私の仕事は、クライアントとともにユーザー企業を訪問し、商品を「買った理由」を取材することである。
取材の現場はたいてい会議室。
取材対象のご担当者(1~2名)、クライアントの担当者、そして私と、だいたい3人から4人、多いときで7~8人の現場である。
「クライアントの担当者と取材対象者」以外は、だいたいにおいて初対面、ということになり、
緊張と警戒で、取材開始前には、独特の「しらけた空気」が漂うこともある。
そこで、取材者たる私はどうするか。
思わず、持ち前の「座持ち上手」を発揮し、天気の話や当たり障りのない小ネタを言って、場を和らげたくなる。
特に、自分が女性だと、なんとなくその役割を負っているような錯覚にも陥るものだ。
しかし、それは決してやらないことにしている。
いかにしらけた空気が漂おうと、仕事の話が始まるまでは沈黙している。
理由は2つ。
一つ目。
取材者は、営業でもコーディネーターでもない。取材のためだけに来ている。余計な神経をそこで使わず、取材に集中するべきであるから。
二つ目。
取材者は、クライアントにも、ユーザーにも力量を探られている。いったいこいつはインタビュアーとして、どれぐらいなのか、と。
取材者が話す言葉は、いわば商品。一つ一つが意味のあるものでなくてはならない。たとえ取材前であっても。だから、余計なことは言わないに限る。
そこで愛想が悪い、と思われたくないとか、変なサービス精神は不要だと心得る。
ただし、いったん「お願いします」と言われ、取材に入ったら、圧倒的なリーダーシップで取材を執り行う。
「圧倒的リーダーシップ」と「座持ち力」は、似て非なるもの。
「座持ち力」は「その場対応力」に他ならないが、
「圧倒的リーダーシップ」には明確な「意図」がいる。
自分を振り返ると、取材を失敗したときは、「意図」がなく、「その場対応力」だけですませてしまった場合であった。
「座持ち力」のある人ほど、この落とし穴にはまる確率が高い。
なんだか書いているうちに、どんどんエラソーになってきたので、このへんでやめておこっと。
結論:事例取材者にとっては、「座持ち力」は必要ありません。