20代から70代の女性に多いこの疾患にはある特徴があります。若年者にあっては顎関節症の症状が多く、逆から言うと顎関節症の8割程度が同部に何ら器質的な疾患がなく心因性のものだとされています。故に、一般歯科で顎関節症を治す事が難しいわけです。
年齢が高くなるにつれて舌痛症や顔面の違和感を訴えるタイプの口腔心身症が多くなってきます。前者には通常の鎮痛剤では効果が認められません。抗不安薬が有効なのですが、適切な投与量を見つけるのに苦慮する場合も多い。漢方薬は口腔心身症全般に有効なのですが、薬剤選択には経験が必要です。
心身医学療法、といって歯科医も口腔心身症の患者を保険診療する事ができます。しかし保険点数が安いため一般的でありません。それよりも画像診断や投薬の方が短時間で点数が上がります。しかし本当に必要なのは「症状は大きな病気でない。いずれ必ず回復する」と説明し安心感を与える事なのです。
舌癌の不安から舌痛症になったヒトもいます。このような場合、歯科医が説明しても聞く耳がもてません。どうして女性に多いのか、この理由が現在のところ不明です。そして口腔心身症のヒトに共通するのが口腔衛生状態が非常に良い事です。
口臭がないのに、「くさい」と訴えるヒトも居ます。これについては器具を用いて口臭を測定し、口臭が無い事を証明する必要があります。それでも納得されない場合にはプラセボ(偽薬)効果を期待してうがい薬の錠剤を処方します。
歯科では虫歯と歯槽膿漏以外の疾患すべてが口腔外科での対応です。最近では口腔内科という言い方もされつつありますが、まだ一般的ではありません。
分厚い口腔外科学の教科書に口腔心身症についての記載はごくわずか。専門医も少なくまだまだ手探りの状態、という部分もあります。しかし絶対に必要です。しっかり対応できる歯科医が多く出てくる事を私は望んでいます。