破産法では、債務者が破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で(1)財産隠匿または破壊、(2)財産の譲渡または債務の負担を仮装、(3)財産の現状を変更して価値を減損、(4)財産を債権者の不利益に処分または債務の負担が禁止されております(265条1項)。違反した場合は詐欺破産罪として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となっております。また債務者に破産手続開始決定がなされたことを知りながら、債権者を害する目的で破産管財人の承諾その他の正当な理由無く債務者の財産を取得した場合も同様とされております(同2項)。なお法人についても両罰規定として同様の罰金が科されることとなっております(277条)。
詐欺破産罪の具体的要件
上記のように破産法265条1項では「破産手続開始の前後を問わず」と規定されております。破産手続き開始決定を受けた後だけでなく、その前も規制の対象となっております。具体的にどれくらい前まで対象となっているかは条文上示されてはおりませんが、すでに返済が困難な状況となっている場合は該当する可能性が高いと考えられます。さらに詐欺破産罪には「債権者を害する意図」が必要とされます。その行為によって債権者が不利益を受けることを認識していることが必要です。その上で財産の隠匿は破損、第三者に廉価で譲渡したり、不利な条件でさらに債務を負ったり、債務を新たに負ったように仮装すると詐欺破産罪が成立することとなります。またこれらの行為に加担した第三者も同様ということです。