破産法には「詐欺破産罪」についての規定があります(破産法第14章罰則)。

詐欺破産罪が適用されると、1ヶ月以上10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいはその両方が科されます。

自己破産自体は刑事事件ではありませんが、債権者を害する意図で次の行為をしたときには詐欺破産罪が成立する可能性があるので、ご注意ください。

⑴ 財産を隠す、壊す

財産を隠したり壊したりすると、債権者が破産手続によって受け取れる配当が減ってしまいます。

そのため、これらの行為は禁止されています。

ただし、不注意で財産を壊してしまったような場合は、「債権者を害する」意図ではないため、罪にはならないと考えられますが、しっかりとした説明は必要となります。

⑵ 財産譲渡や債務負担を仮装(偽装)する

財産隠しに似ていますが、破産する法人の財産を子会社などに売ったように見せかけて、財産の処分を免れようとする人がいます。

そういった行為を防ぐために設けられた規定です。

第三者に財産を売却したような外観を作ったり、実際に貸していないお金を債務者に貸し付けたような契約書を作るなどの行為が該当します。

⑶ 財産の現状を変えて価値を減らす

財産を破壊する以外の方法で、財産の価値を目減りさせる行為を言います。

例えば更地の上に建物を建てれば、土地の価格は下落します。

土地の価格が下落すると債権者への配当が減ってしまうため、これに類する行為は禁止されています。

⑷ 財産を不利益に処分する、または不利益な債務を負担する

例えば、財産を無償で第三者に贈与する、または非常に安い価格で売却する行為です。

また、闇金融業者などから故意に異常な高利で借り入れをすることも、これに該当します。

この場合、行為に加担した者も同じ刑罰を科されます。

⑸ 債務者の財産を取得する、または第三者に財産取得させる

上記の4項目は「破産手続開始決定の前後を問わず」適用されますが、こちらは破産手続開始決定後の行為にのみ適用されます。

破産手続開始決定があったことを知りながら、債権者を害する目的で、裁判所が選任した破産管財人を通さず、そして正当な理由なく、勝手に債務者の財産を取得する行為が該当します。

第三者に債務者の財産を取得させても同様です。

破産手続開始決定があった以上、債務者の財産は破産管財人(裁判所)の管理下に置かれます。正当な理由なく財産を勝手に持ち出されると破産手続に支障があり、債権者への配当も減ってしまいます。

そのためこれらの行為は犯罪とされています。