとした飛行状態・・・こちらから言わなくても、すぐに離されちゃうかもしれませんよ」


太っちょは反論してこう言う。


「そりゃそうだが・・・このままどこかへ連れて行かれて、そこでこのムクホークの餌食となるよりは、


いっそここで落とされた方が、眼下に広がる木々がクッションになるかもしれねぇし、助かるんじゃねえのかよ?」


「なるほど、それは名案ですね!偉イッ!!流石ご長男!!」


面長は目をきらきら輝かせながらそう言った。二人でいるときはいつも自分のことを馬鹿にしてばかりなのに、


こんなときだけ都合のいいヤツ・・・。太っちょにはそう思えなくもなかったが、ここは一致団結してなんとかやるしかない。


「よし、じゃあ俺がせーのって言ったら体を揺らすんだぞ!いいな、いくぜ!・・・せーのっ!」


が、二匹の初めての共同作業が行われる直前に、彼らの体はファルコから離れた。


彼らの行動を前もって感じ取ったファルコが、先手を打って彼らを離したのだった。


しかし、これで助かる!そう思ったエテボースたちだったが、


「ぎゃ、ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁあああぁぁあ!!」


「ひょえぇぇええぇぇえええぇえええ!!」


眼下の世界に目を向け、彼らは絶叫した。あろうことか、そこだけ木が無く、ぽっかりと開けた空間だったのだ。


そこは森の出口に近く、都会からやってくるワンリキーたちが、材木に使う木を伐採している場所だった。


・・・なんと不運なのだろう。


エテボースたちの悲鳴に驚いた鳥ポケモンたちが、一斉に羽ばたき始める。


まるで森そのものがざわめいているようだ。下で作業中だったワンリキーたちも、


わけがわからなくてうろたえるばかりだ。落ちてくるエテボースたちを受け止めてあげようだなんて、


気の利いたことを考えるやつは一匹もいない。


エテボースたちの眼前には、地面が迫る。彼らの頭の中では、今までの記憶が、走馬灯のように駆け巡っていった。


一昨日食べたモモンの実の甘さ、昨日食べたナナシの実のすっぱさ、


そして今日食べられなかったオボンの実・・・全部、食べ物のことばかりであったが。


と、そのときだった。


エテボースたちの落下が、突然止まった。一瞬何が起きたのか、どちらのエテボースもわからなかった。


太っちょが上を見上げると、ピンと張った尻尾の先を、誰かが掴んでいるのだった。


漆黒の羽が、太陽の光を受けてきらきらと輝く。そのポケモンは、


ムクホークよりもだいぶ小さい体ながら、しっかりとエテボースたちを支えようとしていた。


「・・・お前っ、さっきのヤミカラス!?」


太っちょがそう叫ぶのを、面長は冗談かと思った。あのヤミカラスか?自分たちが苛めた、


あのみすぼらしいヤミカラスだというのか?しかし今自分たちを掴んでいるヤミカラスは、


ほんの数時間前に会ったヤミカラスとは、全然違う雰囲気を持っていた。


ヤミカラスはゆっくりと下降していき、エテボースたちを地面に下ろした。


それを見ていた作業員のワンリキーたちは感激してヤミカラスに拍手を送るが、


ヤミカラスはそれを一瞥しただけで、すぐさま飛び立った。まだ、仕事は終わっていないのだ。


ヤミカラスのその姿には、猛々しささえ感じさせるものがあった。この数時間で、彼に一体何が起きたというのだろうか。

えのこ夢-9


あとに残されたエテボースの一匹、太っちょが、それを見てポツリとこう呟いた。


「あいつ・・・カッコイイじゃねぇか」



先程エテボースたちを落としたことを、暴君ファルコは何とも思ってはいなかった。


丁度下に何も無い所へ落としたものだから、無事では済まされないだろう。


例え運悪く死んだとしても、それが我輩の宝を盗んだ罰だということだ。


それよりも、今まだ嘴に銜えているエイパムはどうしてくれよう・・・


こいつも一緒に落としてもよかったが、まだ他に面白い刑罰の仕方があるかもしれない。


一度旋回して、自分の住処へ戻ってみるか。


そう思ってくるりと向きを変えた、そのときだった。後ろから迫って来ていたヤミカラスと目が合ったのだ。


なぜ、あの臆病者が自分を追かけてきていたのか。突然のことで驚いたファルコであったが、


すぐ鋭い目つきに戻して、ヤミカラスを威嚇した。


しかし、それで怯むヤミカラスではなかった。じっとファルコを見据え、対峙し続ける。まさか、


この我輩と勝負しようという気ではあるまいな?嘴でエイパムを銜えたまま、暴君はニヤリと笑ってみせる。


先手必勝!ファルコは、翼を大きく広げ、ヤミカラスに向かっていった。彼のその大きな翼で弾かれれば、


ヤミカラスのような小さなポケモンならビリヤード玉のように簡単に飛ばされていってしまうに違いない。


しかしヤミカラスは高く飛び上がってその攻撃をかわすと、急降下してファルコへの攻撃を試みた。


ファルコも素早くそれをかわそうとするが、そのとき突然、口に銜えたままのエイパムが、


ファルコの体を手で引っ掻き始めた。エイパムのか弱い手で引っ掻かれても、それほど大した痛みは感じない。


しかし突然のことに気が紛れてしまったファルコは、ヤミカラスによる攻撃をマトモに受けてしまうことになる。


バシッ!


ヤミカラスの小さな翼が、暴君の額を強打する。そこはなんと、ムクホークの急所であった。


「ガハッ!」


大きく呻いて、ファルコは嘴に銜えていたエイパムを落としてしまった。が、


ヤミカラスはそれを素早くキャッチすると、地上へ向かった。


そこでは、エテボースやワンリキーたちが手を振って待っていた。地に降り立つヤミカラスの元へ、彼らは駆け寄った。


「イヤーッ!よくやるな、お前さん!」


「ホント、こちとらシビレたぜ!」


ワンリキーたちは思い思いの感想を述べる。しかし、ヤミカラスの表情は固いままだった。


まだ終わっていないことが、ヤミカラスにはわかっていたのである。


「・・・ヤァーミィーカァーラァースゥーッ・・・!キサマ、完全に我輩を怒らせたなぁーっ!!」


上空から響く暴君の声に、たちまちその場にいる全ての作業員たちが体を縮めた。


ヤミカラスは、キッと空の敵を見据える。


「・・・まっ、まだ、戦うつもりですか?」


面長のエテボースの台詞に、ヤミカラスは頷き、応えた。


そんなヤミカラスに、太っちょのエテボースは手で何かを差し出した。木の実だった。


「力が強くなる、チイラの実だ。俺らを助けてくれたお礼さ。これ、食べてから行けよ」


数時間前まで、ヤミカラスにマトマの実をぶつけて苛めてきたエテボースが、今、


ヤミカラスに贈り物をしているのだった。ヤミカラスは、それを口に放り込み、食べた。みるみる、力が湧いてくる。


同時に、何だか目頭も熱くなってきた。・・・いや、今泣いたりしているときではない。


パッと翼で涙を拭き取り、こう言った。


「行ってくるでござんす」


そして翼を広げ、再び大空へ羽ばたいていったのだった。


彼のそのちっぽけな背には今、孤独や寂しさではない、感謝や期待といった、


溢れるほど沢山の暖かい感情が背負われていた。


彼はもう、ひとりぼっちではなかった。

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