田舎で一人暮らしをする76歳の母は、メカにめっぽう弱い。
数年前、思い立ってPCを買ってみたものの、私を含めまわりのコーチむなしく結局使えずじまい。
機械は必要だと思っていて、使わなければとトライはするけど、
いつも「難しくてわからない」と投げ出してしまう。
実家で過ごしたこの連休の最終日。
「携帯メールが使いたいので、教えてほしい」
と母が言ってきた。
私としても、母とメールでやりとりができれば、安心だ。
しかし、母にはハードルが高いだろうということは予想できた。
手取り足取り、同じことを何度も何度も繰り返し教えて、
そのたびに「だめだ、わからない」。
それでも最後はなんとか一通りできるようになった。
一区切りついて、別な部屋で仕事をしていた私に、携帯メールの着信音が鳴りまくる。
母からの、練習の空メールだ。
そのうち、文字が入るようになった。
「くまさか○○○(母の名前)」
「くまさかひとみ」
「わかりました」など。
「よくできました」と返信。
夕方、東京へ帰る新幹線は、連休最終日とあって大混雑。
なんとか自由席に座ることができたので、母にメール。
「混雑していましたが、なんとか座ることができました」
するとしばらくして母から、
「あんしんしました」
との返事。
「あんしんしました」。
母は、いつも私のことを気にかけてくれている。心配してくれている。
母が一生懸命打った8つの文字は、
私の携帯画面の中で、普段は気づかない母からのメッセージを伝えていた。
明日は名古屋出張。
また新幹線の中で、母にメールを打とうと思う。