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↓ ↓さて, いよいよ物権編に入ります。
今回は物権変動です。
頻出度の高いテーマですのでしっかりマスターしましょう。
□■問題編 (正解と解説は後半に)
以下の問で, 正しいものには○, 誤っているものには×をつけなさい。
【問 1】 (16-3-1)/類題(61-7-2)(10-1-3)(19-3-3)
Aは, 自己所有の建物をBに売却したが, Bはまだ所有権移転登記を行っていない。 このとき, Cが何らの権原なくこの建物を不法占有している場合, Bは, Cに対し, この建物の所有権を対抗でき, 明渡しを請求できる。
【問 2】 (15-3-2)/類題(10-1-2)
Aは, 自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが, Bはまだ所有権移転登記を行っていない。 この場合, Cが, Bを欺き著しく高く売りつける目的で, Bが所有権移転登記を行っていないことに乗じて, Aから甲地を買い受け所有権移転登記を得た場合, CはBに対して甲地の所有権を主張することができない。
【問 3】 (19-3-2)
Aが所有者として登記されている甲土地について, Aと売買契約を締結したCが, 登記を信頼して売買契約を行った場合, 甲土地がAの土地ではなく第三者Dの土地であったとしても, Dの過失の有無にかかわらず, Cは所有権を取得することができる。
【問 4】 (13-5-1)/類題(61-7-1)(3-4-4)(20-2-1)
AからB, BからCに, 甲地が順次売却され, AからBに対する所有権移転登記がなされた。 この場合, Aが甲地につき全く無権利の登記名義人であって, 真の所有者Dが所有権登記をBから遅滞なく回復する前に, Aが無権利であることにつき善意のCがBから所有権移転登記を受けたとき, Cは甲地の所有権をDに対抗できる。
【問 5】 (15-3-4)/類題(7-2-1)(22-4-4)
Aは, 自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが, Bはまだ所有権移転登記を行っていない。 この場合, AとFが, 通謀して甲地をAからFに仮装譲渡し, 所有権移転登記を得たときには, Bは登記がなくとも, Fに対して甲地の所有権を主張することができる。
【問 6】 (10-1-4)/類題(8-3-2)(17-8-1)
Aの所有する土地をBが取得したが, Bはまだ所有権移転登記を受けていない。 この場合, Bが移転登記を受ける前に, Aが死亡したときは, Bは, Aの相続人に当該土地の所有権を主張できない。
【問 7】 (15-3-1)/類題(3-4-1)(8-3-3)(19-3-4)(22-4-1)
Aは, 自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが, Bはまだ所有権移転登記を行っていない。 この場合, Cが, AB間の売買の事実を知らずにAから甲地を買い受け, 所有権移転登記を得たときは, Cは, Bに対して甲地の所有権を主張することができる。
【問 8】 (17-8-2)
Aは, 自己所有の甲地をBに売却し, 代金を受領して引渡しを終えたが, AからBに対する所有権移転登記はまだ行われていない。 この場合, Aの死亡によりCが単独相続し, 甲地について相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた後, CがDに対して甲地を売却しその旨の所有権移転登記がなされたとき, Bは, 自らへの登記をしていないので, 甲地の所有権をDに対抗できない。
【問 9】 (15-3-3)
Aは, 自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが, Bはまだ所有権移転登記を行っていない。 この場合, Eが, 甲地に抵当権を設定して登記を得たときでも, その後Bが所有権移転登記を得てしまえば, 以後, EはBに対して甲地に抵当権を設定したことを主張することができない。
【問 10】 (10-1-1)/類題(8-3-4)
Aの所有する土地をBが取得したが, Bはまだ所有権移転登記を受けていない。 この場合, Aから当該土地を賃借し, その上に自己名義で保存登記をした建物を所有しているCに対しては, Bは当該土地の所有権を主張できない。
【問 11】 (16-3-2)
Aは, 自己所有の建物をBに売却したが, Bはまだ所有権移転登記を行っていない。 このとき, DがAからこの建物を賃借し, 引渡しを受けて適法に占有している場合, Bは, Dに対し, この建物の所有権を対抗でき, 賃貸人たる地位を主張できる。
【問 12】 (16-3-4)
Aは, 自己所有の建物をBに売却したが, Bはまだ所有権移転登記を行っていない。 このとき, Aはこの建物をFから買い受け, FからAに対する所有権移転登記がまだ行われていない場合, Bは, Fに対し, この建物の所有権を対抗できる。
【問 13】 (9-6-1)/類題(19-6-1)(22-4-2)
Aが, Bに土地を譲渡して登記を移転した後, 詐欺を理由に売買契約を取り消した場合で, Aの取消し後に, BがCにその土地を譲渡して登記を移転したとき, Aは, 登記なしにCに対して土地の所有権を主張できる。
【問 14】 (3-4-2)/類題(8-5-3)(13-5-2)
Aの所有地がAからD, DからEへと売り渡され, E名義の所有権移転登記がなされた後でも, AがDの債務不履行に基づきAD間の売買契約を解除した場合, Aは, その所有権をEに対抗することができる。
【問 15】 (20-2-3)/類題(8-5-4)(13-5-3)(19-6-2)
所有権がAからBに移転している旨が登記されている甲土地について, EはBとの間で売買契約を締結したが, その売買契約締結の前にAがBの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除していた場合, Aが解除した旨の登記をしたか否かにかかわらず, Aは所有者であることをEに対して主張できる。
【問 16】 (9-6-4)/類題(7-2-4)(13-5-4)(19-6-4)(22-4-3)
Jが, K所有の土地を占有し取得時効期間を経過した場合で, 時効の完成後に, Kがその土地をLに譲渡して登記を移転したとき, Jは, 登記なしにLに対して当該時効による土地の取得を主張できる。
□■正解&解説
【問 1】 ○
不法占有者Cには, 占有を正当づける権利 (所有権とか賃借権など) がありませんから, Bは登記がなくても, Cに対し建物の所有権を主張して, その明渡しを請求できます。
もともと不法占有者は不動産に対する侵害者であって取引の当事者ではないため, はじめから 「登記により物権変動を対抗する」 という177条の対抗問題とはならないのです。
【問 2】 ○
民法177条は, 「不動産に関する物権の得喪および変更は, その登記をしなければ, 第三者に対抗することができない」 と定めています。
ここでいう 「登記をしなければ対抗できない第三者」 というのは, すべての第三者ではなく, 対立する相手方に登記がないこと (登記の欠缺) を主張する正当な利益を有する第三者に限定されます。
本問のように, 権利取得の方法がきわめて不誠実な背信的悪意者Cは, 登記があっても, 対立するBに登記がないこと (登記の欠缺) を主張する正当な利益を有する第三者とはいえないため, Bに対して甲地所有権を主張することはできません。
※ 背信的悪意者Cは, 177条でいう 「第三者」 にはあたらないため, Bは登記がなくても, Cに対して権利を主張できます。
※ 背信的悪意者からの転得者は, 自身が背信的悪意でない限りは 「第三者」 に含まれるというのが判例です (最判平8・10・29)。
【問 3】 ×
甲土地について無権利者であるAの 「登記を信頼」 して, Cが売買契約を行っても, 所有権を取得することはできません。
物権が存在するかのような登記や占有などの公示を信頼した者は, その公示が 「虚偽のものであっても保護される」 という公信の原則は, 建物・土地などの不動産取引には適用されないのです。
※ 登記に公信力はない
明治以来, わが国の登記制度は不備なために, 登記に公信力は認められていません。 これは民法の大原則です。
「虚偽の登記」 を善意無過失で 「真実の登記」 と信じても保護されることはないのです。
【問 4】 ×
「全く無権利の登記名義人」 Aは実質的無権利者で, 登記に公信力はないため, Aから甲地を譲り受けたBは (たとえ善意無過失であっても) 所有権を取得することはなく, やはり全くの無権利者です。
したがって, 善意の譲受人Cがたとえ登記を備えても, 真の所有者Dに甲地所有権を対抗することはできません。
※ 実質的無権利者というのは, 無権利者から物権を取得した者, 無効な法律行為によって物権を取得した者などをいいます。
【問 5】 ○
「通謀」 「仮装譲渡」 ときたら, 虚偽表示です。
A→Fの仮装譲渡は虚偽表示により無効ですから, はじめから所有権はFに移転しておらず, Fの所有権移転登記も無効です。
したがって, Bは登記がなくても, 無権利者Fに対して甲地所有権を主張できます。
※ つまりは, 登記簿上は所有者として表示されている架空の権利者Fは, 実体上の所有権を取得したBに対して, Bに登記がないこと (登記の欠缺) を主張できないのです。
A ←── 売買契約 ──→ B (未登記)
↓
↓ 仮装譲渡
↓
F (虚偽の登記)
【問 6】 ×
登記をしなければ対抗できない第三者の範囲には, 「物権変動の当事者およびその包括承継人」 は含まれません。
相続人は, 被相続人の地位をそのまま承継する包括承継人ですから, 177条でいう 「第三者」 にはあたらないため, 買主Bは登記がなくても, Aの相続人に対して (あたかもAに対してと同じように) 土地所有権を主張できます。
【問 7】 ○
A所有の甲地が, A→B, A→Cと二重譲渡された場合, B・Cは互いに対抗関係に立ちますから, 先に所有権移転登記をしたCが完全に所有権を取得することになります。
Cは, 登記のないBに対して甲地所有権を主張することができるのです。
第1の売買
A ─────→ B (未登記)
↓
↓ 第2の売買
↓
C (登記)
※ 二重譲渡の場合, 権利の優劣は登記の先後で決まりますから, 先に登記を備えた方が完全に権利を取得します。 契約締結日の先後はまったく関係ありません。
もし, どちらも登記を備えていないときは, 両者の地位に優劣はなく, どちらからも権利を主張できません。 とにかく早く登記をした者が優先して権利を取得するというのが, 177条の趣旨なのです。
※ 177条は, 第三者の善意・悪意を問題としません (ただし背信的悪意者は除きます)。
【問 8】 ○
被相続人Aとその地位を包括承継した相続人Cとは, 法律上全く同一の地位にありますから, 甲地は, A・C→B, A・C→Dへ二重譲渡された状態にあります。
したがって, 甲地の引渡しを受けていても, Bは登記がない以上, その所有権をDに対抗できず, 先に登記を備えたDが, 完全に所有権を取得します。
【問 9】 ×
抵当権者Eは, Bの所有権移転登記よりも先に抵当権設定登記をしていますから, Bに対して抵当権を主張することができます。
Bが, 先に売買契約をして甲地所有権を取得していても, その登記がなければ, 第三者Eに対抗できませんから, 結局Bは, Eの抵当権によって制限された所有権を取得することになります。
【問 10】 ○
土地・建物の賃貸借については, 特別法である借地借家法により賃借権の登記に代わる簡便な対抗要件が認められています。
つまり, 土地の賃借権はその登記がなくても, 賃借人が登記ある建物を所有するときは, これをもって第三者に対抗することができるのです。
「自己名義で保存登記をした建物」 を所有している土地賃借人Cは, すでに土地賃借権の対抗要件を備えていますから, 所有権移転登記のないBは, Cに対して土地所有権を対抗できず, また, 賃貸人たる地位を主張することもできません。
【問 11】 ×
前問と同じです。
建物の賃貸借はその登記がなくても, 建物の引渡しがあれば, 以後, その建物について物権を取得した者に対抗することができます。
建物の賃借人Dは, 建物の 「引渡しを受けて」 いますから, すでに建物賃借権の対抗要件を備えており, したがって, Bは, 建物所有権の移転登記をしていない以上, Dに対して建物所有権を対抗することはできず, また賃貸人たる地位も主張できません。
【問 12】 ○
建物が, F→A→Bと順次売却 (譲渡) された場合, FはAの前主であって, はじめからBとは対抗関係にはありません。
したがって, Bは登記がなくても, Fに対し建物の所有権を対抗できます。
もともとFは, Aに対して登記の移転に協力する義務がありますから, 新所有者Bに登記がないこと (登記の欠缺) を主張することは許されないのです。
【問 13】 ×
Aは, 詐欺を理由に売買契約を取り消しても, その登記をしなければ, 取消後に当該土地を取得して登記を移転したCに所有権を主張できません。
契約が取り消された場合, ①取消しによるB→Aの所有権復帰と, ②取消後のB→Cへの譲渡とは, 二重譲渡の関係が成立し, 先に登記を備えた方が優先します。
A ←────── B
① 取消しによる ↓ ② 取消後の
所有権復帰 ↓ 所有権移転
(未登記) ↓
C (登記)
【問 14】 ×
契約を解除しても, その解除前に取引関係に立った第三者の権利を害することはできません (解除による所有権復帰を主張できません)。
ただし, この第三者には対抗要件としての登記が備わっていることが必要です。
Aは, AD間の売買契約を解除しても, 解除前に登記を備えた第三者Eに, 解除による所有権復帰を対抗できないのです。
※ 解除と第三者/解除の遡及効は制限される
債務不履行を理由に契約が解除 (合意解約も同じ) されると, 解除の効果として, 契約上の債権債務ははじめにさかのぼって消滅し, 契約をしなかった状態に戻ります (解除の遡及効)。
したがって, 前の契約が解除される前に権利を取得した第三者も, 解除があったことによりはじめから権利を取得しなかったこととなり, 何の責任もないのに権利を失うことになってしまいます。
このため民法は, 解除をしても 「第三者の権利を害することはできない」 (545条但書) と定めて解除の遡及効を制限し, 第三者の権利を保護しました。
ただし, この第三者が保護されるためには, 善意・悪意に関係なく, 登記などの対抗要件を備えておく必要があります。
※ 解除の効果(545条)
① 当事者の一方がその解除権を行使したときは, 各当事者は, その相手方を原状に復させる義務を負う。 ただし, 第三者の権利を害することはできない。
【問 15】 ×
前問と違って, 契約を解除した後に第三者が登場した場合です。
①解除によるB→Aへの所有権復帰と, ②解除後のB→Eとの売買は, 二重譲渡の関係にあるため, その優劣は登記で決定されます。
つまり, Aが契約を解除して所有権がAに復帰しても, その旨の登記をしなければ, 解除後に所有権を取得した第三者Eに対抗することはできないのです。
Aが 「登記をしたか否かにかかわらず,……主張できる」 とはいえません。
・解除前の第三者 (545条/第三者保護)…登記必要
・解除後の第三者 (177条/対抗関係)……登記必要
【問 16】 ×
Jは, 取得時効が完成しても, その登記がなければ, 時効完成後に所有権登記を備えたLに対して, 時効による所有権取得を主張できません。
①所有権を時効取得したJと, ②その時効完成後に所有権を取得したLとは, 二重譲渡と同様の関係となるため, 先に登記を備えたLが完全な権利者となるのです。
J (占有者) ─→ ①時効完成
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K →②譲渡→ L
(登記)
※ 時効完成前と登記
①Jの取得時効の完成前に, ②K→Lに譲渡され移転登記がされた場合には, Jは, その後必要期間の占有を続ければ, 所有権を時効取得し, 登記がなくてもLに対抗できます。
時効完成前の場合には, JとLは物権変動の当事者だからです (最判昭41・11・22)。
【重要条文】
■物権の設定・移転(176条)
物権の設定および移転は,当事者の意思表示のみによって,その効力を生ずる。
■不動産に関する物権変動の対抗要件(177条)
不動産に関する物権の得喪および変更は,不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従い,その登記をしなければ第三者に対抗することができない。
以上
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