第3回/意思表示──心裡留保・虚偽表示 | ┃忙しい人のための宅建民法一問一答ドリル┃

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宅建試験の合否はズバリ民法で決まります。 しかしはじめての人には民法はかなり難しい科目です。
このドリルは過去問から必須テーマを精選し, くわしくやさしい解説をつけました。
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 [平成24年4月22日開講]


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□■問題編  (正解と解説は後半にあります)



以下の問で, 正しいものには○, 誤っているものには×をつけなさい。



[心裡留保]


【問 1】 (10-7-3)/類題(16-1-1)
  Aが, A所有の土地をBに売却する契約を締結した場合に, Aが, 自分の真意ではないと認識しながら売却の意思表示を行い, BがそのAの真意を知っていたときは, Aは, 売却の意思表示の無効を主張できる。



【問 2】 (19-1-1)
  Aは, 所有する甲土地を 「1,000万円で売却する」 という意思表示を買主Bに行ったが, 当該意思表示はAの真意ではなく, Bもその旨を知っていた。 この場合, Bが 「1,000万円で購入する」 という意思表示をすれば, AB間の売買契約は有効に成立する。



【問 3】 (61-4-1)
  A所有の土地が, AからB, BからCへと売り渡され, 移転登記もなされている。 この場合, Aが売る意思もないのに, 売買契約をしたときは, Bがそのことにつき悪意であれば, Cが善意でも, AはAB間の売買契約の無効をCに対して主張することができる。




[虚偽表示]


【問 1】 (16-1-2)/類題(12-4-1)(19-1-2)
  Aが, A所有の土地につき, 強制執行を逃れるために, 実際には売り渡す意思はないのにBと通謀して, Bとの間で売買契約の締結をしたかのように装った場合, この売買契約は無効である。



【問 2】 (5-3-1)/類題(55-4-1)(56-2-3)(2-4-4)
  Aが, その所有地について, 債権者Bの差押えを免れるため, Cと通謀して, 登記名義をCに移転したところ, Cは, その土地をDに譲渡した。 この場合, AC間の契約は無効であるから, Aは, Dが善意であっても, Dに対し所有権を主張することができる。



【問 3】 (7-4-1)/類題(61-4-2)
  AとBは, A所有の土地について, 所有権を移転する意思がないのに通謀して売買契約を締結し, Bの名義に移転登記をした。 この場合に, Bがこの土地にCに対する抵当権を設定し, その登記をしたが, CがAB間の契約の事情を知っていたときは, Aは, Cに対して抵当権設定行為の無効を主張することができる。



【問 4】 (12-4-2)/類題(5-3-3)(20-2-2)
  Aが, 債権者の差押えを免れるため, Bと通謀して, A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に, Cが, AB間の契約の事情につき善意無過失で, Bからこの土地の譲渡を受けた場合は, 所有権移転登記を受けていないときでも, Cは, Aに対して, その所有権を主張することができる。



【問 5】 (7-4-2)
  AとBは, A所有の土地について, 所有権を移転する意思がないのに通謀して売買契約を締結し, Bの名義に移転登記をした。 この場合, Bがこの土地をCに売却し, 所有権移転登記をしたが, CがAB間の契約の事情を知らなかったことについて過失があるときは, Aは, Cに対してこの土地の所有権を主張することができる。



【問 6】 (12-4-3)
  Aが, 債権者の差押えを免れるため, Bと通謀して, A所有地をBに仮装譲渡する契約をしたが, DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には, 所有権移転登記を受けていないときでも, Dは, Bに対して, その所有権を主張することができる。



【問 7】 (7-4-4)/類題(5-3-4)
  AとBは, A所有の土地について, 所有権を移転する意思がないのに通謀して売買契約を締結し, Bの名義に移転登記をした。 この場合に, BがFに, さらにFがGに, それぞれこの土地を売却し, 所有権移転登記をした場合で, AB間の契約の事情について, Fは知っていたが, Gが知らなかったとき, Gは, Aに対しこの土地の取得を主張することができる。





□■正解&解説編



[心裡留保]


【問 1】 ○
  「自分の真意ではないと認識」 しながらする意思表示を心裡留保といい, 原則として有効です。
  つまり, 表意者が表示したとおりの効果が生じます。 これは, 表示を信じた相手方を保護して取引の安全を図ためなのです。 表意者の真意ではない意思表示も, 相手方の利益を考慮して有効としたのです。
  しかし, 真意ではない意思表示 (心裡留保) であっても, 相手方Bが 「Aの真意を知っていたとき」 (悪意のとき) には, Aの意思表示が表示どおりのものではないということを知っているわけですから, もうBを保護する必要はなく, したがって, もともとAの売却の意思表示は真意ではないため無効なのです。



【問 2】 ×
  「当該意思表示はAの真意ではなく, Bもその旨を知っていた」 とありますから, この意思表示は心裡留保で, しかも相手方が悪意の場合です。
  原則として有効な心裡留保も, 相手方Bが, Aの真意を知っていたとき (悪意のとき) は,例外として, Aの意思表示は無効です。
  したがって, この無効の意思表示に対して, Bが 「1,000万円で購入する」 という意思表示をしても, AB間の売買契約は効力を生じません。



【問 3】 ×
  「売る意思もないのに, 売買契約をした」 というのは心裡留保ですから, そのまま効力を生じる (有効) のが原則ですが, 相手方Bは 「悪意」 ですから, この売買契約は無効です。
  この無効は, 取引の安全上, 善意の第三者Cに主張することはできません。



【重要条文】


■心裡留保 (93条)
  意思表示は, 表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても, そのためにその効力を妨げられない (=有効)。
  ただし, 相手方が表意者の真意を知り (悪意のとき), または知ることができたとき (善意有過失のとき) は, その意思表示は, 無効とする。




[虚偽表示]


【問 1】 ○
  「実際には売り渡す意思はないのにBと通謀して」 というのは, 虚偽表示のことです。
  虚偽表示による意思表示は, 表意者の真意に基づくものではないため, 無効とされます。
  「売り渡す意思はない」 わけですから, そのような意思表示があっても無効なのです。 たとえ権利変動があったような外観 (たとえば移転登記など) があっても, 法律上は何の効力も生じていません。


    Bの所有権移転登記は真実の権利関係を反映しない虚偽の登記ですから何の効力もありません。

  したがって, Aは虚偽表示を理由に契約の無効を主張して, 無効登記の抹消を請求することができます。



【問 2】 ×
  Aが, 「Cと通謀して, 登記名義をCに移転した」 というのは虚偽表示ですから, AC間の契約は無効です。
  虚偽表示による契約は, ACの当事者間では無効ですが, 善意の第三者 Dに対する関係では, その無効を主張できません
  つまり, Aは, AC間の契約が無効であって登記名義人Cには所有権が移転していないということを, 善意の第三者Dには主張できないのです。
  登記を見て, 所有者らしい外観をしているCの土地を買った善意の第三者Dを保護して取引の安全を図ったのです。 Aは, 結局のところ, Dの土地所有権取得を認めなくてはなりません。


   Aは土地を取り戻すことができませんから, Cに対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることになります。



【問 3】 ○
  「所有権を移転する意思がないのに通謀して売買契約を締結」 したのですから, 虚偽表示ですね。
  虚偽表示による意思表示は無効ですが, この無効は, 善意の第三者には主張できません。
  いいかえれば, 悪意の第三者には主張できるということです。
  第三者Cが 「AB間の契約の事情を知っていた」 というのは, 悪意ということですから, AはCに対して, AB間の契約が無効であり, したがってBに土地所有権はなく, その上の抵当権設定行為も無効であるということを主張することができます。



【問 4】 ○
  虚偽表示による意思表示の無効は, 善意の第三者には対抗できませんが, この第三者には登記が必要か, というのがここでの問題です。
  「善意の第三者に対抗できない」 という94条2項の趣旨は, AB間の契約は, Cとの関係では有効なものとして扱うということです。
  つまり, 善意の第三者Cとの関係では, 所有権は A→B→C へと有効に移転しており, したがって, Cは登記がなくても完全に所有権を取得できるのです。 登記は不要です。


   虚偽表示では, Bの虚偽登記は, あたかもBに所有権があるかのような外形を表示しており, この外形を信頼した善意の第三者Cが保護されることになりますから, 結果的には, 登記に公信力を与えている (つまり登記の表示を信じた人は保護される) という機能を果たします。



【問 5】 ×
  善意の第三者は過失があっても保護されるか, というのがここでの問題です。
  善意の第三者は過失があってもよく, 無過失であることを要しません
  つまり, AB間の売買契約が虚偽表示であるという 「事情を知らなかった」 善意の第三者Cが, 知らなかったことについて過失があるときでも, Aは, Cに対して所有権を主張することはできないのです (Cは保護されます)。


  もともと民法では, 真実であるかのような権利関係の外観を信じた第三者を保護しようとする場合, その第三者には過失がないこと (無過失) を要件とするのが大原則です。
  しかし, 虚偽表示の場合は, 当事者自身が虚偽の外観を故意に作り出しているのですから, むしろ外観どおりの責任を負わせて第三者を保護すべきであると考えられ, したがって, 第三者は善意でありさえすればよく, 無過失までは要求されないのです。



【問 6】 ○
  Aからの譲受人Dは登記がなくても, 仮装譲受人Bに対して所有権を主張できます。
  不動産について自分が権利者であることを第三者に主張するためには登記が必要ですが (177条), 無権利者に対しては登記は不要です。
  虚偽表示による仮装譲受人Bは実質的には無権利者ですから, 第三者Dは登記がなくても, Bに所有権を主張できるのです。


      仮装譲渡
  A ──────→ B(仮装譲受人)/無権利者
  ↓       *BはDに登記がないことを理由として
  ↓        Dの所有権を否定することはできない。

  ↓

  D 譲受人/登記なし
  *Dは所有権登記がなくてもBに所有権を主張できる。
   
Dは, Aからの譲受人であることに注意。



【問 7】 ○
  第三者からの転得者も, 94条2項の 「第三者」 に含まれますから, 善意であれば, 善意の第三者として保護されます。
  つまり, AB間の売買契約が虚偽表示であるという事情を知らなかった善意の転得者Gは, 前主Fの善意・悪意に関係なく, Aに対し土地所有権を主張することができるのです。


   判例は, 善意の第三者からの転得者が悪意の場合でも, 善意の第三者が介在する以上, 善意者の地位を承継するから, 虚偽表示による無効を対抗されることはなく保護されるとしています。
  これは, 以後に続く取引の混乱を避けるためです。 このことを取引の安全を保護するといい, 民法では最重要の原則の1つです。



【重要条文】


■虚偽表示 (94条)
 ① 相手方と通じてした虚偽の意思表示は, 無効とする。
 ② この意思表示の無効は, 善意の第三者に対抗することができない。


以上



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